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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

RoHS指令の附属書IVの改正動向

2021年12月09日更新

欧州委員会はRoHS指令附属書IV(カテゴリー8(医療機器)、カテゴリー9(監視制御機器)に特有の第4条(1)の制限から適用除外される用途)について、45~47項の3項目を追加する2021/11/15付け欧州委員会委任指令を官報公示しました。


本件については、本年の8月9日付けの当コラム記事1)で、欧州委員会委任指令(案)がWTO/TBTに通報された旨を解説していましたが、その内容が官報告示されたものです。


今回の改正は、2015年6月4日にRoHS指令に新たに追加された、フタル酸系の4物質(フタル酸ビス(2-エチルヘキシル) (以降:DEHP)、フタル酸ブチルベンジル (以降:BBP)、フタル酸ジブチル (以降:DBP)、フタル酸ジイソブチル (以降:DIBP))に関する附属書IVの使用制限除外用途に関するもので、新たに45~47項を追加するものです。


以降、改正内容を説明し、今回の改正の注目点を説明します。


1.改正の内容

(1)イオン選択性電極中のDEHP(附属書IV 45項) 2)


この官報告示に至った経緯として、欧州委員会は2018年7月17日に、人体液および/または透析液中に存在するイオン性物質のポイントオブケア分析(POC:(患者の目前や在宅で行われる分析検査))に適用されるイオン選択性電極中のDEHPの適用除外の申請書を受け取りました。それを受けてPack17が実施され、2020年に終了しました。Pack17の結論としては、DEHPの適用除外を認めるというものでした3)。オンラインステークホルダーコンサルテーションを経て、欧州委員会は2021年2月23日にこれらに関連する活動結果を理事会と欧州議会に技術的・科学的評価報告書として通知しました。その後、附属書 IV を改正する欧州委員会委任指令(案) (EU)2021/1980がWTO/TBTに通報されており、今回の官報告示に至ったものです。


当該医療機器の業界の混乱を避けるためにこの指令は緊急に発効すべきであり、2021年7月21日から遡及して適用することとなりました。 そして、ポイントオブケア分析装置の平均寿命と、非DEHP市場への切り替えに必要と考えられる時間を考慮して、適用除外の有効期間は7年間とされました。


改正内容としては、附属書IVに新規に45項として、以下の内容が追加されます。

「45項

 人体液および/または透析液中に存在するイオン性物質のポイントオブケア分析(POC:(患者の目前や在宅で行われる分析検査))に適用されるイオン選択性電極中のDEHP。

 ただし、2028年7月21日に失効する。」

(2) MRIの検出器コイルのプラスチック部品に含まれるDEHP (附属書IV 46項) 4)

 この官報告示に至った経緯として、欧州委員会は2018年9月12日に、MRIの検出器コイルのプラスチック部品に含まれるDEHPの適用除外の申請書を受け取りました。これとは別に欧州委員会は、2019年10月2日にMRIの検出器コイルのプラスチック部品におけるDEHPの使用を新たに適用除外とするための同様の申請を受け取りました。これら2つの要請が類似しているため、欧州委員会は2019年11月に同時に調査を開始し、2020年6月に終了しました。その結論としては、DEHPの適用除外を認めるというものでした。その後、オンラインステークホルダーコンサルテーションを経て、欧州委員会は2021年2月23日にこれらに関連する活動結果を理事会と欧州議会に技術的・科学的評価報告書として通知しました。その後、附属書 IV を改正する欧州委員会委任指令(案) (EU)2021/1979がWTO/TBTに通報されており、今回の官報告示に至ったものです。


当該医療機器の業界の混乱を避けるためにこの指令は緊急に発効すべきであり、2021年7月21日から遡及して適用することとなりました。 そして、 MRIの検出器コイルに使用できるプラスチック部品がEU市場で容易に入手できるようにするとともに、代替品開発の時間を確保するために、適用除外の有効期限は2024年1月1日までとされました。


改正内容としては、附属書IVに新規に46項として、以下の内容が追加されます。

「46項

  MRIの検出器コイルのプラスチック部品に含まれるDEHP。

 ただし、2024年1月1日に失効する。」

(3) 医療機器から回収され、医療機器の修理・改修に再使用される部品中のDEHP、BBP、DBP、DIBP(附属書IV 47項) 5)

 この官報告示に至った経緯として、欧州委員会は2018年7月17日に、医療機器から回収され、医療機器の修理・改修に再使用される部品中のDEHP、BBP、DBP、DIBPの適用除外の申請書を受け取りました。調査を開始し2020年に終了しました。その結論として、DEHP、BBP、DBP、DIBPを含む再生部品の適用除外を認めるというものでした。その後、オンラインステークホルダーコンサルテーションを経て、欧州委員会は2021年2月23日にこれらに関連する活動結果を理事会と欧州議会に技術的・科学的評価報告書として通知しました。その後、附属書 IV を改正する欧州委員会委任指令(案) (EU)2021/1978がWTO/TBTに通報されており、今回の官報告示に至ったものです。


当該医療機器の業界の混乱を避けるためにこの指令は緊急に発効すべきであり、2021年7月21日から遡及して適用することとなりました。 そして、代替品開発の時間を確保するために、適用除外の有効期間は7年間とされました。


改正内容としては、附属書IVに新規に47項として、以下の内容が追加されます。

「47項

 医療機器(体外診断用医療機器を含む)およびその付属品の修理または改修のために回収され、再利用されるスペアパーツに含まれるDEHP、BBP、DBPおよびDIBP。ただし、再利用は監査可能な企業間返品システム内で行われ、各スペアパーツの再利用は顧客に通知されることを条件とする。

 ただし、2028年7月21日に失効する。」


2. 改正の注目点

以上の3種類の改正は、官報公示の日である2021年11月15日に発効することとなっており、すべての加盟国に適用されます。 また、2022年4月30日までに、加盟国は今回の指令を遵守するために必要な法律、規制及び行政規定を採択し、公表すると共に、直ちに欧州委員会に伝えることとされました。


今回の改正の、45項はPack17で検討された「新規要求 2019-1」であり、46項はPack17で検討された「新規要求 2019-2」に該当します。 また、47項は欧州放射線・電気・医療IT産業調整委員会(COCIR)が提出していた、附属書IVの一部の化学物質(DEHP、BBP、DBP、DIBP)の適用除外を最大有効期間に修正することを要求する申請書(COCIR 2018a)に該当します。


DEHP、BBP、DBP、DIBPは、2021年7月22日から同指令の対象となる医療機器での新規使用が禁止となりました。 今回の47項の追加により、同機器のスペアパーツに関しては、条件付きで適用除外されることとなります。


なお、CMR物質(発ガン性、変異原性、生殖毒性があるとされる物質)はMDR((EU) 2017/745:欧州医療機器規則)附属書I 10.4.1項でCMR物質も正当化できれば使用できるとなっており、その正当化にはガイドライン6)によりリスク評価が要求されています。 CMR物質の中にDEHPとDBPが含まれており、医療機器用途で新規使用が完全に禁止されたものではありません。


今回の改正は、主に医療機器業界に係るもので、適用除外期限までに代替品の技術が確立されるか、関係メーカの取り組みが注目されます。


(中山 政明)


引用





5)


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