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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

【日比谷花壇インタビュー 後編】花き産業を社会資本に。エコステージ認証取得までの道のり


2026年08月21日更新



後編では、エコステージ認証取得の実務を担った日比谷花壇のサステナビリティ推進室・松本室長と、一般社団法人東京環境経営研究所(以下、TKK)のサステナビリティ経営支援事業部・事業部長の脇田氏に、認証取得までの過程を伺いました 。(聞き手:ハーチ株式会社 和田)

株式会社日比谷花壇サステナビリティ推進室室長 松本氏(左)、一般社団法人東京環境経営研究所サステナビリティ経営支援事業部・事業部長 脇田氏(右)


前編では、株式会社日比谷花壇の宮島浩彰代表取締役社長が花き業界の構造課題と「感性からエビデンスへ」というビジョンを語りました(「感性からエビデンスへ。日比谷花壇・宮島社長が語る業界の構造変革」) 。


後編では、エコステージ認証取得の実務を担った日比谷花壇のサステナビリティ推進室・松本室長と、一般社団法人東京環境経営研究所(以下、TKK)のサステナビリティ経営支援事業部・事業部長の脇田氏に、認証取得までの過程を伺いました 。(聞き手:アーティクル株式会社 和田)



ESG経営の中核に、エコステージを据えた理由


2025年の会社設立75周年に合わせた中期計画で、宮島社長がESG経営を宣言しました 。その中核となるマネジメントシステムとしてエコステージが選ばれた背景には、2つの理由があります 。


松本室長: 1つは、エコ・ファースト企業の認定を目指していたことです 。エコ・ファーストの申請にはISO14001、エコアクション21、エコステージといったEMS認証が水準条件になっていて、まずそこをクリアする必要があった 。もう1つは、会社の情報をESGの軸で整理するための枠組みが必要だったということです 。


エコ・ファーストの取得に必要な前提条件は、大学共通テストのように科目が複数ある試験みたいなものなのですが、そのうちの主要3科目をエコステージで整理できました 。なのでエコステージを取っておくと、エコ・ファースト企業の認定取得に向けた残りの項目の準備にぐっと近づくんです 。


今まで財務情報や定性的な情報で会社の体をなしていたものを、ESGの軸で整理するのが一番大変でした 。経理情報の中に環境要素があるのか、購買管理規程や調達規程に環境的な要件が入っているのかなど。例えば、電力の使用量などのエネルギーの1次情報を集めることは、今でも大変です 。


もし、エコステージのようなフォーマットがなかったら、どうやってまとめるのかというところから考え出さなきゃいけなかった。枠組みがあるからこそ、整理していけたんです。



情報整理を進める中で、松本室長が「一番救われた」と話すのがTKKによる全社レベルのSWOT分析です 。実務に入り込んでいる社内の人間は、どうしても担当領域の解像度が高くなりすぎて、全体を俯瞰してシンプルに整理することが難しくなります 。そこに外部の視点が入ったことで、動き出したといいます 。

株式会社日比谷花壇サステナビリティ推進室室長 松本氏



全社SWOTがなかった。外部の視点が動かしたもの


情報整理を進める中で、松本室長が「一番救われた」と話すのがTKKによる全社レベルのSWOT分析です 。実務に入り込んでいる社内の人間は、どうしても担当領域の解像度が高くなりすぎて、全体を俯瞰してシンプルに整理することが難しくなります 。そこに外部の視点が入ったことで、動き出したといいます 。


松本室長: 会社全体を俯瞰したSWOT分析はこれまでできていなかったように思います 。事業部単位ではやっていたけれど、全社レベルのものは探しても見つけられなかったんです 。でも、自力で作成しようとしたらA3ぎっしりのSWOTになってしまうんです 。それを200文字にまとめて分かりやすくしようとしたら、自分たちではできません 。


テリアリティ(重点課題)の特定をGRIスタンダード(※)を使って着手しました。でもGRIスタンダードの要求事項は約800ページもありました 。脇田さんが指南してくださったSWOTがあったおかげで、これはベリーハイ、これはロー、これは関係ない、というように優先順位をつけ、シンプルに判断できた 。あの脇田さんが支援してくださったSWOTがなかったら、細かいところに目がいって抜け出せなかったと思います 。


※GRIスタンダード: GRI(Global Reporting Initiative)が策定した、企業のサステナビリティ報告に関する国際的な基準。


脇田氏(TKK): 我々TKK側で、日比谷花壇の全体像をまず素案として整理させていただきました 。提案したSWOTは個々の部分の解像度が高いわけではないんです 。ただ、業界の中での位置づけや、外から見たブランドイメージを外部の視点で整理できた 。そこがよかったのかなと思います 。


 

「同じ船」に乗り込み、環境経営全体を導く水先案内人


SWOTやマテリアリティの整理と並行して、スケジュールの壁もありました 。当初は半年弱を見込んでいたプロジェクト期間が、省庁側の要件変更などにより実質2〜3ヶ月に短縮されたのです 。


松本室長: 2025年の夏が一番熱かったですね 。久しぶりに徹夜しましたよ。


伴走というより、同じ船に乗り込んでくる水先案内人です 。自分がとっちらかっている状態で、「今これやらないと間に合わない」「そっちは後回しでいいからこっち先やって」と、何から着手するかの手順を脇田さんの助言で常に決めてもらえた 。脇田さんにはもちろん感謝していますけど、私も頑張りましたよって感じですね 。



現場に近いと、どうしても個別で具体的な話に目が行きがちです 。でも今回はあくまで環境マネジメントシステムとして、環境目標、経営目標をどう持つのか、環境負荷をどう削減していくのか 。そこに目線を合わせていくことを、松本室長たちとは何度もお話しさせていただきました 。

一般社団法人東京環境経営研究所サステナビリティ経営支援事業部・事業部長 脇田氏


脇田氏(TKK): 現場に近いと、どうしても個別で具体的な話に目が行きがちです 。でも今回はあくまで環境マネジメントシステムとして、環境目標、経営目標をどう持つのか、環境負荷をどう削減していくのか 。そこに目線を合わせていくことを、松本室長たちとは何度もお話しさせていただきました 。



認証をきっかけに、社内外に広がった変化


プロジェクトのコアメンバーは松本室長のほか、総務部長、経理担当、人事担当の4名 。社長と専務を加えた約6名の体制でした 。短期間で集中して進めるために、あえて本社の管理部門メンバーで体制を組んだといいます 。


松本室長: 社内理解を得るのは今でも大変です 。社長や専務はやるぞと旗振りをしてくれています。もちろん、私もやりたい 。でもその間のマネージャーの人たちに「他にもやるべき業務がある中で、それは優先度が高いの?」と言われる 。ただ、変化は確実に出てきています 。人事担当がいたので、東京商工会議所が実施するeco検定を社内資格制度に組み込んだんです 。キャリアや評価の仕組みに組み込むと、社員のモチベーションにもつながっていきます 。


採用面でも、エコステージやエコ・ファーストの取得を発信したら、学生から役員に対して環境施策の質問がされるようになった 。事業部長や役員クラスがすごい刺激を受けて、各環境施策に関心を持ってくれるんです。ぐるっと回って、現場や新入社員から会社は変化への要望を感じたんです。


営業面でいうと、エコステージ認証は自治体のプロポーザル案件で加点対象になる 。履歴書に普通免許持ってますって書けるようなもの 。「エコはお金にならない」と思っていた人たちにとって、目に見える経済的なメリットが出てきたのは大きかった 。



花き産業を「社会資本」にする。その枠としてのエコステージ

 

花き産業を「社会資本」にする。その枠としてのエコステージ

エコステージやエコ・ファースト企業認証取得の効果は社内外に広がりつつあります 。ただ、松本室長が見ているのはその先です 。


松本室長: 私がいなくても環境経営、各環境施策が継続され、まわるようにしたい 。サステナビリティって、日本語にすると持続可能性じゃないですか 。前からずっと会社がやってきたこと、つまり収益を上げることと、人がちゃんと満足して働けることの延長にあるはずなんです 。なので今後は、エコステージをESGのフレームワークとして充実させていって、社員が知らず知らずのうちにPDCAを回している、そういう状態を目指しています。


そしてもう少し大きな話をすると、花き産業を社会資本にしたいんです 。なくてはならないもの、社会のインフラ 。そのぐらいの覚悟がないと100年企業にはならない 。私がいなくてもちゃんとそういう会社、そういう業界になっている 。その軸がESGで、実現するためのフレームワーク・仕組みがエコステージなのかなと思っています 。


脇田氏(TKK): 日比谷花壇が花き業界全体の環境レベルを上げていくという志に心から共感しています 。エコステージを通じて環境負荷を仕組みとして下げていく取り組みを、今後も一緒に進めていければと思います 。


前編で宮島社長は「花を社会の必需品にしたい」と語り、松本室長は「花き産業を社会資本にしたい」と語りました 。立場は違っても、向いている先は同じです 。松本室長の「私がいなくても環境経営が回る会社にする」という言葉が、取材後もずっと残っています 。エコステージで整えた仕組みが、その覚悟をどこまで支えていけるか 。次にお話を伺えるのが楽しみです 。


◀ 前編を読む

 


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またTKKでは、化学物質管理や法規制対応をはじめ、企業の皆様が環境対応を着実に進められるよう、実務に根ざした多様な支援を提供しております。 サービス内容の詳細は、下記よりご確認いただければ幸いです。





現場に寄り添う環境マネジメント総合支援


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