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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

RoHS指令に関する3つの検討状況

2023年09月08日更新

グリーンディールに基づき、化学物質に関連する各種規制の見直しが進められています。

最も早く改正検討が進められていた電池規則は7月28日に官報公示されましたが、その他にも、ELV指令や包装材指令、エコデザイン指令、CLP規則等、各種規制について改正案が公表されています。 またREACH規則についても2023年末を目途に改正案の検討が進められています。


では、RoHS指令についてはどうでしょうか?


RoHS指令についても改正方針に関する意見募集等が行われ、欧州委員会での改正案策定段階に位置づけられています。 また、制限対象物質の追加や、附属書IIIに収載され、2021年7月に有効期限を迎え更新申請があった合金中の鉛など各種適用除外用途についての見直しも、同様に欧州委員会での改正案策定段階に位置づけられています。


これらRoHS指令に動向について改めて整理してみます。


1.RoHS指令全体の見直し(RoHS3に向けた改正検討)

RoHS指令全体の見直しに関するイニシアティブ1)に関しては、2022年2月および2022年3月に情報提供や意見募集が実施され、それを受けて欧州委員会が改正案を策定する段階にあります。 欧州委員会のホームページ上は2022年末に改正案を公表する予定となっていますが、いまだに改正案は公表されていません。


欧州委員会での検討にあたっては、欧州委員会内のRoHS専門家グループ2)で議論が行われますが、2022年10月に実施されたRoHS専門家グループ会合の議事録3)で改正検討を一時中断し、2023年に改正提案は実施しないことが示されました。 この理由としては、REACH規則やErP指令の見直し、WEEE指令の評価、修理する権利の設定、電池規則の制定などの手続きが併行して行われており、これら他規制の検討結果がRoHS指令の改正内容にも大きな影響を及ぼす可能性があることが挙げられています。


前述のとおり、グリーンディールではRoHS指令に限らず、関連する製品多くの製品規制の見直しが進められており、すでに改正案が公表されている法規制については、これまでになかったカーボンフットプリントやリサイクル材の使用、デジタル製品パスポートなどの新たな義務が追加される等、大幅な改正が予定されています。 そのため、それらの関連規制の検討内容を踏まえ、他法規制との整合性を図ったRoHS指令の見直しを実施する方針となったと言えます。


2.制限対象物質の追加検討

制限対象物質の追加に関しては、RoHS指令の制限対象物質および適用除外用途申請の評価方法の見直しに関するプロジェクト(パック15)の報告書が2021年3月に公表され、詳細検討を行った7物質群のうち、次の2物質について制限対象物質に追加することが推奨されていました。

・中鎖塩素化パラフィン(MCCP)類

・テトラブロモビスフェノールA(TBBP-A)

10月のRoHS専門家グループ会合では、MCCP類については、RoHS指令による制限対象物質の追加の検討を中止することが示されました。 この理由としては、MCCP類は、すでにREACH規則の制限手続き中であること、さらにストックホルム条約においても廃絶対象物質への追加が検討されていることが挙げられています。 REACH規則やストックホルム条約によって規制対象となり、RoHS指令と同等の含有制限となれば、重複して規制化する必要はないものと判断されています。

一方、TBBP-Aについては、欧州委員会が2023年末までに制限対象物質を収載したRoHS指令附属書IIの改正案を準備する意向であることが示されており、欧州委員会での検討が継続されている状況です。


3.附属書IIIの適用除外用途の見直し

附属書IIIに収載された多くの適用除外用途は、2021年7月21日が有効期限となっていました。 これら適用除外用途のうち、産業界等から更新申請が提出された適用除外用途については、更新要否を調査する、RoHS指令の適用除外用途申請の見直しに関するプロジェクト(パック22、23、24)によって更新の妥当性が評価され、それぞれ2022年の1月、12月、2月に報告書が公表されています。 特に多くの電気電子製品で利用されている銅合金中の鉛(6(c))等を対象としたパック22については注目が集まっていました。

その後欧州委員会内で更新に関する検討が進められていますが、10月のRoHS専門家グループ会合では、多くの適用除外用途を対象とするパック22、23、24についてはその評価に時間がかかっており、行政作業の削減のため、複数の適用除外用途の手続きをまとめて進めていくことが示されています。 また、中でも注目されているパック22を優先的に対応する可能性があることが示されました。


4.最後に

今回、RoHS指令に関する3つの検討状況について、2022年10月に開催されたRoHS専門家グループ会合の議事録内容をもとに、現状を整理しました。 いずれの検討内容も現在RoHS指令に対応している企業にとっては関心の高い内容であると思います。 しかしながら、いずれも改正案検討段階で時間がかかっており、次の段階である改正案公表段階に至っていない状況です。


2022年から2023年にかけては、RoHS指令以外の製品関連規制の改正や改正案が立て続けに公表され、また2023年末にはREACH規則改正案の公表も予定されており、製品規制の見直しの真っただ中と言えます。 ただしRoHS指令に関しては、他法規制の動きに遅れて、2024年以降本格的に検討が進められることになります。


なお、RoHS専門家グループについては、2023年6月5日に最新の会合が開催され、アジェンダ案4)は公表されていますが、現時点では議事録は公表されていません。


(井上 晋一)


1) EC RoHS指令の見直しに関するイニシアティブ


2) EC RoHS専門家グループ


3)EC RoHS専門家グループ2022年10月会合議事録


4)EC RoHS専門家グループ2023年6月会合アジェンダ案

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