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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q653.SDSの交付義務について

2023年03月24日更新

【質問】

安全データシート(SDS)は、指定化学物質または指定化学物質を規定含有率以上含有する製品を、国内の他の事業者に譲渡・提供する時までに、その物質の危険性・有害性を評価して、その安全な取り扱い方法を伝えるために、提供しなければなりません。 日本国内では3つの法律(化管法、安衛法、毒劇法)で、それぞれ指定物質と提供の義務が別々に定められているため、どの法律の指定物質であるかによってもSDS交付義務が変わります。


また、これら3つの法律では、指定物質を含んでいたとしてもSDS交付義務の対象外とする除外項目を定めており、各法律の次の除外項目によって、成形品は原則、SDS交付の対象外として位置づけられています。


・化管法:固形物。事業者による取扱いの過程において固体以外の状態とならず、かつ粉状又は粒状にならない製品(例:管、板、組立部品等)

・安衛法:労働者による取扱いの過程で固体以外の状態にならず、かつ、粉状または粒状にならない製品

・毒劇法:器具、機器、用具といった概念でとらえられるもの


しかし、仮に成形品であっても、化管法や安衛法の除外項目に記載されているとおり、加工プロセスで固形以外の状態、粉状や粒状になるような場合には、上記の除外項目には該当せず、SDSの交付が必要となります。 そのような成形品の例として、「化管法SDS制度に関するQ&A」*1)では、熱を加え一部溶融して加工する製品や、購入後に切断・研磨等を行って切削屑等が発生するような製品、摩耗されることが想定される切削・研磨加工のための工具等の部品などが例示されています。 フィルム等を使用者がどのように加工するのかを吟味する必要があります。


なお、SDSを義務付ける3つの法律によるSDS制度を説明した資料として、経済産業省・厚生労働省の連名で、冊子「化学品を取り扱う事業者の方へ -GHS対応-化管法・安衛法・毒劇法におけるラベル表示・SDS提供制度」(令和4年2022年1月)という55頁の小冊子*2) が公表されています。 Webサイトでダウンロードできて、化学品を取り扱う事業者に必要な対応について、網羅的な情報を入手できます。ご参考にしてください。


最後に3つの法律で示されているSDS交付の除外項目を以下に示します。

1.化管法

以下に該当する製品には、化管法の特定化学物質についてSDSやラベルを提供する必要がありません。

1.含有率が少ないもの:

指定化学物質の含有率が1質量%未満(特定第一種指定化学物質の場合は0.1質量%未満)の製品

2.固形物:

事業者による取扱いの過程において固体以外の状態とならず、かつ粉状又は粒状にならない製品(例:管、板、組立部品等)

3.密封された状態で使用される製品:

例:コンデンサー、乾電池等

4.一般消費者用の製品:

専ら家庭生活に使用されるものとして、容器等に包装された状態で流通し、かつ、小売店等で主として一般消費者を対象に販売されている製品(例:家庭用殺虫剤・防虫剤、家庭用洗剤等)

5.再生資源:

資源の有効な利用の促進に関する法律第2条第4項に規定する再生資源(例:空き缶、金属くず等)


2.安衛法

安衛法の通知対象物質は、個々の物質ごとにSDS裾切値が定められています。また、主として一般消費者の生活の用に供するための製品は、SDS交付制度の対象外になります。これには、以下のものが含まれます。

1.医薬品医療機器等法に定められている医薬品、医薬部外品、化粧品

2.農薬取締法に定められている農薬

3.労働者による取扱いの過程で固体以外の状態にならず、かつ、粉状または粒状にならない製品

4.対象物が密封された状態で取り扱われる製品(電池など)

5.一般消費者のもとに提供される段階の食品。(お酒など)(ただし、労働者が表示対象物にばく露するおそれのある作業が予定されるものについては適用除外となりません。)


3.毒劇法

毒劇法の毒物・劇物は、以下に該当する場合、SDS提供の義務がありません(容器等への表示義務はあります)。

1.一回につき二百ミリグラム以下の劇物を販売し、又は授与する場合

2.毒物及び劇物取締法施行令別表第一の上欄に掲げる物を主として生活の用に供する一般消費者に対して販売し、又は授与する場合

また、毒物・劇物が「○○を含有する製剤」と記載されている場合に、以下のものを一般的には当該成分の「製剤」とはみなしません。

1.器具、機器、用具といった概念でとらえられるもの

2.使用済みの廃液等、廃棄されたもの

3.毒物又は劇物を不純物として含有しているもの


*1) 経産省 化管法SDS制度に関するQ&A


*2) 冊子「化学品を取り扱う事業者の方へ -GHS対応-化管法・安衛法・毒劇法におけるラベル表示・SDS提供制度」(令和4年2022年1月) 経済産業省・厚生労働省



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