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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

CO₂排出量の可視化 Scope1・2とは?

2026年06月05日更新


一般社団法人東京環境経営研究所(TKK)をご愛顧いただいている皆様へ


TKKでは、2026年より、企業の皆様が直面する環境課題に寄り添いながら、実務に役立つ情報を幅広くお届けする取り組みを進めています。初回では、環境マネジメントの基本や各種EMSの特徴についてご紹介しましたが、今回は環境経営に関するお役立ち情報の第二回目として、実務直結テーマを取り上げます。

本稿では、温室効果ガス(GHG)排出量の可視化が求められる背景から、GHGプロトコルに基づくScope1・Scope2の具体的な算定方法まで、企業がこれから避けて通れない「CO2排出量の見える化」の基本を分かりやすく解説します。特に、今後義務化が進むと見込まれるSSBJ基準や、サプライチェーン全体でのScope3算定の広がりなど、中小企業にも影響が及ぶ最新動向についても触れています。

社内教育や業務改善の一助として、皆様の取り組みに少しでもお役立ていただければ幸いです。

 

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CO₂排出量の可視化 Scope1・2とは?

 


1.CO2排出量の可視化が必要な背景


 昨今の気温上昇などの気候変動は、CO2を中心とした温室効果ガスが原因と言われています。2015年の国際的な会議であるCOP21では、190ヵ国以上が集まり、世界中の全ての国が温室効果ガス排出量を削減する枠組みとして「パリ協定」が定められ、各国が独自の目標を掲げています。

日本も温室効果ガス削減目標(NDC)を国連に提出しています。菅首相の2020年10月26日の所信表明演説において、「2050年までに温室効果ガス排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と表明し、2030年度に2013年度比46%削減を目標に、政府主導で取り組みが進められています。

最近では、日本独自のサステナビリティ開示基準である「SSBJ基準」において、温室効果ガスの排出量開示が義務化の方向で進んでいます。東証プライム市場上場企業に対して、時価総額に応じて2027年3月期から順次適用される可能性があります。開示内容には、後述するサプライチェーンでの温室効果ガスの排出量(Scope3)も含まれており、中小企業を含む多くの企業に波及すると予想されます。

 


2.CO2排出量の策定方法の概要


温室効果ガス排出量は、国際的な共通のルールである「GHGプロトコル」を用いて、測定・管理・報告を行います。GHGプロトコルは、2001年に世界の様々な大手企業やNGOが共同で発行したルールです。上場企業に求められるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)やCDP(Carbon Disclosure Project)における環境情報の開示では、GHGプロトコルをもとに温室効果ガスが算定されます。

GHGプロトコルでは、排出源を3つのスコープとして、自社活動のScope1,2とサプライチェーンの上流・下流まで含めたScope3に分けて整理します。Scope1は、事業者が所有する設備・車両などからの直接的な排出で、営業車での燃料使用やボイラーでの燃料消費によるCO2排出などが該当します。Scope2は、購入したエネルギーによる間接的な排出です。電力会社などから購入して使う電力や外部から購入する熱・蒸気などは、エネルギー生成過程で自社外で温室効果ガスを排出するため、間接的な排出として算定します。Scope3は、Scope1,2以外のサプライチェーンで生じるその他全ての間接排出です。例えば、購入した製品が製造される際に発生した排出や、自社外企業による輸送・配送での排出など、15のカテゴリに分類し多岐にわたります。


GHGプロトコルでは、排出源を3つのスコープとして、自社活動のScope1,2とサプライチェーンの上流・下流まで含めたScope3に分けて整理します。

  


前述のSSBJ基準において、大手企業はScope3を算出・削減する必要がありますが、その削減にあたってはサプライチェーン上流・下流全ての企業の協力が必要です。すなわち、ほぼすべての企業の協力なくして、サプライチェーンのCO2削減は実現しません。サプライチェーンのCO2を削減するためにも、それぞれの企業が行うCO2削減の取組が必要です。そのためにも自社のCO2排出量を算定する準備が必要になってきました。

 


3.Scope1の具体的な計算方法


Scope1の算出方法は、「排出量=活動量×排出原単位(排出係数)」から求められます。活動量は燃料の使用量で、都市ガスであればガス検針票・請求書、営業車のガソリンであれば購買記録などから確認します。排出係数は、燃料ごとの単位当たりのCO2排出量で、環境省のウェブページに掲載されている「算定方法・排出係数一覧」から参照できます。

具体例として、工場のボイラーと営業用の自家用車のCO2排出量を計算します。

 

工場のボイラーと営業用の自家用車のCO2排出量

 

工場のボイラーと営業用の自家用車のCO2排出量

 

営業車のケースでは、購入量の把握が難しいようであれば、走行距離からも算定が可能です。

他にも非エネルギー起源温室効果ガスが発生するようであれば、その発生量もScope1としてカウントします。例えば化学プロセスにおいて、二酸化炭素やハイドロフルオロカーボン等の温室効果ガスが発生している場合は、計算が必要になりますので注意が必要です。多くの中小企業ではその可能性が低いため、説明は省略します。

 


4.Scope2の具体的な計算方法


Scope2の算出方法も、Scope1と同じく「排出量=活動量×排出原単位(排出係数)」から求められ、排出係数も環境省のウェブページに掲載されている「算定方法・排出係数一覧」を参照します。ただし、Scope2では発電に用いられる化石燃料や再エネなどの割合が、燃料価格変動や政策などで変わるため、上記の係数一覧も最新実績データを反映して毎年公開されます。ここでは令和7年度の温室効果ガス排出量算定用の値を用いて解説します。Scope2では電気や蒸気などが含まれますが、ここでは一般的に大部分を占める電気について説明します。

活動量は、電力会社請求書の使用電力量(kWh)を確認します。排出原単位は、環境省のウェブページに掲載されている「電気事業者別排出係数一覧」から参照しますが、ロケーション基準とマーケット基準の二つの参照方法があります。ロケーション基準では、企業所在地域の平均排出係数を使用し、沖縄以外では0.000423 (t-CO2/kWh)となります。マーケット基準では実態に即した方法であり、企業が契約した電力メニューの排出係数を使用します。特別なメニュー契約を行っていない場合は『残差』の値を使用します。例えば、東京ガス㈱のメニューF(残差)では、0.000368 (t-CO2/kWh)です。具体例を下図に示します。

 

企業の電力CO2排出量計算(ロケーション基準vsマーケット基準)

 

なお、再エネのメニューでは、排出係数は0(t-CO2/kWh)になるケースもありますので、すぐに温室効果ガスの排出量を低減しなければならない場合は、再エネに切り替えることも有効な手段の一つになります。

 

 

5.省エネ法/温対法との違い


GHGプロトコルのScope1,2は、日本国内の省エネ法や温対法とほとんど同じ方法で温室効果ガスの算定を行うため、温室効果ガス排出量データの流用が概ね可能です。ただし、一部算定の考え方が異なり、そのまま流用できない場合があります。具体例として3点挙げます。

 

省エネ法/温対法とGHGプロトコル(Scope1、Scope2)の違い

 

一つ目が算定・報告単位です。国内法では事業者単位での報告となり、連結対象事業者は規定されていません。GHGプロトコルでは、持分比率または支配力に基づき、連結した企業グループ全ての温室効果ガスも算定するのが一般的です。

二つ目は、敷地外での作業における考え方です。国内法では事業所単位の報告制度であるため、自社の工場や事務所等のエネルギー使用量を算定しますが、GHGプロトコルでは敷地外で使用した自社活動のエネルギーも算定します。例えば、建設現場での建設機械使用による排出や営業車による排出もScope1として含まれます。

三つ目は、海外拠点における排出です。国内法では国内での排出のみを対象としますが、GHGプロトコルでは持分比率または支配力に基づき、連結した企業グループ全ての温室効果ガスも算定するため海外拠点での排出も算定・報告の対象です。海外の場合、算定に使用する排出原単位もその地域によって変わるため注意が必要です。

 

執筆: 一般社団法人東京環境経営研究所 会員 中小企業診断士 Y.Yイラスト生成:Geminiを活用

 

 

【参考資料】

・グリーンバリューチェーンプラットフォーム:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/

 

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またTKKでは、化学物質管理や法規制対応をはじめ、企業の皆様が環境対応を着実に進められるよう、実務に根ざした多様な支援を提供しております。 サービス内容の詳細は、下記よりご確認いただければ幸いです。





現場に寄り添う環境マネジメント総合支援


〇 短期訪問支援(現場診断・改善)

現場の状況を丁寧に確認し、課題の抽出から改善提案まで短期間で実施します。化学物質管理や省エネ診断など、「まずは現状を把握したい」「具体的な改善ポイントを知りたい」という企業様に最適です。

 

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環境に関わる制度対応や運用改善、またそれらの社内体制づくりや仕組みの定着まで、専門家が寄り添いながら中長期でしっかり伴走サポートします。取引先企業のカーボンニュートラル対応支援も丸ごとお任せください。

 

〇 情報発信(執筆・コンテンツ制作)

化学物質法規制や脱炭素経営の動向や実務に役立つポイントを、分かりやすく整理した記事や資料として発信しています。実務ハンドブックやマニュアル作成など、社内教育や情報共有にもご活用いただけます。

 

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