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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

EU CLP規則の基礎

  • 執筆者の写真: tkk-lab
    tkk-lab
  • 19 時間前
  • 読了時間: 9分

2026年07月10日更新


一般社団法人東京環境経営研究所(TKK)をご愛顧いただいている皆様へ


TKKでは、化学物質管理や法規制対応を中心に、企業の皆様の環境への取り組みを支える情報を発信してまいりました。2026年は、地球温暖化対策や省エネルギー、環境マネジメントシステムなど、より幅広いテーマについても、皆様の実務に寄り添った情報提供を進めております。

環境経営に関するお役立ち情報の第4回目では「EU CLP規則の基礎」を取り上げます。CLP規則とは、世界共通の基準で化学物質のハザード(危険有害性)を分類し、それをラベルなどで分かりやすく表示させることで、物質・混合物(化学品)を使用する人の健康や環境を保護しつつ、EU域内での円滑な取引を実現するためのルールです。他国と共通的に対応できる点とEU固有で対応しなければならない点を切り分けた上で、CLP規則の趣旨に基づく対応を図ることがコンプライアンス遵守の鍵となります。

皆様の社内教育や取引先対応の一助としてお役立ていただければ幸いです。


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EU CLP規則の基礎

 

CLP規則は、欧州連合(EU)が2009年に施行した制度で、正式名称は「Regulation on Classification, Labelling and Packaging of substances and mixtures」、頭文字をとって、CLP規則と呼ばれています。

日本語に訳しますと「物質及び混合物の分類、表示及び包装に関する規制」です。

 

CLP規則とは、世界共通の基準で化学物質のハザード(危険有害性)を分類し、それをラベルなどで分かりやすく表示させることで、物質・混合物(化学品)を使用する人の健康や環境を保護しつつ、EU域内での円滑な取引を実現するためのルールです。また、化学品の分類に関するルールを定めているため、REACH規則等の化学品規制をはじめ、医療機器や電池等の製品規制でも引用される規制となっています。

 

CLP規則は、国際連合が2003年に採択したGHSという制度をEUの法律として取り込んでいます。GHSとは、化学品の分類・表示に関する世界共通のルールです。正式名称は「Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals」、頭文字をとって、GHSと呼ばれています。日本語に訳しますと「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」です。

 


1.CLP規則の対象範囲


対象は、医薬品、化粧品、食品添加物など個別の法規制が適用される分野を除くすべての化学品です。EU以外では、消費者向け化学品は分類やラベルの対象にはなりませんが、CLP規則では対象となることが特徴です。

このうち、ハザード(危険有害性)を有すると分類された化学品が、表示や包装、届出といった各種要求事項の対象となります。


 

2.CLP規則の要求事項


(1)分類 Classification

EU内の化学品の製造者・輸入者は、EUに上市予定の化学品のハザード(危険有害性)をCLP規則の附属書で定められたルールに基づいて、自ら分類しなければなりません。

ただし、分類対象の物質や混合物中の物質がCLP規則附属書VIの「ハザード物質の調和化された分類及び表示リスト(CLH)」に収載されている場合、リストで定められた分類結果に基づいて分類しなければなりません。このリストの意図は、有害性が高い物質はEU域内で統一した分類にすることで、使用者等に適切なリスク管理を促すことです。

なお、このリストは、おおよそ1年に1回程度更新され、収載される物質が徐々に増えています。

「ハザード物質の調和化された分類及び表示リスト(CLH)」は、欧州化学品庁(ECHA)が、ECHA CHEMという化学物質データベースで公開しています。

ECHA CHEMでは、附属書VIに収載されている対象物質やその分類結果、他者による分類(業界独自の分類)を調べることができます。   


図1 ECHA CHEM附属書VIの分類(例:アセトン)


図2 ECHA CHEM 他者による分類(例:アセトン



なお、他者による分類はあくまでも参考情報であり、CLP附属書の分類ルールに基づいて自ら分類することが原則です。そのため、自社で化学品のハザード(危険有害性)を分類する場合、附属書VIのルールに基づいて正しく分類したのであれば、他者の分類と異なっていたとしても問題ありません。


(2)表示 Labelling

分類の結果、ハザード(危険有害性)を有すると判断された化学品について、ラベルに製品識別子、危険有害性絵表示、注意喚起語など、規則で定められた要素を表示する必要があります(図3参照)。



図3 混合物の単一言語ラベル(一般公衆向け)サンプル


(3)包装 Packaging

包装材は内容物である化学品が漏出しないような設計・材料であることが必要です。また、分類結果が誤えん有害性、急性毒性、皮膚腐食性等の特定のハザード(危険有害性)に該当する化学品を、一般公衆向けに供給する場合には、以下の要件を満たす包装を行う必要があります。


① チャイルドレジスタント包装(Child-resistant packaging:CRF)

子どもによる誤使用を防止するために、容器を容易にあけて接触できないようにする留め具をつける等、子供が容易に開けられないように設計します。


② 触覚危険警告(Tactile Warning)

視覚障がい者がハザード(危険有害性)を理解・識別できるように、容器に「突起した警告マーク」を付与します。


               

(4)届出 Notification

次の条件のいずれかに該当する場合には、EU域内の化学品の製造者または輸入者は、上市後1か月以内に「分類と表示に関する情報(C&L届出)」をECHAへ届け出る必要があります。


【届出が必要となる条件】

①EU REACH規則で登録対象となる物質

※ただし、EU REACH規則の登録の一部として、CLP規則に基づく分類を提出している場合は不要。

②「ハザード(危険有害性)あり」と分類された物質

③混合物中で「ハザード(危険有害性)あり」と分類された物質を濃度限界値以上含有している混合物



(5)その他 毒物センターへの届出(PCN)とUFIコード

ハザード(危険有害性)のある混合物による中毒事故が起きた際、医師が製品を即座に特定し、迅速な応急処置を行えるようにするため、毒物センターへの届出(PCN)が義務付けられています。


【届出の義務者】

EU域内に所在する混合物の製造者または輸入者

※日本からの輸出の場合、法的な届出義務は現地の輸入者にあるため、日本のメーカーは、法的には「EU域外」なので届出義務そのものは発生しません。しかし、成分秘匿等の理由により、日本側が任意で届出(提出者)となり、UFIを発行して輸入者へ共有する実務が一般的です。


具体的には、次の条件全てに該当する場合には、以下の情報を届出する必要があります


【届出が必要となる条件】

①  混合物であること 例:洗剤、塗料、接着剤、インクなど

②  「健康有害性」または「物理的有害性」に分類されていること 例:急性毒性、皮膚腐食性、引火性など


【届出する項目】

①  UFI(製品組成の識別子):製品の組成と紐づけられた16桁の英数字コード。

②  製品識別情報:製品の商標名、包装の種類、色、用途(例:一般公衆向け)。

③  危険有害性情報:最終決定されたハザード(危険有害性)の分類。 

④  完全な組成情報:製品に含まれる全てのハザード(危険有害性)成分のリスト。


なお、これらの情報を毒物センターへ届け出るだけでなく、製品である混合物のラベルに、UFIコードを印刷する必要があります。UFIコードとは、製品の組成と紐づく16桁のコードであり、事故が起きた際、通報者がラベルにあるこのコードを医師に伝えることで、医師は即座に成分データベースを検索できる仕組みになっています。



3.まとめ


世界の多くの国で、国連のGHSをベースに化学物質や混合物の分類・ラベル表示・SDSが法制化されています。しかし、各国の導入時期や採用範囲が異なるため、国ごとに特化した個別対応が必要なのが実態です。

その中でも、EUは、「世界基準であるGHSの一歩先」を行く独自の動きが顕著です。特に、2024年施行の改正で導入された「内分泌かく乱性」等の新しいハザード(危険有害性)は、現状GHSにはないため、EUへの輸出する場合には、新たなハザードについても確認し、必要に応じてラベル等に反映する必要があります。


実際、当局による市場調査等では、複数の加盟国に向けた多言語でのラベル作成や、UFIコードをはじめとする独自の届出ルールへの対応等で多くの違反事例が指摘されています。これらよくある違反事例等を参考にしつつ、他国と共通的に対応できる点とEU固有で対応しなければならない点を切り分けた上で、CLP規則の趣旨に基づく対応を図ることがコンプライアンス遵守の鍵となります。


 

執筆: 一般社団法人東京環境経営研究所 会員 中小企業診断士 和氣 友理

 


参考文献:

1)        一般社団法人東京環境経営研究所編著、「化学物質規制ガイド2025年改訂版」、第一法規株式会社


2)  2008年12月16日の欧州議会および理事会の規則(EC)No 1272/2008、物質および混合物の分類、表示および包装に関する規則、指令67/548/EECおよび1999/45/ECの改正および廃止、ならびに規則(EC)No 1907/2006の改正(EEA関連のテキスト)


3)  ECHA CHEM


4)  Guidance on labelling and packaging in accordance with Regulation (EC) No 1272/2008 Version 4.2 March2021


5)  委員会委任規則(EU)2023/707 2022年12月19日 物質および混合物の分類、表示、包装に関する危険有害性クラスおよび基準に関する規則(EC)No 1272/2008の改正

 

 

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またTKKでは、化学物質管理や法規制対応をはじめ、企業の皆様が環境対応を着実に進められるよう、実務に根ざした多様な支援を提供しております。 サービス内容の詳細は、下記よりご確認いただければ幸いです。





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