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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q623.フランスの古着や廃繊維のリサイクル関する規制基準について

2022年05月06日更新

【質問】

フランスにアパレル製品を輸出しています。 フランスでは繊維製品の廃棄やリサイクルに関する法規制が強化され、再生繊維の使用の義務化が始まっていると聞きます。 規制の現状や今後の動向について教えてください。

 

【回答】

EUでは2020年3月にEU新循環型経済計画(1)を発表しましたが、その中で繊維製品は気候変動を含めた環境への悪影響が大きい分野のひとつとして取り上げられており、繊維製品が循環性に適合することを確保するためのエコデザインを決定すること、化学物質管理の仕組みの整備、消費者がサステナブルな繊維製品を選択しやすくすること、リユースや修理を利用しやすくすること、循環型繊維製品開発のためのビジネス環境及び規制環境を改善することなどが求められています。


こうしたEUの動きに合わせる形でフランスでは繊維製品の廃棄やリサイクルに関して法制化が進んでおり、2021年8月に改訂された環境コード(2)のL541-1では、2030年に電気・電子製品、繊維製品および家具のリサイクル量を全ての家庭ゴミの5%とすることを目標しています。


2020年2月10日の廃棄物と循環経済との戦いに関する法律第2020-105(3)第35条では売れ残った繊維製品の廃棄が禁じられ、リサイクルや寄付をすることが義務付けられました。 違反者にはⅠ万5千ユーロ(約200万円)の罰金が課されます。 この法律が2022年1月1日より施行され、アパレル業界には大きなインパクトがあったようです。


廃棄物と循環経済との戦いに関する法律第58条により、政令2021-254(グリーン調達法)(4)も制定され、地方自治体等の公共調達においては、様々な製品について再生品の最小割合が決められました。 繊維製品では20%が再生品であることが求められています。


2020年12月29日の政令第2020-1725号(5)6条によって環境コード(2)R543-214が改正され、繊維製品、衣料品、新家庭用リネン及び新繊維家庭用品の生産者に適用される拡大生産者責任義務の実施条件、並びに当該製品からの廃棄物の管理に関する生産者の義務が規定されました。 ここで、「生産者」とは、専門的にフランスで製造するか、製品を国内市場で初めて輸入または紹介する自然人または法人を意味し、再販業者も生産者とみなされます。 生産者は製品の廃棄やリサイクルまで責任を負います。 この「拡大生産者責任(EPR)」の考え方に基づき、EUでは包装廃棄物に関するEPR法が存在しましたが、繊維製品廃棄物に対してリサイクル義務を課したのはEUではフランスが初めてです。 繊維製品に関するEPR法については、スエーデン、オランダでも導入が決定、ブルガリア、イギリス等でも同様の法律作成に取り組んでおり、今後この動きは広がると考えられます。


EUは2022年3月30日に、「持続可能な循環型繊維戦略」(以下繊維戦略)(6)を発表しました。 これは、同日発表された持続可能な製品のためのエコデザイン規則案(7)に対応した繊維業界向けの政策です。 繊維戦略の中では繊維製品(テキスタイル)から繊維を分離してリサイクルする方式についても言及されています。 繊維ベースでのリサイクルは技術的ハードルも高いですが、繊維戦略の中では2030年を目標に積極的に推進するとしており、実現するための様々な施策を今後検討するとしています。 それに応じて繊維製品の規制基準も様々な変化が予想されますので、今後も注視が必要です。


(参考リンク)

(1)EU新循環型経済計画


(2)フランス環境コード


(3)廃棄物と循環経済との戦いに関する法律第2020-105


(4)グリーン調達法 法律2021-254


(5)フランス法律第2020-1725


(6)EU持続可能な循環型繊維戦略


(7)持続可能な製品のためのエコデザイン規則案


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