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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

執筆者の写真tkk-lab

Q639.日本のプラ新法に関連した各業界の動向について

20221125更新

【質問】

日本のプラ新法に関連した各業界の動向を教えてください。

 

【回答】

プラ新法の概要を解説後に、各業界の動向を簡単に説明します。


1.プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法)

「プラ新法」とは、2022年4月1日施行の「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」であり、最近は「プラスチック資源循環促進法」と略されます。*1)*2)


①設計・製造段階:製造事業者は「環境配慮設計」に努める。国は、「設計指針」を策定し、これに適合した製品を認定し、グリーン購入法により認定製品を率先して調達する。

②販売・提供段階:使い捨てプラ製品(消費者に無償で提供されるもの)である特定12品目を提供する事業者(小売・宿泊・飲食・洗濯など)に使用の合理化を求める。国は「判断基準」を策定し、指導・助言する。年間5トン以上の多量提供事業者の取組が著しく不十分な場合に勧告・公表・命令し、命令違反に罰金がある。

③排出・回収・リサイクル段階:国は、排出抑制や再資源化等の「判断基準」を策定して、指導・助言する。年間250トン以上の多量排出事業者に勧告・公表・命令し、違反に罰金がある。また、製造・販売・排出事業者が「自主回収や再資源化の計画」を作成し、国が認定すると、廃棄物処理法の業許可がなくても自主回収や再資源化ができる。


また、市区町村が再商品化事業者と連携して「再商品化計画」を作成し、国が認定すると、容器包装リサイクル法(容リ法)に基づく容器包装プラ廃棄物と混ぜて、プラスチック廃棄物を回収し再商品化できる。


2.経緯とロードマップ

プラ新法の基盤となる国家戦略として、2019年5月31日に公表された「プラスチック資源循環戦略」*3) があります。 基本原則として「3R+Renewable」(削減・再利用・リサイクル+再生可能性)を掲げ、6つの重点戦略と6つのマイルストーンを定めています。


①2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制

②2025年までにリユース・リサイクル可能なデザインに

③2030年までに容器包装の6割をリユース/リサイクル

④2035年までに使用済プラスチックを100%リユース・リサイクル等により、有効活用

⑤2030年までに再生利用を倍増

⑥2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入


3.環境配慮設計指針の認定動向

2022年1月19日に「プラスチック使用製品設計指針」*4) が告示されました。 製品設計の認定を受けるためには、設計指針への適合性の技術的な設計調査を指定調査機関で行う必要があります。 現時点で、国が指定した調査機関は1社 *5) だけであり、設計認定の運用が始まっていません。(原稿執筆時点2022年11月)


参考情報として、容リ法の容器包装プラスチックでは、2020年11月にプラスチック容器包装リサイクル推進協議会が「プラスチック容器包装の環境配慮に関する自主設計指針(改訂版)」*6) を決めています。


4.プラスチック業界団体の動向

2010年9月に日本プラスチック工業連盟は、提言「家庭から出る廃プラスチックの再資源化のあるべき姿」*7)を公表しました。 結論を要約すると「家庭から出る廃プラスチックには複合素材や複合材質が多く、残渣や異物を含む等の排出実態を考慮すれば、マテリアルリサイクルが合理的に成立するのはPETボトルや白色発泡トレイ等ごく一部の製品に限られる。マテリアルリサイクルに固執することなくケミカルリサイクルやサーマルリサイクル等も選択して最適合理性を追求すべき」としていました。 プラ新法後には提言をしていません。


プラ新法は、業界に大きな影響を与えると思われますが、業界団体の日本プラスチック工業連盟も全日本プラスチック製品工業連合会も、それぞれの公式サイトでは、プラ新法の案内をしていません。


個別企業の対応例については、循環経済パートナーシップ(J4CE)の注目事例集 *8) に85件の具体的な事例紹介があります。


5.使い捨てプラスチック製品の提供事業者の動向

提供事業者は、国が策定した「特定プラスチック使用製品の使用の合理化(判断基準)」*9) で求められている以下のことを実施します。


① 目標の設定:使用の合理化に関する目標を定め、その取組を計画的に行うこと。

② 特定プラスチック使用製品(以下、「使用製品」)の使用の合理化:

【提供方法の工夫】

・消費者に提供する使用製品を、有償で提供すること

・使用製品を消費者が使用しないようにするため、景品等を提供(ポイント還元等)すること

・提供する使用製品について、消費者の意思を確認すること

・提供する使用製品について、繰り返し使用を促すこと

【提供する使用製品の工夫】

・使用製品の設計(薄肉化、軽量化等)、その部品や原材料の種類(再生可能資源、再生プラスチック等)を工夫した使用製品を提供すること

・商品・サービスに応じて、適切な寸法の使用製品を提供すること

・繰り返し使用が可能な製品を提供すること

③情報の提供:店頭掲示、インターネット等で公表、提供する製品に排出抑制の重要性に関する表示など、消費者が排出抑制を促進する情報を提供すること。

④体制の整備等:取組責任者の設置などの体制整備をすること。従業者研修をすること。

⑤安全性等の配慮:取組む際には、安全性、機能性その他の必要な事情に配慮すること。

⑥実施状況の把握:使用製品の提供量、取組内容とその効果を把握して、インターネット等での公表に努めること。

⑦関係者との連携:国、関係地方公共団体、消費者、関係団体及び関係事業者との連携を図るよう配慮すること。その際、必要に応じて取引先に協力を求めること。

⑧フランチャイズ(以下、「FC」)における特定プラスチック使用製品の使用の合理化:FC本部事業者は、FC加盟者の使用の合理化に関し必要な指導を行い、製品廃棄物の排出を抑制するよう努めること。FC加盟者は、FC本部事業者が実施する措置に協力するよう努めること。


6.国際環境NGOの動向

国際POPs廃絶ネットワーク(IPEN)が2020年11月に発行した「プラスチックと環境ホルモン、健康」*10)で、プラスチックから浸出する化学物質の多くが環境ホルモンであり、ビスフェノール類、アルキルフェノール類 エトキシレート、過フッ素化化合物、臭素系難燃剤、フタル酸エステル類、紫外線安定剤、および金属が含まれるためマテリアルリサイクルは、これらの有害化学物質の汚染を拡散する。また、バイオプラスチックや生分解性プラスチックにも、化学添加物が含まれており、内分泌かく乱作用があるとしています。


7.市区町村の分別収集・再商品化の動向

市区町村再商品化計画の認定第1号 *12) は、2022年9月30日付けの宮城県仙台市でした。 来年度から仙台市全域で、現行のプラスチック製容器包装の回収日(週1回)に、家庭等から排出されたプラスチック資源(製品プラスチックとプラスチック製容器包装をまとめて指定袋に入れたもの。プラスチック素材100%のものに限る)を一括回収します。 回収したごみは、仙台市が提携している民間業者のJ&T環境株式会社が、プラスチック製品の原料となるペレットやフラフ等にリサイクルをして、物流パレットを製造します。 仙台市は、プラ新法に先駆けて、製品プラスチック一括回収・リサイクルを導入した場合の技術的課題やコストを検証するために、2020年度に約2800世帯1ヶ月間、2021年度に約8000世帯延べ9ヶ月の実証試験をしていました *12)。


*1) 環境省 プラスチック資源循環法関連 Webサイト


*2) 環境省 プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)の普及啓発ページ


*3) 環境省 「プラスチック資源循環戦略」について


*4) 環境省 PDF「プラスチック使用製品設計指針」


*5) 環境省 プラスチック使用製品設計指針と認定制度


*6) プラスチック容器包装リサイクル推進協議会 プラスチック容器包装の環境配慮に関する自主設計指針(改訂版)


*7) 日本プラスチック工業連盟 提言「家庭から出る廃プラスチックの再資源化のあるべき姿」


*8) 循環経済パートナーシップ(J4CE) 事例集「プラスチック」


*9) 環境省 特定プラスチック使用製品の使用の合理化


*10) 国際POPs廃絶ネットワーク(International POPs Elimination Network:IPEN)

  「PLASTICS, EDCs & HEALTH」


*11) 仙台市 全国第1号!製品プラスチック一括回収・リサイクルに係る大臣認定を取得


*12) 仙台市 製品プラスチックリサイクル実証事業を実施しました

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