2025年02月21日更新
【質問】
SVHCや制限物質の情報伝達をする方法としてはchemSHERPAを用いていれば十分でしょうか?
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【回答】
ご質問のchemSHERPA 1)は、日本においての製品に含有される化学物質情報を川上企業から川下企業までサプライチェーン全体で適正に運用するための情報伝達共通スキームであり、製品に含有される化学物質を適正に管理し、サプライチェーンにおける製品含有化学物質の情報伝達を行うためのものです。chemSHERPAは一定のデータフォーマットに従って、製品中の含有化学物質の情報データを作成、編集することができます。chemSHERPAで作成可能なデータは、化学品データであるchemSHERPA-CIと成形品データであるchemSHERPA-AIとがあります。成形品データは複数の成形品の組合せより成る製品でもそれに応じた階層構造を設定したデータ作成が可能です。chemSHERPAでは、入力データを基に、主要な化学物質法規制や業界基準における管理対象物質についての遵法性の判断機能を備えています。
これらの化学物質法規性や業界基準には、日本の化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律やEUのRoHS 指令やREACH 規則2)、米国のTSCA などの製品含有化学物質に関わる法規制や、自動車、自動車部品サプライヤー、化学/プラスチック業界で組織されたGlobal Automotive Stakeholders Group (GASG)が制定した自動車業界共通の管理化学物質リストであるGADSL、電気・電子製品についての含有化学物質情報伝達に関する材料宣言のIEC規格であるIEC 62474 が含まれます。
したがってchemSHERPAは、SVHCや制限物質に関する必要な情報は織り込むことができるので、少なくも日本国内への情報伝達手段としては有用であると言えます。
これに対し海外、たとえばEUではEU域内の製造者、輸入者、流通業者等に対してREACH規則におけるSDSやWFDにおけるSCIP データベース3)への登録等の手段での情報提供が求められています。ただし、日本国内の事業者に対してはそのような要求はありませんが、日本国内事業者はEU域内の製造者、輸入者、流通業者等からの必要性に応じて情報提供が求められる場合があります。また、日本のサプライヤーがREACH規則対応のためにEU側の輸入業者や唯一代理人に対して自社製品の情報を提供する場合も考えられますが、その際にchemSHERPAでの提供は受け付けられず、例えばREACH規則の定めに従ったSDSの形で提供せよといったようなケースもあるかもしれません。そうした場合は適宜両者間で調整の上、合意できる手段によって情報提供していくことが必要です。
最後に、chemSHERPAのデータ作成支援ツールを使用して、SCIP 登録に必要な情報を作成することはできますが、chemSHERPAからSCIP データベースに直接登録可能なフォーマットでデータを出力することはできませんので注意が必要です。
1) chemSHERPA
2) REACH規則
3) SCIP データベースの詳細情報要求
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