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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

執筆者の写真tkk-lab

SCIPデータベース初版が公開されました

2021年11月01日更新

成形品中の高懸念物質のデータベース (以降「SCIP DB」) の初版が公表され、アクセスが可能となりました。1)

なお、ここに引用していますURLは間もなく変更されることが予定されていますので注意するようコメントされています。

これを補足しますと、例年更新されていますIUCLID 6 2) は、リリースノート 3) によればクラウドユーザー版が2021年10月25日、全ユーザー版が2021年10月27日にリリースされています。

更に、リリースノートによればFAQ 4) の参照に言及しています。


今回のSCIP DB公開は、消費者に対しては購買時に一層の見識のある選択を可能にし、また廃棄物処理業者にとっては成形品の再使用や材料リサイクルをより一層増進することを支援することを目的としています。


このSCIP DBはEU全域のおよそ6,000社は、高懸念物質 (SVHC) を含有している製品をECHAに届け出るという新しい義務の達成に成功しています。

SCIP DBには現在、4百万件以上の成形品が収載されています。


公開されているSCIP DBに収載されている情報 5) によれば、最も一般的な製品カテゴリーは以下のようなっています。


・機械およびその部品

・計測器およびその部品

・電子装置およびその部品

・車輛およびその部品

・ゴム製品

・家具


また、届出されている最も一般的な高懸念物質 (以降「SVHC」) は以下となっています。


・鉛 (ボールベアリング、バッテリー等)

・一酸化鉛 (照明、車輛部品)

・三酸化チタン酸鉛 (電子調理器中)

・珪酸塩鉛 (鉛クリスタル製品、車輛塗装中)

・一般に登録商標で「 Dechlorane Plus」と表記されている物質 (塗料、設置薬剤中)

 

SCIP DBにおいては、成形品名または商標名、製品カテゴリー、材料タイプまたは化学品名で検索が可能となっています。

データは、製品が有害化学物質を含有しているかどうかをチェックすることにより見識ある製品選択や安全使用の説明書を消費者に提供するなどの援助を行い、廃棄物処理業者には成形品の再使用やリサイクルプロセスを更に開発するために必要データを使用することが可能となります。


ECHAの執行長官 ( Bjorn Hansen ) は次のように言っています。

「今回のスタートでEU市場における成形品中の有害物質に関する情報アクセスが改善される。


それにより、SVHCを含む製品を廃棄段階に至るまで追跡することを支援し、サーキュラーエコノミーのゴールをサポートすることになるだろう。」


環境、海洋・漁業EU委員は以下の発言をしています。

「SCIP DBの発足は、製品中の高懸念物質について透明性をもたらす本当のマイルストーンである。


情報の蓄積は、特に消費者、廃棄物処理業者および政策決定者等に対し有益な価値をもたらす。それにより安全でクリーンな製品の配送を強化し、二次的にはEU廃棄物法令で定義されている再使用およびリサイクルに関し優先付けられている制度にしたがっている材料の配送を強化できる。 

関連企業の迅速な情報提出のお陰でSCIP DB構築ができた。これは特にサーキュラーエコノミーアクションプランおよび汚染ゼロに関する我々の化学物質戦略等の欧州グリーンデイールを実行するためのキーステップである。」

なお、REACH規則第33条では認可候補物質として高懸念物質 (SVHC) を重量比0.1%以上含有している成形品について川下ユーザーや消費者に対し、安全に使用するための情報伝達の義務があります。その目的は物質の代替化を促進することにあります。


一方、WFD 6) の下におけるSCIP情報は上述のように消費者に対しては、製品購買時の見識ある選択を促すことにあり、廃棄物処理業者に対しては、廃棄物の再使用、リサイクルの促進のため有害物質を排除しサーキュラーエコノミーを実現することにあります。

 

まとめ

SCIPの情報届出の義務は、EU域内の製造者、加工者、輸入者および流通業者に課せられた義務で、我国の事業者にその義務はありません。 しかし、EUに輸出している自社の成形品に0.1重量%以上のSVHCを含有している場合には、輸出先に対しSCIP届出に必要な情報の提供を行うことが求められます。

なお、「アーティクルマネジメント推進協議会 SCIP対応ガイドライン検討会アドホック」から、「SCIP対応ガイドライン ver1.2」7) が公開されています。

ガイダンス公開の目的について以下のように記述されています。


「SCIPデータベースの登録要件や内容を解説し、chemSHERPAでどのように調査をして、自社製品の SCIP情報を作成すれば良いのかを例示することにより、各社の業務に寄与することを目的とします。 また、あわせて運用ルールやノウハウ集を示すことで、サプライチェーン全体のSCIP情報調査の負荷を軽減し、最小限の負荷 で法的義務が果たせるよう方向付けをすることも意図しております。


尚、本ガイドラインは一定のルールを示しますが、法的義務の判断は最終的には各社の責任において行って頂くことが原則であり、全てのSCIPデータベース登録責務を示すものではありません。


(担当 : 瀧山 森雄)


引用







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