top of page

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

UK REACHにおける認可・制限対象物質追加の動き

2021年10月01日更新

英国のEU離脱により、イングランド、ウェールズ、スコットランド(グレートブリテン:GB)ではUK REACHが導入されました。 UK REACHは移行期間が終了した時点(2020年12月31日)のEU REACH規則を取り込むかたちで法制化されましたが、今後は英国での継続的な運用を可能にするために必要な変更が行われます。 UK REACHにおける認可対象物質と制限対象物質についても例外ではなく、それぞれの追加提案が開始されています。 今回のコラムではその内容について説明します。


1.附属書14(認可対象リスト)収載に対する勧告案に関する意見募集

2021年8月31日、英国健康安全局(HSE)はUK REACHにおける附属書14(認可対象リスト)収載に対する初めての勧告案 1)を公表し、意見募集が行われています。 今回の意見募集の対象となっているのは下記2物質です。


(1)八ホウ酸二ナトリウムアンヒドロ亜酸(CAS RN:12008-41-2) 2)

SVHCに関する固有特性:生殖毒性(第57条c)

主な使用用途は混合物の配合、塗料、コーティング、セメント、セルロース断熱材、建設資材、接着剤、肥料の微量要素としての使用などです。


(2)フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)(CAS RN:84-61-7) 3)

SVHCに関する固有特性:生殖毒性(第57条c)、内分泌かく乱特性(第57条f:人間の健康)

主な使用用途は以下の通りです。

・シーラントまたは生地プリントで使用されるプラスチゾルとしての使用、配合

・PVC、ゴムおよびプラスチック化合物の共可塑剤としての使用、配合

・有機過酸化物における鈍感剤および分散剤としての使用、配合


今回の勧告案については、「EU REACH規則の附属書XIVに含めるためにECHAが最近勧告した物質の初期評価」という報告文書 4)のなかで、物質の優先順位の評価を行った経緯が説明されています。


評価対象となった物質は、2021年4月14日にECHAがEU REACH規則 附属書XIV(認可対象リスト)に追加することを欧州委員会に提案(第10次勧告案)していた7物質、さらに2019年10月1日に公表していた第9次勧告案の18物質のうち、6月にWTO通知されたEU REACH規則 附属書XIV改正案 5)で示された5物質を加えた12物質です。今回の勧告案に含まれた2物質は、いずれも第10次勧告案に含まれていた物質です。


評価結果として上記2物質が最も優先順位が高く、認可対象物質の追加勧告を検討するとしています。 また、残りの10物質のうち7物質は、さらなる情報が必要と評価され、3物質はREACHのもとで現時点ではさらなる措置は不要と評価されています。


HSEは、八ホウ酸二ナトリウムアンヒドロ亜酸に関する不確定要素として以下を特定しています。


・ECHAによる第6次勧告案に含まれていた他のホウ酸塩化合物の代替として八ホウ酸二ナトリウムアンヒドロ亜酸を使用する可能性

・混合物や成形品を含む生産量またはGBへの輸入量、およびGBにおける使用状況等


また、2018年2月に公表されているEU REACH規則におけるSVHCを特定するための附属書XV提案文書 6)では、一部の用途で八ホウ酸二ナトリウムアンヒドロ亜酸の代替が可能である可能性があることを示唆しているが、現在の用途で代替が可能かどうかを確認するには、さらに情報が必要であるとしています。


いっぽうで、DCHPについては、ECHAによる第10次勧告案に関する意見募集期間中に提出された情報をHSEが検討した結果、以下のような不確定要素が特定されました。


・すでに認可対象物質として収載されているフタル酸エステルの代替としてDCHPを使用する可能性

・混合物や成形品を含む生産量またはGBへの輸入量


DCHPはすでに認可対象物質として規制されている他のフタル酸エステルとの一貫性を保つため、今回の最初の勧告案に含まれたと説明されています。


意見募集の期間は2021年8月31日から2021年11月30日までとされています。


2.制限対象物質の追加提案に関する意見募集

(1)鉛弾薬の使用

2021年8月23日、HSEは、UK REACHにおける初めての制限対象物質の追加提案として、「鉛弾薬の使用」の意見募集 7)を開始しました。 本提案の制限の範囲は、軍用および非民間用の弾薬使用を除外した、すべての生息地における弾薬(発射体)の鉛使用としています。


本提案は、EU REACH規則において2021年2月に附属書XVIIのエントリー63「鉛および鉛化合物」の制限措置に追加された「湿地帯における鉛含有の散弾の使用」 8)とそれを補完するために、ECHAにより意見募集が行われた「銃やエアガン用の発射体、および野外活動用の釣り用シンカーやルアーにおける鉛の市場投入と使用に関する制限案」(2021年4年9日掲載の当コラム参照)に関連するものです。


今回の意見募集では、屋外射撃の範囲に関するGB固有の情報やECHAの制限案でカバーされていない問題、たとえばGB拠点の製造者やGBのみで行われている様々な射撃に関する情報を求めています。


意見募集の期間は2021年8月23日から2021年10月22日までとされています。


(2)タトゥーインクとパーマネント・メイクアップ(PMU)の物質

2021年9月3日、HSEは、UK REACH制限対象物質の追加提案として、「タトゥーインクとパーマネント・メイクアップ(PMU)の物質」の意見募集 9)を開始しました。


本提案は、EU REACH規則において2020年12月に附属書XVIIのエントリー75に追加され、2022年1月より規制が開始される「タトゥーインクおよびパーマネント・メイクアップに含まれる物質」 10)に関連しています。


本提案に至った背景を以下のように説明しています。タトゥーとPMUの人気が高まっているなかで、これらのインクの製造やPMUに使用される化学成分から発生する可能性のあるリスクにはあまり注意が払われておらず、使用される顔料は純度が低く、不純物や有害物質を含む可能性があるとしています。 これらの有害物質へのばく露は健康への影響につながる可能性があり、調査報告によれば、かなりの割合の人が施術後の出血、痂皮、かゆみなどの問題が生じているとしています。


EU REACH規則の制限措置は、人々に有害な影響を与えるような特定の危険な特性を有する化学物質の使用を防ぐことを目的としています。 HSEは、ECHAが作成した規制文書に示された根拠とその他の入手可能な情報、特にGBの状況が示された情報を検討し、タトゥーインクおよびPMUに含まれる特定の有害化学物質の規制がGBにとって適切な規制措置であるかどうかを決定する予定としています。


また、HSEは、特定の化学物質がタトゥーインクやPMUに使用された場合の人間の健康へのリスク、代替品の利用可能性、GBで規制が実施された場合の社会経済的な影響を分析するとしています。


意見募集の期間は2021年9月3日から2021年11月2日までとされています。


3.さいごに

UK REACHの運用が開始されて数ヶ月が経ち、上記のように認可対象物質の追加勧告案や制限対象物質の追加提案について意見募集が開始されました。 これらはUK REACHにおいて計画されている運用作業を説明するためにHSE が作成する2021/22年のUK REACH作業計画 11)のなかでも示されており、概ね予定通りに運用が進んでいるようです。


今回の意見募集は、どちらも先行しているEU REACH規則の規制措置に関連するものの、使用量、輸入量、使用状況といった多くの項目においてGB特有の情報を要求されています。 今回、制限対象物質の追加提案の対象となっているタトゥーインクとPMUの物質といった日常生活に近い用途は、地域性や文化により状況が大きく異なる可能性もあるため、今後どのような情報が収集され、評価や規制化が進められるかは興味深いところです。


(柳田 覚)


1)


2)


3)


4)


5)


6)


7)


8)


9)


10)


11)

閲覧数:2,200回

最新記事

すべて表示

EUのユニバーサルPFAS規制案の検討状況について

2024年04月05日更新 EU加盟5か国(ドイツ・デンマーク・オランダ・ノルウェー・スウェーデン)は2023年2月に有機フッ素化合物(PFAS)規制案を公表しました(*1)。 この規制案に関連するPFASは、物質の構造で定義する包括的で広範な物質が対象物質となることから、ユニバーサルPFASとも呼ばれています。 PFAS類は炭素-フッ素の結合エネルギーが高いことなどによるユニークな機能を示し、様

プラスチック製品を管理する基準に関する北欧協同調査報告について

2024年03月29日更新 2024年1月31日、北欧閣僚理事会は、「問題のある、不必要で回避可能なプラスチック製品に対処するための世界的な基準」という調査報告書 1) を公表しました。本報告書では、140以上の国が特定のプラスチック製品の禁止や制限を制定していると指摘し、使い捨てプラスチックだけでなく、より広範囲のプラスチック製品を管理するための世界的な基準の必要性を強調しています。今回のコラム

第30次CLS追加と既存CLSの指定基準の変更

2024年03月08日更新 1.第30次CLS追加 欧州化学品庁(ECHA)は、REACH規則の認可対象候補リスト指定物質(CLS)を1回/半期の頻度で追加しています。直近では2024年1月に第30次追加として次の5物質が新たにCLSとして正式に追加されました。1) ・2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール(2,4,6-tri-tert-butylphenol、CAS番号732-26-3)

Comments


bottom of page