top of page

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q673.REACH規則の制限物質を含有している製品をEUで販売する際の対応について

2023年12月08日更新

【質問】

自社製品の刃物クリーナーを輸出するために成分調査をしたところ、REACH規則の制限物質であるブチルカルビトール(Butyl carbitol)を含有していることがわかりました。 その他の規制成分はありませんでした。

今後、EU地域で販売したい場合、どのような対応すればよいでしょうか?

 

【回答】

EU REACH規則の制限物質は、制限物質ごとに制限の条件が定められています。 ブチルカルビトールは附属書XVII(制限物質リスト)のEntry No55に収載されており、制限される用途は以下のとおりです。


・この制限物質含む「スプレー塗料およびスプレークリーナー」は、欧州で上市することが禁止されています。代替物質への成分変更が必要になります。

・この制限物資を3重量%以上含む「スプレー塗料以外の塗料」は、制限に定められた表示をすることが義務付けられています。


その他の用途であれば、この制限物質を含んでいても、制限をうけません。 しかし、制限をうけない濃度や用途であっても、対象物質が有害物質であることに変わりありません。      


他にもREACH規則に関係することとして、

【登録】

・混合物なので、年間1トン超えの場合に登録が必要です。


【情報提供】

・拡張SDS(e-SDS)の提供


【CLP規則】

・分類の届出

・ラベル貼りと梱包

・Unique Formula Identifier(UFI)と呼ばれる個別の識別番号を取得して、UFIをラベルに表示すること

に対応する必要があります。さらに、その他の法令による規制にも従う必要があります。


REACH規則の制限物質について

EUのREACH規則*1)の制限物質とは、同規則の附属書XVII(特定の危険物質、混合物および物品の製造、上市および使用の制限)に収録されている物質です。 2023年10月18日改正で73物質(群)が該当します。 法文内にも附属書XVIIの記載がありますが、EU化学物質庁(ECHA)のWebサイトの「REACHの制限物質」*2)には物質の検索機能があるので便利です。


ブチルカルビトール(2-(2-butoxyethoxy)ethanol、DEGBE)のREACH規則での制限内容の訳文を示します。


1.2010年6月27日以降、エアゾールディスペンサーのスプレー塗料またはスプレークリーナーの成分として3重量%以上の濃度で一般大衆(購入者や使用者を含む個々人)への供給を目的として上市できません。

2.2010年12月27日以降、エアゾールディスペンサー内にDEGBEを含み、第1項に準拠しないスプレー塗料およびスプレークリーナーを、一般大衆への供給を目的として上市できません。

3.2010年12月27日までに、サプライヤーは、物質および混合物の分類・包装・ラベル表示に関する他の欧州連合の法律を侵害することなく、DEGBEを3重量%以上の濃度で含むスプレー塗料以外の、一般大衆への供給のために上市する塗料には、「Do not use in paint spraying equipment’.塗料スプレー装置で使用しないでください」という、目に見えて、読みやすく、消えないマークが付けられていることを、上市前に保証しなければならない。

サプライヤーは、これらの規制に対応をする必要があります。


なお、REACH規則の全般の概要説明(*3)が、中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21にあります。


*1)EU REACH規則 REGULATION(EC) No.1907/2006

化学物質の登録・評価・認可・制限に関する規則


*2)ECHA Substances restricted under REACH

REACHの制限物質


*3)J-Net21 REACH規則の基礎

閲覧数:957回

最新記事

すべて表示

Q686.化審法における第一種特定化学物質としてデクロランプラスの規制が始まる時期について

2024年04月05日更新 【質問】 POPs条約のCOP11で「デクロランプラス」が附属書Aに追加することが決定されましたが、化審法の第一種特定化学物質として規制が始まるのは何時頃でしょうか。 情報があればご教示ください。 【回答】 デクロランプラスを含むストックホルム条約による廃絶物質(附属書A)収載決定は2024年2月26日に通知されました(*1)。 この通知により、1年後の2025年2月2

Q685.PTFEの成形加工部品におけるPFOAの残留可能性と化審法との関係について

2024年04月03日更新 【質問】 PTFEの成形加工部品を購入して、電子製品の組み立てをしています。 PFOAが残留していることはあるでしょうか。 この場合は、当社は化審法の使用者となるでしょうか。 ご教示ください。 【質問】 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(以下、化審法)、第1条で「この法律は、人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息若しくは生育に支障を及ぼすおそれがある化学物質に

Q684.アメリカの「Model Toxics in Packaging Legislation」(ひな形法)におけるPFAS規制の適用について

2024年03月22日更新 【質問】 アメリカの「Model Toxics in Packaging Legislation」(ひな形法)が2021年2月改正され、PFASが追加されましたが、各州法ではPFAS規制はまだ、食品包装などの一部に限定されているようです。 当社は工業用製品(B to B)を輸出していますので、2021年のひな形法のPFASは適用されないと思っています。この解釈は正しいで

bottom of page