top of page

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

執筆者の写真tkk-lab

Q680.POPs条約で規制される物質を含有する部品の在庫対応について

2024年02月09日更新

【質問】

自社製品に使用している部品にPOPs条約で規制されるデクロランプラスが含まれています。

日本ではデクロランプラスを規制する化審法は対象化学物質の製造とその使用を制限する法律のため、第一種特定化学物質が使用されている「部品の使用」は規制されていないと聞きました。

デクロランプラスを含有している部品が在庫として残った場合、化審法での規制開始後は、日本向け製品に限りデクロランプラスを含有している在庫部品を使用する予定にしています。 そのような対応で問題ないでしょうか。

 

【回答】

現在(2023年12月時点)デクロランプラスは、化審法の第一種特定化学物質としての指定が審議されていますが、指定された時点で既に製造済みの在庫であっても、デクロランプラス含有部品を製品に使用することは貴社や顧客、取引先(部品メーカ等)にとってリスクがあるため、非含有の代替品に取り換える等の措置を行うことを推奨しますので、自社でご判断お願いします。


以下にこの理由について解説します。


化審法第25条で「要件に適合する第一種特定化学物質ごとに政令で定める用途以外の用途に第一種特定化学物質を使用してはならない」と規定されています1)。 ここに記載されている「要件に適合する第一種特定化学物質ごとに政令で定める用途」の「要件」として「当該用途について他の物による代替が困難であること」と「当該用途に当該第一種特定化学物質が使用されることにより環境の汚染が生じて人の健康に係る被害又は生活環境動植物の生息若しくは生育に係る被害を生ずるおそれがないこと」が定められています。 化学物質がPOPs条約の附属書Aに追加された場合、国内では関係省庁にて化審法の第一種特定化学物質指定に向けた審議が行われます。 ここで、上記第25条の当該化学物質の特定用途(「要件に適合する第一種特定化学物質ごとに政令で定める用途」)を認めるかどうかについても検討されます。デクロランプラスは、POPs条約の第11回締約国会議(COP11)で附属書Aに追加されることが決まり、現在化審法の第一種特定化学物質への指定に向けて審議されていますが、「 デクロランプラスは、関連業界では代替物質への転換の検討が数年前より進められており、2024年末頃までに他の物質への代替が完了する見込みである」ことから、特定用途は設けられない見込みです 2)。


なお、第25条の特定用途が政令で規定された場合は、第一種特定化学物質が使用されている製品の使用について、第28条で別途定める技術上の基準への適合義務が課せられ、第一種特定化学物質が使用されている製品の譲渡等に際して第29条により表示義務が課せられます。


また第34条で「化学物質が第一種特定化学物質として指定された場合、当該化学物質又は当該化学物質が使用されている製品の製造又は輸入事業者に対して」又は「第25条の規定に違反して第一種特定化学物質が使用された場合、当該第一種特定化学物質を使用した者に対して」、主務大臣は「当該化学物質による環境の汚染の進行を防止するために特に必要があると認めるときは、必要な限度において、当該化学物質又は当該化学物質が使用されている製品の回収を図ること、その他当該化学物質による環境の汚染の進行を防止するために必要な措置をとることを命ずることができる」とされています。


更に、残留性有機汚染物質を含有する製品を廃棄する際にも適切な処置が必要になります。 こちらは化審法には定めはありませんが、国際的な指針3) や、廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)等で必要な措置が規定されていますので、これらの遵守も必要となります。


化審法では残留性有機汚染物質による人体や環境への影響を排除する目的で、第一種特定化学物質を使用した製品が市場に出ることを厳しく制限しています。 同法で当該化学物質含有部品の使用を制限する直接的な記述はありませんが、代替物質の転換が可能で特定用途の使用や輸入も認められないデクロランプラスは、含有部品が市場にない(つまり使用できない)前提で各種取り決めがなされていると言えます。 このため第一種特定化学物質に指定後にデクロランプラス含有部品を使用した製品が市場に出されていることが判明した場合は、貴社や部品メーカに対し「当該化学物質による環境の汚染の進行を防止するため(第34条)」市場からの製品回収命令などが出される可能性があります。 また、製品の廃棄時にも各種の規定がありますので(これらは新たな知見や情報により更新される場合もあります)、顧客など製品使用者への対応(含有の表示・通知、取扱方法開示など)も必要となります。


以上のように、在庫として残ったデクロランプラス含有部品を製品に使用することは貴社や顧客、取引先(部品メーカ等)にとってリスクがあるため、当該化学物質を含有しない代替品に交換する等でリスク回避する必要があります。


【参考資料】

1)化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律 逐次解説


2)経済産業省 令和5年度化学物質審議会第2回安全対策部会 資料1-1「第一種特定化学物質に指定することが適当とされたメトキシロクロル、デクロランブラス及びUV-328が使用されている製品で輸入を禁止するものの指定等について(案)」P5~P8


3)POPs 廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドライン

閲覧数:5,737回

最新記事

すべて表示

Q704.REACH規則におけるCLSについて

2024年12月06日更新 【質問】 REACH規則にでてくるCLSとはどのようなものでしょうか? _________________________________________ 【回答】 REACH規則1)におけるCLS(Candidate List of...

Q702.TSCAにおける成形品への規制内容について

2024年11月22日更新 【質問】 TSCAにおける成形品への規制内容はどのようなものでしょうか? _________________________________________ 【回答】 TSCAにおける成形品の規制は、第5条(§2604)1)...

Q699.REACH規則の附属書14、17と成形品の扱いについて

2024年11月19日更新 【質問】 REACH規則について成型品は附属書17が対象で附属書14は対象外になる理解で問題ありませんでしょうか? _________________________________________ 【回答】...

Comments


bottom of page