【質問】
当社が輸出している製品に鉛の含有している高融点はんだを使用しています。 Pack 22で延長申請が通るのか、却下されるのか見込みは分かりますでしょうか。
【回答】
お問い合わせの高溶融はんだは、Pack22対象のうちのRoHSⅡ附属書III「7(a)
高融点はんだ中の鉛(鉛系合金に含まれる85%重量パーセント以上の鉛)」となります。Pack22は2020年10月28日に開始され、2021年8月27日までの予定でしたが、2021年11月中旬の時点で未だ終了していません。
Oeko-Institut e.V.のWebサイトに、RoHS指令附属書見直しの2021年9月15日付けの情報として、「適用除外7(a)の評価は原稿最終版の段階にある(The assessment of exemption 7a is in last drafting stages )」と記載されています。1) また、最終報告書は10月初めに欧州委員会の承認を得て最終報告書が公表されるとしていますが、現時点(11月中旬)では公表されていません。 Oeko-Institut e.V.は、評価報告書が欧州委員会の承認を得て公表されるまでは、特定の適用除外の評価結果や推奨事項について提供することはできないとしています。 従って、今後も調査会社(Oeko-Institut e.V.やBio Innovation Service)や、EUのWebサイト2)で公開される情報を確認する必要があります。
なお、最終報告書が欧州委員会に提出された後は、欧州委員会で報告書の内容を踏まえた検討や法制化手続きが行われ、約2か月後に官報に公示されます。 また、Pack22対象の7(a)等適用除外用途の有効期限は2021年7月21日でしたが、審議が終了していないため、結論が出るまでは、現状の適用除外用途規定がそのまま継続されます。
【Pack22での7(a)のコンサルテーション状況とその後の流れ】
Pack22の現状は前項に記載しましたが、今までのコンサルテーションの状況と、その後の流れ(評価、承認)を以下に整理しましたので、ご参照下さい。
1.Pack22の概要と対象
Pack22では、RoHSⅡ附属書Ⅲの適用除外のうちの9項目(6(a),6(a)-Ⅰ,
6(b),6(b)-Ⅰ,6(b)-Ⅱ,6(c),7(a),7(c)-Ⅰ,7(c)-Ⅱ)に関する16の適用除外延長申請について協議、評価されています。なお、7(a)に関しては、2件(Bourns Inc.とThe Umbrella Project)の延長申請が提出されました。
2.Pack22のコンサルテーション(協議会)
Pack22へのステークホルダーに対するコンサルテーション(協議会)は、欧州委員会の委託を受けたOeko-Institut e.V.により2020年12月から2021年3月までWeb上で実施されました。 7(a)に関しては、更新に肯定的な意見として以下のコメントが寄せられました。
・実現可能な鉛フリーの技術は確立されておらず、技術的に実現可能で信頼性を確保できる鉛代替材料は見つかっていない。
・高品質と高信頼性が求められるパワースイッチングデバイスで、鉛フリーの代替策は見つかっていない。代替の検討には、材料の開発、評価、製造工程及び製品の認定、信頼性試験が必要であり更なる時間が必要である。
また、以下のように更新に否定的な意見も寄せられています。
・RoHS指令の前文で「特定の材料や部品に対する適用除外は、電子機器に含まれる有害物質の段階的な廃止を達成するために、範囲と期間を限定すべきである。」とされている。
3.コンサルテーション後の流れ
上記コンサルテーションを踏まえて、評価報告書が作成されます。 報告書が欧州委員会に提出された後、委員会で採択され、欧州議会と欧州理事会に通報されます。 議会と理事会から異議が無ければ、2か月以内に官報で公示されます。
・延長承認の場合:延長期限と条件の設定を公表
・延長否認の場合:12~18か月の猶予期間後に適用除外が失効
また、適用除外期限日までに結論が出ない場合は、結論が出るまで期限日が延長されます。
前述のとおりPack22は最終報告提示と、欧州委員会での採択の結果待ちの状況です。 今後の動向を知るには上記流れのステップ毎に公表される情報を確認することが肝要です。 本コラムでも、新しい情報が得られ次第取り上げる予定ですので、引き続きご参照下さい。 また、本年10月8日付け本コラムの「RoHS指令Pack22、Pack23、Pack24の動向」で各Packプロジェクトの動向も紹介しておりますので、併せてご参照ください。
【参考資料】
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