2021年10月08日更新
6月12日付けの本コラムで、RoHS指令Pack22の動向を紹介しています。 また、現在Pack23、Pack24も進行中で、これらの動向は多くの企業の関心が強いところであり、その後の動向を紹介します。
1.Pack22の動向
欧州委員会が委託した調査会社(Oeko-Institut e.V.)により、Pack22の意見募集は2020年12月23日から開始され、2021年3月3日に終了しました1)。 提出された意見は、EU CIRCABCのWebサイト2)に掲載するとしています(ただし、現時点では未掲載)。
このPack22は2020年10月28日に開始され、2021年8月27日までの10ヶ月間の予定で実施されてきましたが、9月15日にOeko-Institut e.V.のWebサイトに進捗情報が掲載されました1)。 それによると、適用除外(付属書IIIの適用除外6(a)、6(a)-I、6(b)、6(b)-I、6(b)-II、6(c)、7(c)-I、7(c)-II)に対する評価報告書のドラフト版は最終承認段階にあるとしています。 また、適用除外7(a)の評価報告書はドラフト版完成間近段階にあるとしています。 全ての評価がまとまった最終評価報告書は、欧州委員会の承認後、10月初旬に発表される予定としています。 その後、法制化手続きが開始されることになります。 附属書III(適用除外用途)6(a)等の現状の有効期限である2021年7月21日は既に過ぎてしまっており、規定により、しばらくは現状の適用除外用途規定が継続されます。 Oeko-Institut e.V.からは、評価報告書が最終決定され、欧州委員会の承認を得て公表されるまでは、特定の適用除外の評価結果やそれぞれの推奨事項について、案内はできないとしています。
2.Pack23の動向
Pack23は、附属書III 4(f)、8(b)、8(b)-I、9(a)-II、13(a)、13(b)、13(b)-I、13(b)-II、13(b)-III、15、15(a)項の適用除外用途の見直しに関する調査プロジェクトです。 Bio Innovation Service社により意見募集が3月18日から開始され、5月27日に終了しています3)。 その後の進捗に関する情報は、現時点では公開されていません。
今回の意見募集は附属書III(適用除外用途)のうちの以下11項目が対象です。
(1) 4(f):本附属書で特に記載されていない、特別用途のその他の放電ランプに含まれる水銀
(2) 8(b):電気接点に含まれるカドミウムとその化合物
(3) 8(b)-I:電気接点に含まれるカドミウムとその化合物(サーキットブレーカー 他)
(4) 9(a)-II:吸収型冷蔵庫のカーボンスチール製冷却システムの防錆剤として冷却液に含まれる、重量比で最大0.75%の六価クロム。他
(5) 13(a):光学機器の白ガラスに含まれる鉛
(6) 13(b):反射率基準器のフィルターガラスおよびガラスに含まれる、カドミウムおよび鉛
(7) 13(b)-I:イオン着色のガラスタイプの光学フィルターに含まれる鉛
(8) 13(b)-II:ガラスタイプのストライキング光学フィルターに含まれるカドミウム(39項の用途を除く)
(9) 13(b)-III:反射率基準器のフィルターガラスおよびガラスのうわぐすりに含まれる、カドミウムおよび鉛
(10) 15:集積回路のフリップチップパッケージ内で、半導体ダイとキャリアの間で確実な電気的接続を実現するためのはんだ中の鉛
(11) 15(a):集積回路のフリップチップパッケージ内で、半導体ダイとキャリアの間で確実な電気的接続を実現するためのはんだ中の鉛(詳細条件あり)
今回の意見募集で提出された件数と、その主な内容は以下の通りです。
1)4(f):合計約170件
これはPack22でも申請があったアンブレラ・プロジェクト(*1)からの申請です。 多くの製造業者から意見が提出されました。 これらの用途のランプは、イベント、科学、医療業界向けの特殊な製品であり、水銀を使用しているため、代替品がありません。 製造業者は可能な限り使用量を削減しようとしていますが、解決策が見つかっていません。 多くの製造業者は、そのランプの紫外線出力、信頼性、寿命、コスト効率に代替品が無いことを理由にしています。
*1:アンブレラ・プロジェクト(RoHS Umbrella Industry Project)
欧州のデジタル技術業界団体であるデジタル・ヨーロッパ(Digital Europe)や欧州機械・電気・電子・金属加工産業連絡会(ORGALIME)をはじめ、日本電機工業会(JEMA)や電子情報技術産業協会(JEITA)、米国商工会議所(AmCham)やIPCといった欧州域外の業界団体等を含む40以上の業界団体・工業会で構成されています。
2)8(b)、8(b)-I :合計 2件
T&M連合(Test & Measurement Coalition:工業用監視・制御機器の製造に携わる企業の60%が加盟する団体)からと、もう1社から意見が提出されました。 該当する機器の製品寿命が長期化し、その耐用年数をサポートするために高い信頼性が求められており、その適合性評価に相当の時間が必要であることを理由にしています。 また、カテゴリ9(産業監視および制御機器)は、EU市場に置かれているすべての電気・電子機器の0.2%に過ぎず、影響が少ないことも強調しています。
3)9(a)-II:合計1件
T&M連合から意見が提出されました。上記2)項と同様の内容を理由としています。
4)13(a) :合計2件、13(b)、13(b)-I、13(b)-II、13(b)-III:合計1件
T&M連合から意見が提出されました。上記2)項と同様の内容を理由としています。 また13(a)については、もう1社からも意見が提出されており、光源からの加熱でガラスが歪みを引き起こさないように使用しているためとしています。
5)15、15(a):合計1件
T&M連合から意見が提出されました。上記2)項と同様の内容を理由としています。
3.Pack24の動向
Pack24は、附属書III 5(b)、 18(b)、 18(b)-I、 24、29、32、34項と、附属書IV 34項の適用除外用途の見直しに関する調査プロジェクトです。 Pack22と同じ調査機関であるOeko-Institut e.V.社により、意見募集が3月30日から開始され、6月8日に終了しました5)。 その後、9月末にドラフト版の調査報告書を欧州委員会に提出する予定で、その後、意見募集を経て、10月に最終版の調査報告書を作成する予定とされています。 調査報告書が欧州委員会に承認された後に公表するとしています。1)
今回の意見募集は附属書III(適用除外用途)の以下7項目と附属書IV 34の合計8項目が対象です。4)
(1) 5(b):蛍光灯のガラスに含まれる鉛で、重量比0.2%を超えないもの
(2) 18(b):BSP蛍光体を含む日焼け用ランプに使用される放電ランプの蛍光粉体の活性剤としての鉛(重量比1%以下)
(3) 18(b)-I:BSP蛍光体を含む医療用光線治療機器に使用される放電ランプの蛍光粉体の活性剤としての鉛(重量比1%以下)
(4)24:はんだ付けの穴に鉛を通して機械的および電気的に接続される、円状および平面状のセラミック多層コンデンサ
(5)29:指令69/493/EEC(クリスタルガラス指令)の附属書I(カテゴリー1、2、3、4)に規定されている、クリスタルガラスに含まれる鉛化合物
(6)32:アルゴンおよびクリプトンレーザー管のウィンドウアッセンブリーに使用されるシールフリットに含まれる酸化鉛
(7)34:サーメットベースのトリマー電位差計の部品に含まれる鉛
(8)附属書IV 34:BSP蛍光体を含む体外式光治療用ランプに使用される放電ランプの蛍光体粉末の活性剤としての鉛
今回の意見募集で提出された主な内容は以下の通りです。
1)5(b)
Lighting Europe(ブリュッセルに拠点を置き、30社の企業と各国の協会を代表している照明業界の団体)5)から意見が提出されました。 ガラス生産におけるエネルギー消費を削減するために、適用除外が重要であると主張しています。
また、スウェーデン化学品庁(KEMI)からは、鉛は、消費者製品において可能な限り段階的に廃止されるべきという懸念の特性を有する物質である旨の意見が提出されています。
2)18(b)、18(b)-I、附属書IV 34
Lighting Europeから意見が提出されました。 紫外線を発生させる鉛活性化剤として使用されているが、互換性のある光スペクトル特性を持つ代替物質が無い旨の意見が提出されています。 また、ハロゲンランプメーカーからもLighting Europeを支持する旨のレポートが提出されています。
3)24
はんだ付けにおいて、低い抵抗およびインダクタンスを有し、良好な高周波特性を有した代替材料が無い旨の意見が提出されています。
4)29
過去30年間にわたり、代替品の研究が進められてきたが、実行可能な解決策は確立されていない旨の意見が提出されています。
また、他の15社からも支持をする旨のレポートが提出されています。
5)32
製品の製造段階でガラスの溶融温度を下げるために使用されるが、代替品が無い旨の意見が提出されています。
6)39
アンブレラ・プロジェクトから、従来品のような長寿命、低温度係数、広動作温度範囲、周波数特性等の性能を満たす代替品が開発されていない旨の意見が提出されています。
4.今後のPackの動向
Packの動向は多くの企業の関心が強いところであり、今後ともOeko-Institut e.V.やBio Innovation Serviceの調査会社のWebサイトや、EUのWebサイト6)で公開される情報をチェックする必要があります。
・Pack22については、第1項の繰り返しになりますが、10月初旬に最終評価報告書がまとまる予定とされています。1)
その後、欧州委員会の精査・承認(2ヶ月間)を得て、2021年12月初旬に官報告示されると推測されます。
・Pack23については、Pack23のプロジェクト開始が2021年3月22日なので、終了は10ヶ月後の2022年1月21日と予想されます。予定通り最終報告書が提出されるとし、その後、欧州委員会の精査・承認(2ヶ月間)を得て、2022年3月下旬に官報告示されると推測されます。
・Pack24については、”Project Description”7)によると、Pack24のプロジェクト期間は2020年12月17日~2021年10月16日までの10ヶ月間とされています。意見募集は当初の予定通りの2021年3月末に開始されていることから、予定通り10月中旬に最終報告書が提出されるとし、その後、欧州委員会の精査・承認(2ヶ月間)を得て、12月中旬に官報告示されると推測されます。
(中山 政明)
引用
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