2023年09月01日更新
【質問】
安衛法第31条の2において注文者が必要な措置を講じなければならない設備の範囲の拡大としてSDS等による通知の義務対象物の製造・取扱設備も対象とあります。
冷却油や潤滑油を使用している工作機械も対象になるのでしょうか?
【回答】
令和4年2月24日に「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令等の施行について(基発0224第1号)(*1)」という通達が公表されました。 この中で労働災害を防止するため注文者が必要な措置を講じなければならない設備の範囲の拡大(労働安全衛生法施行令(*2)(以下「令」と言います。)第9条の3関係)について記述があります。
記述の内容は労働安全衛生法(*3)(以下「法」と言います。)第31条の2の規定により、注文者が請負人の労働者の労働災害を防止するために必要な措置を講じなければならない設備の範囲について、危険有害性を有する化学物質である法第57条の2の通知対象物を製造し、又は取り扱う設備に対象を拡大したというものです。
ご質問の回答としては、工作機械に使用している冷却油や潤滑油が法第57条の2の通知対象物に該当することになった場合、法第31条の2の注文者は必要な措置を要求されることになります。 また、法第31条の2に違反すると法第119条(6月以下の懲役又は50万円以下の罰金)の適用があります。
対象となる設備や必要とされる措置について詳しく説明します。
法第31条の2は「化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物を製造し、又は取り扱う設備で政令で定めるものの改造その他の厚生労働省令(*4)(以下「則」と言います。)で定める作業に係る仕事の注文者は、当該物について、当該仕事に係る請負人の労働者の労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。」という内容です。
政令は令第9条の3です(*5)(*6)。危険物又は引火点が65度以上の物を製造し、若しくは取り扱う設備及びその附属設備(第1項)、通知対象物を製造し又は取り扱う設備(移動式以外のものに限る。)及びその附属設備(第2項)が対象となります。 第2項の部分が改正され、従来の対象物質である特定化学物質障害予防規則の特定第二類物質(26物質)又は第三類物質(8物質)から、新たに法第57条の2の通知対象物(約2900物質まで増加予定)へ拡大されました。 附属設備とは、化学設備に附設された化学設備以外の設備をいい、動力装置、圧縮装置、給水装置、計測装置、安全装置などが該当します(*7)。
厚生労働省令は則第662条の3です。令第9条の3で規定される設備の改造、修理、清掃等で、当該設備を分解する作業又は当該設備の内部に立ち入る作業が対象となります。
注文者が必要な措置は則第662条の4で規定されています。 対象物の危険有害性、作業における安全・衛生の注意事項、作業について講じた安全・衛生確保措置、対象物の流出など事故発生時の応急措置を記載した文書を作成して、作業の請負人へ交付しなければなりません。
今回の改正は、請負人の労働者の労働災害防止の観点から行うものであり、設備で製造し又は取り扱う全ての通知対象物については、処理方法等にかかわらず、危険性又は有害性等の法令で定めている事項を請負人に対して文書交付を行っていただく必要があります。 設備の内部に立ち入る作業であれば、ゴミの収集などについても措置を行う対象となります。 また、製造委託先において使用する化学物質を選定している場合にも、通知対象物であれば、請負人に対して法令事項を記載した文書を交付する必要があります(*8)。
なお、法第31条の2の対象となる設備は、設備ごとに、その適否が判断されるものです。 例えば、解体等を予定している区画において、危険有害性のある化学物質を製造等する設備が複数存在した場合に、法第31条の2の対象となる設備は、請負人が解体等工事を請け負う設備及び当該設備の附属設備に限られ、同じ区画にあるというだけで、予定している解体等工事に一切関わりの無い設備や附属設備まで法第31条の2に基づく措置を講ずる必要はありません。 なお、対象設備について、同一生産ライン上にある設備であっても、別区画の遮蔽された設備であれば同様に考えます。
(*1) 労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令等の施行について(令和4年2月24日付け基発0224第1号)
(*2) 労働安全衛生法施行令
(*3) 労働安全衛生法
(*4) 労働安全衛生規則
(*5) 化学工業における元方事業者・関係請負人の安全衛生マニュアル
(*6) 参考資料
(*7) 平成18年2月24日付け基発第0224003号
(*8) 「「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案」及び「労働安全衛生規則及び特定化学物質障害予防規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集について」に対して寄せられた御意見等について(令和4年2月24日公表)
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