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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

Q657.RoHS指令の最近の違反状況について

2025年08月29日


【質問】

RoHS指令の最近の違反状況はどのようになっているでしょうか。

_________________________________________


【回答】

RoHS指令に関する違反状況は、2023年12月に公開された「消費者製品中の有害化学物質に関する執行調査結果(REF-10報告書)」(*1)や欧州委員会が運営する「Safety Gate」(*2)のホームページから確認ができます。REF-10報告書によるとREACH規則などいくつかの規制の中でもRoHS指令の割合が高く、違反内容としては制限物質である「鉛」「カドミウム」「DEHP」「DBP)」の制限濃度以上の含有があげられています。


◆REF-10報告書

報告書の調査は、2022年の1年間について欧州化学品庁(ECHA)の「執行情報交換フォーラム(フォーラム)」にて第10次REACH規則執行プロジェクトREACH EN FORCE:REF-10)として実施されたものとなり、その内容については以前に本コラムで取り上げています。(*3)REF-10においてRoHS指令は、329製品を調査し違反が164製品で確認され、その違反率は49%となります。この違反率はREACH規則など他の規制より大きな割合となっていることが示されています。また、1つの製品で複数の違反があり、違反の件数は合計で262件におよんでいます。違反の内訳は、鉛の濃度が閾値を超えたことが原因となるものが160件とほぼ半数を占め、次いでDEHP(42件)、カドミウム(34件)、DBP(27件)となっています。違反の内容ははんだ付け部における鉛(全検査ケースの50%)、次いで軟質プラスチックにおけるフタル酸エステルのDEHP(19%)とDBP(12%)、そして回路基板におけるカドミウム(12%)が挙げられています。ただし、鉛の違反率が高い要因として、高リスクとされる電気製品のはんだ付け部の鉛に重点を置いた検査アプローチが影響した可能性を考慮する必要があるともされています。同様に、フタル酸エステル類についても軟質プラスチックにおけるフタル酸エステルの調査に重点を置かれている点を考慮する必要があるとされています。


◆Safety Gateから確認できる最近の違反事例について

欧州委員会が運営する「Safety Gate」では、市場から危険な製品を排除することを目的に、市場監視による違反事例が掲載され、定期的に更新がされています。RoHS指令の違反については、「製品カテゴリ」を「電気電子機器」、「リスクタイプ」として「環境、ケミカル」などと選択すると事例の確認ができます。2025年7月時点においてこの検索条件で直近の20事例を確認すると「鉛(19件)」「カドミウム(2件)」「DEHP(9件)」「DBP(7件)」となります。(一つの製品で複数の違反あり)なお、「鉛」については、19件中14件についてはんだ中に含有しているとの記載があり、この違反が高い割合を占めていることがわかります。


 以上のように2022年の調査結果の傾向と同様に直近のRoHS指令違反についても「鉛」「カドミウム」「DEHP」「DBP」の4物質がRoHS指令違反の中心になっており、その中でもはんだ中に含有する「鉛」の摘発が多い傾向になっていると考えられます。


(*1)REF-10報告書

(*2)EC Safety Gateトップページ

(*3)REF-10報告書

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