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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

EU REACH規則の基礎

  • 執筆者の写真: tkk-lab
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  • 24 時間前
  • 読了時間: 11分

2026年06月19日更新


一般社団法人東京環境経営研究所(TKK)をご愛顧いただいている皆様へ


TKKでは、化学物質管理や法規制対応を中心に、企業の皆様の環境への取り組みを支える情報を発信してまいりました。2026年は、地球温暖化対策や省エネルギー、環境マネジメントシステムなど、より幅広いテーマについても、皆様の実務に寄り添った情報提供を進めております。

環境経営に関するお役立ち情報の第3回目では、世界でも最も影響力の大きな化学物質規制の一つである「EU REACH規則の概要」を取り上げます。REACH規則はEUに製品を輸出する企業だけでなく、そのサプライチェーンに位置する日本企業にも影響が及ぶため、多くの企業にとって無視できない重要な規制です。

本稿では、REACH規則の基本的な考え方から、登録・評価・認可・制限といった主要な義務、そして化学品と成形品で異なる対応ポイントまで、実務に役立つ視点で分かりやすく解説します。皆様の社内教育や取引先対応の一助としてお役立ていただければ幸いです。


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EU REACH規則の基礎

 

REACH規則とは、人々の健康や環境を化学物質によるリスクから保護し、欧州連合(EU)の化学産業の競争力を高めるために制定された規制です。有害性の高い物質をそれに代わる別の物質に置き換えることや、動物実験の回数を削減することも重要な目的としています。

REACH規則は、EUにおける化学物質規制の中心となる法律であり、単一の物質や洗剤や塗料といった混合物などの「化学品」だけでなく、一部の義務では衣類、家電などの「成形品」も規制対象となっており、EUに製品を輸出する日本企業だけでなく、その日本企業のサプライチェーンの川上に位置する企業にも大きな影響を及ぼす規制の1つです。

REACH規則は、化学物質の安全性を証明する「立証責任」を、行政ではなく企業側に課している点が特徴です。企業は、自社が製造・販売する物質のリスクを自ら特定・管理し、その結果に基づき、行政が必要に応じて「認可」や「制限」などの規制措置を課します。なおかつ、企業側は、安全な使用方法をユーザーに伝える法的義務を負います。名称の由来通り、登録(Registration)、評価(Evaluation)、認可(Authorisation)、制限(Restriction)等が主な内容として挙げられます。

 


1.登録

「データなくして市場なし(No data, no market)」の原則に基づき、EU域内で年間1トン以上の化学物質を製造または輸入する企業は、その化学物質の情報を欧州化学品庁(ECHA)に登録する必要があります。目的は、事業者が自ら化学物質のリスクを特定・管理し、川下ユーザーへ安全情報を提供できるようにすることです。

物質の場合は一部の除外を除いて原則として登録の対象となります。混合物の場合は、混合物としての登録は不要ですが、混合物中の「個々の構成物質」が登録対象となります。

一方、成形品は、原則として登録は不要です。ただし成形品であっても、香りの出る消しゴム(香料成分)のように、物質の意図的な放出がある場合には、意図的放出物質が登録対象となります。

登録では、登録対象物質の危険有害性や年間製造・輸入量に応じて要求される、物質の物理化学的性質や人体・環境への有害性、安全な使用条件などの情報が求められ、これらの情報を取りまとめて、登録文書として欧州化学品庁(ECHA)へ提出しなければなりません。また、同じ物質であっても年間製造・輸入量が多ければ多いほど、登録に要求される情報が多くなるため、登録を行う際にかかる費用等も高額になります。

 

登録における主なポイント


(1)輸入者あたりで1トン以上になる物質があるか?

EUへの販売計画等から、輸入者あたりで1トン以上になる可能性がある物質の有無を確認します。この際の1トンの対象は、混合物全体ではなく、混合物中の「個々の構成物質」単位である点に留意する必要があります。

 

(2)登録が必要な場合、誰が登録を行うか?

登録は、物質の製造~EU輸入者までのサプライチェーンの誰かが実施する必要があります。また、EU域内企業が実施するため、日本企業は直接登録することはできません。そのため、日本企業の場合は以下のいずれかの企業が登録を行うことになります。


・日本企業の川下に位置するEU域内輸入者

・日本企業(製造者)が選任したEU域内の唯一の代理人(OR:Only Representative)

・日本企業の川上に位置する製造者(川上の製造者がOR経由で登録)


登録には工数や費用がかかりますし、誰が登録を行うのかによって、今後の販売チャネルの自由度や物質に関わる営業秘密情報の扱い等でも一長一短があります。そのため、自社のビジネス戦略に合わせて誰が登録を行うのかが重要になってきます。

 


2.   評価

ECHAや加盟国が、企業から提出された登録文書や試験計画を精査します。化学物質が健康や環境にリスクを及ぼさないかを確認し、必要に応じて企業に追加情報の提出を要求するプロセスです。

また、化学品や成形品等に有害性の高い「高懸念物質(SVHC)」を含んでいるが技術的・経済的に実現可能な代替手段があると判断された場合や、この物質は特定用途において健康や環境へのリスクが管理されていないと判断された場合には、次のステップとして「認可」か「制限」といった規制が検討されることになります。

 


3.   認可

「認可」は、発がん性などの有害性が高い高懸念物質(SVHC)について、欧州委員会(EC)の認可がなければ、使用等を禁止する仕組みです。代替が困難な場合等は「認可」することで使用等を認めるものの、原則使用等を禁止とすることで、より安全な代替物質への切り替えを企業に促すことを目的としています。

認可対象物質に指定された場合には、物質毎に指定された日付以降、欧州委員会(EC)による認可を取得していなければ、化学品を輸出することができなくなります。

なお、認可は化学品のみが対象であり、成形品は対象ではありません。ただし、認可対象物質の前段階である認可対象候補物質リスト(CLS:Candidate List of Substances)に指定された場合には、特定の条件を満たす場合に、情報伝達や通知義務が生じます。

 

認可における主なポイント


(1)化学品の場合

① 認可リスト(附属書XIV)に掲載されているか?

自社が扱う物質が、認可リスト(附属書XIV)に掲載されているか確認します。掲載されている場合は、「日没日(Sunset Date)」を確認します。日没日とは、その物質が使用禁止される最終期限日です。


② 日没日以降、化学品を使用するか?

日没日以降は原則その物質をEUへ輸出できないため、代替等の対応を図ることが必要となります。日没日以降も、その物質をEU域内で使用し続ける場合、「認可申請」を行い、欧州委員会(EC)の認可を得る必要があります。認可を得るには、代替案の分析や社会経済分析の提出が必要です。


③ CLSが0.1重量%を超えて含まれているか?

自社化学品にCLSが0.1重量%を超えて含まれていないか確認します。このリストは概ね2回/年で更新されるため、定期的なチェック体制が必要です。

自社化学品に、CLSが0.1重量%を超えて含まれる場合、川下の取引先へ安全に使用するための情報を安全データシート(SDS)等によって提供する必要があります。

 

(2)成形品の場合

① CLSは0.1重量%を超えて含まれているか?

自社成形品にCLSが0.1重量%を超えて含まれていないか確認します。

自社成形品にCLS が0.1重量%を超えて含まれる場合、川下の取引先へCLSの物質名等、安全に使用するための情報を提供する必要があります。


② ECHAへの通知は必要か?

0.1重量%を超えて含まれるCLS単位で年間の製造量や輸入量が1トンを超える場合はECHAへの通知が義務付けられます。ただし、その物質の用途が既に登録済みであれば通知は免除されます。実際には多くの用途が登録済みのため、通知が必要となるケースは限定的です。

 


4.   制限

特定の用途でリスクが高い化学物質の製造・販売・使用をEU全域で制限する仕組みです。制限対象に指定された物質(制限対象物質)ごとに禁止用途や閾値、除外用途等の「制限条件」が設定されています。

「制限」は、EU域内で製造された場合だけでなく、EU域外から域内に輸出された化学品・成形品にも同様に適用されるため、日本から輸出する化学品・成形品でも、制限対象物質が閾値を超えて含有しないようにしなければなりません。

制限リスト(附属書XVII)に新しい物質や用途が追加される際には、ある程度の猶予期間が設けられますが、代替品への切り替えや在庫の売り切りのためには、時間がかかるため、それらの時間を考慮した対応が求められることになります

 

制限における主なポイント


(1)制限リスト(附属書XVII)を確認して自社製品が対象となるか?

物質ごとに設定された制限条件から、自社製品が制限の対象になるかを確認します。

 

(2)制限に対応しているか?

自社製品が対象となる場合には、自社およびサプライヤーから入手した情報等で、自社製品における制限対象物質の含有有無や、含有量等を確認する必要があります。

含有している場合は、輸入が認められる基準(濃度や溶出量、含有量など)を満たしているかを確認します。もし基準を満たしていない場合、継続してEUに輸出するためには、該当物質や部品等の代替を図り、基準を満たす必要があります。

 


5.情報伝達

REACH規則では、化学物質を安全に使うための情報をサプライチェーンの川上(製造者)から川下(ユーザー)まで繋ぐ「情報伝達」として、危険有害性を有する化学品の場合にはSDSの提供が、成形品の場合にはCLS情報の提供が義務付けられています。

 

情報伝達における主なポイント


(1)化学品の場合

危険有害性がある化学品を供給する場合、その化学品を安全に取り扱うために、化学品の性質や危険有害性、応急措置や廃棄方法などの情報を記載したSDSを提供する必要があります。また、受領した側は自社の使い方がSDSに記載された、安全な使用条件の範囲内か確認する必要があります。このような化学品を対象としたSDSによる情報伝達は、日本をはじめ多くの国々で義務化されています。

 

(2)成形品の場合

成形品にCLSが0.1重量%を超えて含まれる場合、川下の受領者へ安全に使用するための情報として少なくとも含有するCLSの物質名を提供する必要があります。また、消費者から要求があれば、45日以内に回答する義務があります。このような成形品を対象としたCLSの情報伝達は、他国の化学物質規制ではあまり例がなく、REACH規則の特徴的な義務と言えます。この義務に対応するためには自社製品中のCLSの含有情報を把握しておくことが求められます。

 


6.まとめ

このように、REACH規則は、対象が「化学品」か「成形品」かによって対応すべき義務が異なってきます。化学品固有の義務としては「登録」や「認可」、「SDSの提供」等が、成形品固有の義務としてはCLSを0.1%超含有している場合の「情報伝達や通知」等が挙げられ、さらには共通的な義務として制限条件に応じた「制限」が挙げられます。

 

この他、日本では一般的に使用されている物質であっても、CLSや、認可リスト(附属書XIV)、制限リスト(附属書XVII)に順次追加されています。その結果、REACH規則は世界を先導する厳しい基準であると言えます。

また、REACH規則は「EUに直接輸出していないから関係ない」と思われがちですが、実際は多くの「日本の国内取引」でもREACH規則への対応が必須になっています。自社が国内取引しかしていなくても、「最終的にEUへ輸出する企業」が1社でもサプライチェーンにいれば、そのメーカーから「貴社の部品にREACH規則の対象物質は入っていないか?」等の調査が求められるからです。対応が遅延すると取引停止となる可能性があるため、多くの企業が対応しています。

 

世界を先導し、日本のサプライチェーンにも大きな影響を及ぼすREACH規則の動向を把握して最新の規制に対応したものづくりをすることが、グローバル市場での競争力維持に不可欠であると考えます。

 

執筆: 一般社団法人東京環境経営研究所 会員 中小企業診断士 和氣 友理

 


参考文献:

1)     第一法規株式会社 一般社団法人東京環境経営研究所編著、「化学物質規制ガイド2025年改訂版」

2) ECHA REACH規則の理解

3) ECHA ECHA CHEM

 

4) ECHA  CLS

5) ECHA 認可リスト

6) ECHA 制限リスト

 

 

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