top of page

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

【日比谷花壇インタビュー 前編】感性からエビデンスへ。日比谷花壇・宮島社長が語る業界の構造変革


2026年08月07日更新



株式会社日比谷花壇 代表取締役社長 宮島浩彰氏。宮島社長のお話からは、花き業界が「感性の世界」だけでは立ち行かなくなっている現実が伝わってきました。環境負荷の75%が川上に集中していること、認証を取得している生産者がわずか50軒であること。
この現実に向き合い、本格的な環境経営への基盤づくりとして取り組んだのが「エコステージ認証」の取得です。トップの掲げる高いビジョンを既存の実務へと落とし込むプロセスには、現場の知られざる苦労がありました。

株式会社日比谷花壇 代表取締役社長 宮島浩彰氏(左)


株式会社日比谷花壇は、1872年創業、会社設立75周年を迎えた花き業界のリーディングカンパニーです。全国約190拠点で事業を展開する同社が、花き業界で初めてエコステージ認証を取得しました。「次の100年企業」に向けた環境経営のビジョンについて、宮島浩彰代表取締役社長に伺いました。(聞き手:アーティクル株式会社 和田)



100年企業へ向けた「ガイアフルな視点」


日比谷花壇が100年企業を目指す上で、環境経営は避けて通れないテーマです。宮島社長にとってその問題意識の原点は、子ども時代の読書体験にまで遡ります。


宮島社長: 小学生の頃に読んだ『学研まんがのひみつシリーズ』に、植物が絶滅して人間が工場の人工空気で暮らす場面がありまして、それがすごく怖かった。先日もNetflixで同じテーマのドラマを観ましたが、やっぱり思うんです。物質文明が行き過ぎると、花や緑の価値を誰も感じなくなって、お金が優先になってしまう。植物が絶滅するのは、結局は人の心の問題なんです。


花と緑には「目に見える価値」と「目に見えない価値」があります。美しさや癒しといった目に見える価値、そして酸素を生み出し二酸化炭素を吸着するという目に見えない機能的な恩恵。その両方を伝え続けることが私たちの使命だと思っています。


75年企業経営をさせていただいて100年を目指すからには、目先の話だけでなく、地球規模の、私は"ガイアフルな視点"と呼んでいますが、そういう視点で物事を考える組織にしたい。資本主義の膨張に負けない、花と緑の価値を社会に根づかせていくマインドを世界的に作っていく。そういう会社は世界でも稀有な存在だと思うので、そこを目指して漕ぎ出していきたいんです。



株式会社日比谷花壇 代表取締役社長 宮島浩彰氏。75年企業経営をさせていただいて100年を目指すからには、目先の話だけでなく、地球規模の、私は"ガイアフルな視点"と呼んでいますが、そういう視点で物事を考える組織にしたい。資本主義の膨張に負けない、花と緑の価値を社会に根づかせていくマインドを世界的に作っていく。そういう会社は世界でも稀有な存在だと思うので、そこを目指して漕ぎ出していきたいんです。

株式会社日比谷花壇 代表取締役社長 宮島浩彰氏


今回のエコステージ認証取得をサポートした一般社団法人東京環境経営研究所(以下、TKK)の代表も、こう話します。


TKK代表: 多くの企業の環境経営をお手伝いしてきましたが、トップご自身が原体験から環境を語る企業はなかなかありません。宮島社長のお話を伺って、環境経営が企業の存在意義そのものなのだと改めて感じました。



川上にある「75%」の環境負荷と、昭和のままの流通構造


花き業界の環境負荷は、消費者からは見えにくい「川上」の生産段階に集中しています。さらに、流通の非効率やデータ整備の遅れといった構造的な課題も重なり、業界全体の体質改善が求められています。


宮島社長: バラを作って届けるまでの全工程において、環境負荷の75%は生産段階に集中しています。温室栽培では暖房・冷房・光照射に大量のエネルギーを投入するので、それだけで大きな環境負荷がかかる。土壌改良や農薬管理でも、食べる農業と花の農業では認識のレベルが違いすぎた。取り組んでいる方はいるんですけど、とても少ないんですよ。


花き業界は低付加価値なんです。低付加価値が低生産性を生んで、低生産性が低収益、低成長を生む。一言で言うと、無駄が多い。消費者に花の価値が伝わっていないし、データの整備やマッチングの仕組みも弱い。流通もいまだに昭和のままで、東京の市場に一度集まった花が、九州に需要があるとわかってから九州に送られる、なんてことがまだ起きている。


環境に配慮した生産認証の取得者は施設園芸の全体5,000〜6,000軒に対してわずか約50軒で、この数字は増えていません。三方よしの姿勢がないと、生産者は巻き込めないんですよ。その理由はやっぱり経済なんです。生産者さんも経済的に潤わないといけない。

だから私たちは、直接取引ができる数少ない企業体として、生産者の方々と信頼関係を築きながらデータを還流させ、マッチングの精度を上げていきたい。環境認証を取得した花の使用比率を目標に掲げて、トレーサビリティを有効に活用し、消費者にも環境配慮への取り組みを伝えていく。業界の構造としてはすごく重たいですけど、そこもやっぱり背負わないといけないと思っています。



花の効果・効能をエビデンスで証明し、社会の「必需品」へ


花き業界では従来、データよりも感性が重視されてきました。宮島社長自身も「一般社団法人花の国日本協議会」の環境部会で部会長を務め、OPPフィルム(業界内呼称:セロファン)の削減や石油由来の吸水スポンジ(フローラルフォーム)の使用削減など、業界を挙げた取り組みを進めています。ただ、取り組み自体は始まっていても、それを数値で管理する習慣がまだ根づいていないといいます。


宮島社長: いいことはやっている。でも、いくつの目標を立てて、どうPDCAしましたっけ?と聞くと、定量的になっていない。


花の効果・効能をちゃんとエビデンスで証明しなければいけないと思っています。花には空間認知を高める効果もあるし、会社に花や緑があるとエンゲージメントや幸福度が上がり、離職率が下がる。そういう効果が絶対にあるはず。でも、証明しなければ付加価値率は上がらない。花が社会の必需品になれば、付加価値率はもっと上がるんです。


バイオフィリック(人間が本能的に自然とのつながりを求めるという考え方)のエビデンスを軸にした学会の設立を構想しています。いくつもの大学や研究機関で研究はされているんですけど、基礎研究から応用研究、社会実装までの体系が、この業界にはまだない。食の分野には学会があって、発表の場があり、大学に研究センターがあって、予算も還流している。花き業界でもそこをしっかり作りたいです。


これからエビデンスが必要になるという点では、TKKからも、定量データの重要性について述べていました。


TKK代表: 花の価値を定量データで裏づけていくというお考えには、大きな可能性を感じています。エコステージのような環境マネジメントの枠組みとも親和性が高く、私どもとしてもぜひお力添えしていきたいと考えています。

 


「いいこと」をして、稼ぐ。自発性を生む「遠心力」


日比谷花壇では、結婚式後の花を押し花にアップサイクルする活動が社員の自発的な発案から生まれるなど、現場発の環境への取り組みが広がっています。宮島社長はこうした自発性を「遠心力」というキーワードで捉えています。


宮島社長: 当社の社員は基本的に花と緑が好きで、社会貢献が大好きな人たち。お客様からも「花と緑を扱っているんだから、環境にいいことやっているよね」という目で見ていただいている。その期待を裏切れないという思いが現場には強くあって、それが自発的な行動につながっています。


最近、低農薬の農業やコモンズ型農園を手がけるスタートアップへの出資も始めているんですが、そういう社会課題の解決に取り組んでいる人たちから、社員が刺激を受けて自発性を蓄えていってほしい。


子どもっぽいかもしれないですけど、いいことをすると幸福度が高いんですよ。そして、それでいてちゃんと利益も出るにする。そこを頑張ります。




エコステージを花き業界全体へ


宮島社長は、日比谷花壇1社にとどまらず、花き業界全体への展開を見据えています。


宮島社長: 今業界にはトレーサビリティが効いていて認証を取れそうな生産者が10社ほどいる。まずいい事例を作らないと横展開がなかなかできないので、そこからですね。意識を高めていく研修やセミナーの場づくりも必要です。


TKK代表: 花き業界のリーディングカンパニーである日比谷花壇が、業界全体の環境負荷を下げる取り組みを、私たちがエコステージをはじめとする環境経営の支援を通じて、少しでも後押しできればと思います。社長の目指すところを私どもも全力でバックアップさせていただきます。


宮島社長:ぜひ一緒にやりましょう。

 

日比谷花壇 宮島浩彰代表取締役社長(左)、TKK代表(右)


__________________________________________________


宮島社長のお話からは、花き業界が「感性の世界」だけでは立ち行かなくなっている現実が伝わってきました。環境負荷の75%が川上に集中していること、認証を取得している生産者がわずか50軒であること。


この現実に向き合い、本格的な環境経営への基盤づくりとして取り組んだのが「エコステージ認証」の取得です。トップの掲げる高いビジョンを既存の実務へと落とし込むプロセスには、現場の知られざる苦労がありました。


後編では、日比谷花壇のサステナビリティ推進室の松本室長とTKK脇田氏に、その過程を語っていただきます。


▶ 後編へ続く(近日公開)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


環境経営やエコステージ認証についてご要望があれば、お問い合わせボタンをクリックしてご連絡ください。



 

またTKKでは、化学物質管理や法規制対応をはじめ、企業の皆様が環境対応を着実に進められるよう、実務に根ざした多様な支援を提供しております。 サービス内容の詳細は、下記よりご確認いただければ幸いです。





現場に寄り添う環境マネジメント総合支援


〇 短期訪問支援(現場診断・改善)

現場の状況を丁寧に確認し、課題の抽出から改善提案まで短期間で実施します。化学物質管理や省エネ診断など、「まずは現状を把握したい」「具体的な改善ポイントを知りたい」という企業様に最適です。

 

〇 伴走型コンサルティング(中長期支援)

環境に関わる制度対応や運用改善、またそれらの社内体制づくりや仕組みの定着まで、専門家が寄り添いながら中長期でしっかり伴走サポートします。取引先企業のカーボンニュートラル対応支援も丸ごとお任せください。

 

〇 情報発信(執筆・コンテンツ制作)

化学物質法規制や脱炭素経営の動向や実務に役立つポイントを、分かりやすく整理した記事や資料として発信しています。実務ハンドブックやマニュアル作成など、社内教育や情報共有にもご活用いただけます。

 

〇 セミナー・研修事業

化学物質管理や環境テーマに関する研修を、目的やレベルに合わせて実施しています。実務者向けの深い内容から、初心者向けの基礎講座まで幅広く対応しています。

脱炭素を楽しく学べる “カードゲーム2050カーボンニュートラル” もご用意しています。https://www.tkk-lab.jp/2050-carbon-neutral

 

 

©  一般社団法人東京環境経営研究所(TKK)

  • Facebook - White Circle
  • YouTube - White Circle
  • アマゾン - ホワイト丸
bottom of page