2021年08月28日更新
殺生物性製品の市場での活用と使用に関する欧州議会および理事会規則 (EU) No 528/2012 (以降「BPR」) 1) に従って、 2021年8月2日公布された掲題の委員会実施決定 (COMMISSION IMPLEMENTING DECISION (EU) 2021/1283) (以降「委員会実施決定」) 2) においては殺生物性製品中の特定の活性物質の非承認について決定通知を行っています。
上記の委員会実施決定においてはその附属書に収載されている14物質が非承認となっています。
委員会実施決定においてはBPR の経過措置を規定している以下の第89条 (1) の第3文節が考慮されています。
第89条 (1) の第3文節の条文は以下です。
「指令98/8/EC (BPD) からBPRへのスムーズな移行を促進させるため、事業計画期間中、欧州委員会はその条件、あるいは第4条 (1) に従い、(1) 活性物質を含む殺生物性製品が関連する製品型式により承認されている。殺生物性製品が有効性を示す。(2)標的生物 (特に脊椎動物)に受入れ難い苦痛や不必要な痛み等を与えない。(3) 殺生物性製品自身またはその残留物により、直接、間接的作用を通じ人の健康に係る受入れ難い作用を有していない。(4) 殺生物性製品やその残留物が原因による環境中での受入れ難い作用を有していない。または適用可能ならば第5 条 (2) において以下を規定しています。すなわち、上記の第4条(1)を侵害することなく、CLP規則発がん性区分1A/1B、変異原性区分1A/1B、生殖毒性区分1A/2B、内分泌攪乱物質、REACH規則附属書ⅩⅢのPBT、vPvBに該当する活性物質は以下の場合には承認されかもしれない。
(a)それらの製品グループがクローズドシステムや人との接触や環境への放出を防ぐような条件下等で最悪の使用条件でも殺生物性製品中の活性物質のばく露による人、動物および環境へのリスクが僅かである。
(b)活性物質が人や動物の健康、環境に対する重大な危険を予防、抑制するのに必須である証拠が示されている。
(c)それらの活性物質を承認しないことが、使用した場合に生じる人や動物の健康、環境へのリスクと比較して、社会にとって不釣合いなほど、ネガティブな影響を与えることが予想される場合
以上を満たさない場合、あるいは必須の情報またはデータが指定期間内に提出されていない場合、その活性物質が承認されるという実施規則か、そのような活性物質は承認されないという実施決定のいずれかを採用するものとする。(以下略)」
BPRにおいて言及されている殺生物性製品に含まれているすべての既存活性物質の組織的な調査のための作業プログラムに関する2014年8月4日の委員会委任規則 (EU) No 1062/2014 (以降「委任規則」) 3) はBPR発効前に申請されていた物質評価手順を定めていて、その附属書Ⅱには、2019年3月30日における殺生物製品中の既存活性物質のレビュープログラムに含まれている活性物質/製品型式の組合せのリストが記載されています。
2000年5月14日 (BPDの施行日) に上市ずみのすべての殺生物性製品に含まれていた活性物質は委任規則による組織的な調査対象であるレビュープログラムの対象となっています。 レビュープログラムに含まれる物質/製品型式の組合せの申請を行っているか、もしくはECHAにより委任規則第17条 (5) に準拠していると認められた通知書を提出している参加者が、そのプログラムにおける物質/製品型式の組合せに対する支援を撤回した場合 (委任規則第11条では、以下の場合参加者がレビュープログラムにおける物質/製品型式の組合せに対する支援を撤回したものとみなしています。
(a) 撤回の意思を登録簿を通してECHAまたは評価所管当局に通知した場合
(b) 規定された期限内に申請書を提出しなかった場合
(c) 規定 (第4条(1)、第4条(4)または第5条(4)に従ってその申請が却下された場合
(d) 第6条(5)で規定された期限内に追加情報が提供されなかった場合
(e) それ以外の場合、評価所管当局またはECHAに料金を支払わなかった場合 )
撤回は、評価所管当局が本規則の第6条 (4) に従って、申請者に管轄当局報告書を提出する日以前に発生した場合、適時とみなされます。
欧州委員会は委任規則附属書Ⅱの組合せリストの非承認決定草案を作成します。(委任規則第20条)
同じ物質/製品型式の組合せを支援しているすべての参加者が、適時に撤回した組合せについて参加者の役割が事前に引継がれていない場合、(委任規則第11条)あるいは第13条に従った再定義を通じて、招待状は附属書Ⅱにおいて既存物質のみが対象で、新規物質は対象外となる場合にはECHAは、物質/製品型式の組合せのために参加者の役割を引継ぐために招待状を公開しなければならない。(委任規則第14条 (1))
これに従い、ECHAはそれらの活性物質/製品型式の組合せの参加者の役割引継者を公募しています。
これらの組合せの一部については、届出が提出されていないか届出は受理されたものの30日以内に料金を支払わなかった場合 (委任規則の第17条 (4)) あるいは届出者が届出要求内容の修正指示に従わなかった場合 ( 委任規則第17条 (5)) に従って届出が拒否されています。
委任規則第20条第1文節 (b) 項にしたがい、殺生物性製品において使用が承認されるべきでない活性物質/製品型式の組合せは以下のようになっています。
第20条の第1文節 (b) 項で殺生物性製品において使用が非承認となっている活性物質/製品型式の組合せは以下のとおりです。
・メタムナトリウム (製品型式 : 9,11 )
・チラム (製品型式 : 9 )
・ブロノポール (製品型式 : 9 )
・ペルオキシオクタン酸 (製品型式 : 2,3,4)
・チンキ剤、アブソリュート、エッセンシャルオイル、オレオレジン、テルペン、テルペンを含まないフラクション、留出物、残留物など、イネ科のオオムギから得られた抽出物およびそれらの物理的に修飾された誘導体。 (製品型式 : 19 )
(Capsicum annuum, ext. Extractives and their physically modified derivatives such as tinctures, concretes, absolutes, essential oils, oleoresins, terpenes, terpene-free fractions, distillates, residues, etc., obtained from Capsicum annuum, Solanaceae.)
・2,2 ジブロモ- 2 – シアノアセトアミド (DBNPA (製品型式 : 13 )
ECHAはすべての参加者が支援を撤回した/撤回したと見做され、そして参加者の役割が事前に引継がれていた活性物質/製品型式の組合せについて委員会に通知した。(委員会委任規則第12条 (3) )
委員会委任規則の第12条(3)に従い、すべての参加者が適時に支援を取下げたまたは取下げたと見なされる旨をECHAが欧州委員会に通報した場合、第20条第1文節 (a) 項により、殺生物性製品で使用が非承認となっている活性物質/製品型式の組合せは以下のとおりです。
製品型式はBPR付属書Ⅴにおいて、以下のように示されています。
・ナノ物質としての銀 (製品型式 : 1,2,4,9 )
・ユーカリシトリオドラオイルとシトロネラール、水和、環化 (製品型式 : 19 )
・2 -ヒドロキシ-α、α、4-トリメチルシクロヘキサンメタノール
(製品型式 : 19 )
・亜塩素酸ナトリウムと過硫酸ナトリウムから生成される二酸化塩素
(製品型式 : 2,3,4,5,11 )
・C 10 -16-アルキルジメチル、N-オキシド (製品型式 : 4 )
・トウガラシオレオレジン (製品型式 : 19 )
・トウガラシ、ナス科から得られたチンキ剤、トウガラシ臭気、アブソリュート、エッセンシャルオイル、オレオレジン、テルペン、テルペンを含まないフラクション、留出物、残留物などの抽出物およびそれらの物理的に修飾された誘導体 。 (製品型式 : 19 )
Malt, ext. Extractives and their physically modified derivatives such as tinctures, concretes, absolutes, essential oils, oleoresins, terpenes, terpene-free fractions, distillates, residues, etc., obtained from Hordeum, Gramineae
・(6E) – N- (4 - ヒドロキシ- 3 -メトキシ- 2- メチルフェニル ) -8-メチルノン- 6-エナミンおよび N - (4 - ヒドロキシ - 3 - メトキシ - 2 - メチルフェニル) -8- メチルノナンアミドの反応質量 (製品型式 : 19 )
上記に示されています製品型式については、BPR付属書Ⅴで以下のように規定されています。
メイングループ1 (消毒剤)
PT1 :ヒト用衛生製品、PT2 : 公衆衛生用製品、PT3 : 動物用製品、 PT4 : 食料や飼料分野製品、PT5 : 飲料水用製品
メイングループ2 (保存剤、防腐剤)
RT6 : 缶詰用、PT7 : フィルム (被膜用)、PT8 : 材木用、 PT9 : 繊維用、
PT10 : 建材用、PT11: 液体冷却用、PT12 : スライム防止用、PT13 : 金属加工用液体用
メイングループ3 (有害生物駆除用)
PT14 : 殺鼠剤、PT15 : 鳥駆除剤、PT16 : 軟体動物駆除剤、PT17 : 殺魚剤、
PT18 : 殺虫剤、PT19 : 忌避剤、PT20 : その他の脊椎動物の駆除剤
メイングループ4 (その他の製品)
PT21 : 汚染防除製品、PT22 : 死体および剥製防腐のための液体
本決定で規定されている措置は殺生物性製品に関する常任委員会の意見に準拠しており、EU官報公示の20日後に発効します。
まとめ
今回のコラムでは、BPRの活性物質/製品型式の組合せに対し欧州委員会による14物質の非承認決定通知をとりあげました。 BPRの既存活性物質のレビューブログラムは2024年までに終了することとなっています。 したがいまして、我国企業においても今後ともレビュープログラムの更なる関連動向を注視し、的確な対応を行っていくことが望まれるところです。
(担当 : 瀧山 森雄)
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