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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

フランス法「廃棄物と循環経済との闘いに関する法律」について

2022年09月09日更新

2020年2月10日にフランスで「廃棄物と循環経済との闘いに関する法律」(L.2020-105)“LOI n° 2020-105 du 10 février 2020 relative à la lutte contre le gaspillage et à l'économie circulaire”(以下L2020-105と略記)(*1)が告示され、環境法典 Part1 第5巻(汚染、リスク、公害の防止)(*2)が改定されました。


フランスはEU加盟国の主要国ですが、言語の壁もありフランス国内法の関心は、これまで高くはありませんでした。 しかし、L2020-105が公布され、当初ミネラルオイル規制法と思っていたのが、売れ残りテキスタイルの廃棄禁止などの様々な新たな義務が課されることが分かり、大きな反響を呼んでいます。


L2020-105の様々な新たな義務は、「説明覚書」(*3)に狙いや主旨が記載されています。「説明覚書」から改正内容をご説明します。


参考:フランス法の体系

(1)法律(Loi)

二つのパートで構成されています。

立法パート(Législative):法律によって定める一般的な適用の規則

規則パート(Réglementaire):範囲(リスト、しきい値)の正確な設定など

(2)オルドナンス(Ordonnance)

国会の授権による行政による立法で、EUの委任法に相当します。

(3)政令・デクレ(Décret)

大統領および首相の命令で、日本の政令に相当します。


1. (Loi)L.2020-105について

L.2020-105の制定に関する、声明文書(*4)や議会(上院、国民議会)の修正案などが公開されています。


L.2020-105は、次のEU指令を国内法に転換するものです。(順番は声明文書の順)

i.EU廃棄物指令(EC)2008/98(WFD)を修正する指令(EU)2018/851(*5)

ii.廃棄物の埋め立てに関する指令(EC)1999/31を修正する指令(EU)2018/850(*6)

iii.包装および包装廃棄物に関する指令(EC)94/62を修正する指令(EU)2018/852(*7)

iv.特定のプラスチック製品の環境への影響の低減指令(EU)2019/904(*8)


EU指令を国内法に転換する手順は、欧州連合の機能に関する条約(Treaty on the Functioning of the European Union:TFEU)(*9)に規定され、規則や指令の前文に適用条項が記載されています。 指令(EU)2018/852はTFEU第114条、他は第192条(1)の手続きで国内法に転換します。


TFEU 第114条(加盟国の平準化)は、域内自由移動を目的として、国内法は同じ基準とする手続きです。


第192条(1)は、第191条(環境政策の目的及び原則)のための立法手続きです。


第191条(1) 連合の環境政策は、次の目的の追求に貢献する。

・環境の質の保全、保護及び改善

・人間の健康の保護

・天然資源の慎重かつ合理的な利用

・地域または世界規模の環境問題に対処するための措置、特に、気候変動と闘う措置の促進

第191条(2)

・連合の環境政策は、連合の各地域(加盟国)の事情の多様性を考慮しつつ高水準の保護を目指す。連合の環境政策は、予防原則、予防措置がとられるべきという原則、環境損害はまず発生源において是正されるべきとう原則と汚染者負担の原則を基礎とする。(以下略)


例えば、指令(EU)2018/851で追加された第8a条(拡大生産者責任スキームの一般的な最小要件)及び第9条(廃棄物の防止)などの改定を受けて、L2020-105で環境法典の関連条項の改定はTFEU第192条(1)の手続きにより、フランスの事情を踏まえて制定しています。


フランスが先行している面もありますが、他国と比較して厳しい規制に見えるのは、TFEU第192条(1)の手続きによるフランスの国内事情に依る部分もあります。


2. 拡大生産者責任について

L.2020-105の拡大生産者責任(EPR:Extended Producer Responsibility)(*10)は、OECDのガイド及び指令(EC)2008/98の新設の第8条aで理念が示されています。


拡大生産者責任の対象は、L.2020-105によりL.541-10-1(*11)で22品目が特定されました。

1° 家庭で消費され、又は使用される製品の包装

2° 専門家が消費または使用する製品を販売するために使用される包装(2025年1月1日以降)、ケータリング活動の専門家が消費または使用する包装(2023年1月1日以降)

3° 印刷された紙(書籍を除く)

4°建設・解体廃棄物の無償で回収(2022年1月1日以降)

5° 電気・電子機器(個人用・業務用を問わず)の回収・再利用

6° 電池および蓄電池;

7° 健康と環境に重大なリスクをもたらす可能性のある化学製品の内容物と容器(2022年1月1日以降)

・・ (途中略)

22°プラスチックを含む漁具(2025年1月1日以降)


拡大生産者責任及び第9条の新たな義務が組み合わされて、廃棄物に含まれる特定の材料に対する強制的なリサイクル目標が設定されています。

i.プラスチックの場合:2025年までに50%、2030年までに55%。

ii.ガラス包装用:2025年までに70%、2030年までに75%。

iii.紙と段ボールの場合:2025年までに50%、2030年までに85%。

iv.アルミニウム包装用:2025年までに50%、2030年までに60%。

v.鉄金属包装用:2025年までに70%、2030年までに80%。

vi.木材の場合:2025年までに25%、2030年までに30%


3.Triman Logoについて

L.541.10-10で「拡大生産者責任の原則の対象となる製品の販売者は、購入者の要求に応じて、この製品について拡大生産者責任の義務を履行する生産者が登録されている一意の識別子を購入者に通知しなくてはならない。」としています。


L.541-9-3(*12)で、拡大生産者責任の原則の対象となる製品の標識義務を課しています。

L. 541-10-1 の対象となる家庭用として上市した製品は、家庭用のガラス製飲料包装を除き、この製品が仕分け規則の対象であることを消費者に通知する標識の対象となる。


この標識には、製品から廃棄物を分別または持ち込む手順を指定する情報を付随させる。製品のいくつかの要素または製品からの廃棄物が異なる選別方法の対象となる場合、これらの方法は要素ごとに詳細に説明する。この情報は、製品、そのパッケージ、または製品に付属する他の文書に表示するものとするが、他の条項に従って添付された記号をそこなってはならない。(以下略) 

この条項の適用条件は、政令により定める。

この政令が2021年6月30日に公布されたデクレ(Décret)D.2021-835(*13)で、標識要件が改正されました。政令の標識がTriman Logoで、拡大生産者責任対象品目の廃棄物を分別方法や複合材の場合は、Logoに加えて仕分け説明するタグが要求されます。


4. 指令(EC)2008/98の第9条(廃棄物の防止)について

指令(EC)2008/98(*14)の第9条は、i項のSCIPデータ登録条項が有名ですが、第9条の目的は、加盟国に廃棄物の発生を防止するために次項に示すように広範な措置が要求されています。(部分記述)


(a) 持続可能な生産・消費モデルの促進・支援をする。

(b) 資源効率が高く、耐久性があり(寿命や計画的な陳腐化がないことを含む)、修理可能、再利用可能、アップグレード可能な製品の設計、製造、使用を奨励する。

(c) 重要な原材料を含む対象製品を廃棄物にしない。

(d) 特に電気・電子機器、繊維・家具、包装・建材・製品を含む製品の再利用を奨励し、修理・再利用活動を促進するシステムを構築する。

(e) 必要に応じて、知的財産権を侵害することなく、スペアパーツ、取扱説明書、技術情報、または品質と安全性を損なうことなく製品の修理と再利用を可能にするその他の機器、機器、またはソフトウェアの入手を奨励する。

(f) 利用可能な最良の技術を考慮して、工業生産、鉱物の採取、製造、建設及び解体に関連するプロセスにおける廃棄物の発生を削減する。

(g) 国連持続可能な開発目標への貢献として、食料の一次生産、加工・製造、小売・その他の分布、レストラン・食料サービス、家庭における食料廃棄物の発生を削減する。これは、小売・消費者レベルでの一人当たり世界の食料廃棄物を50%削減し、2030年までに生産・サプライチェーンに沿った食料ロスを削減することを目標とする。

(h) 食料の提供その他の人の消費のための再分配を奨励し、動物飼料よりも人の使用を優先し、非食品への再処理を奨励する。

(i)材料及び製品中の有害物質の含有量の削減を、連合レベルで定められたこれらの材料及び製品に関する調和された法的要件を損なうことなく促進し、また、欧州議会及び理事会規則(EC) No 1907/2006(REACH規則)第3条第33項に定義される成形品の供給者が、2021年1月5日からECHAに対し、同規則第33条(1)に基づく情報を提供する。

(j) 廃棄物、特に再利用やリサイクルの準備に適さない廃棄物の発生を抑制する。

(k) 特に自然環境及び海洋環境において、ごみの主要な発生源である産品を特定し、当該産品からのごみを防止し、減少させるための適切な措置をとる。加盟国が市場の制限を通じてこの義務を履行することを決定する場合には、加盟国は、当該制限が均衡のとれた差別的でないものであることを確保しなければならない。


フランスでは、これらの要求を以下のように、国内法に転換して規制しています。(部分記述)

(1)L.541-9-2(*15)

電気電子機器の生産者、輸入業者、流通業者、その他の販売者は、自社製品の販売者および当該機器の修理可能性の指標およびそれを確立することを可能にするパラメータを要求する者に無料で連絡しなければならない。この指標は、関連する製品を修理する能力について消費者に知らせることを目的としています。


修理可能性の指標(*16)は、ドラム型(前面投入式)洗濯機、スマートフォン、ラップトップ、テレビモニター、電動芝刈り機(3種類:電気ケーブル付き、バッテリー付き、ロボット付き)、そしてすぐに縦形(上面投入式)洗濯機、食器洗い機、掃除機(3種類:電気ケーブル付き、バッテリー、ロボット付き)、高圧クリーナーが対象で、10点満点で計算します。


計算方法は品目毎に政令が公布(*17)されています。

(2)L.541-10-8(*18)

拡張生産者責任スキームの対象となる製品の収集を改善するために、これらの製品の流通業者は、無料で回収する必要がある場合がある。

また、販売業者はエンドユーザーが廃棄した使用済み製品を、販売された製品の数量と種類、または交換する製品の制限内で、彼らに代わって無料で回収する。

(3)L.541-15-8

販売を目的とする新たな非食品製品の生産者、輸入者及び流通業者は、L.3332-17-1(*19)に定義される「社会的有用性の連帯企業」の承認団体に、売れ残った製品を寄付することが要求される。(以下略)

この規定で、アパレル業界が大きな影響を受けています。

(4) D.543-213(*20) ミネラルオイル規制

古紙のリサイクルを妨害する物質を含むミネラルオイル、または古紙で回収された廃棄物からリサイクルされた材料の使用を制限するミネラルオイルに適用する。


D.543-213は、古紙リサイクルが目的で、リサイクルを阻害するミネラルオイルが禁止されます。 D543-213は、L541-1(II-9)の「リサイクルのために、回収前または回収中に有害廃棄物の混合物および成分を除去すること」によります。


D.543-213によるミネラルオイルの規制は、「環境担当大臣の命令により、当該物質が定める」としており、ネラルオイルの定義、濃度や使用制限日が、2022年5月3日の官報(JORF n°0102 of 3 May 2022)で、大臣命令(省令)(*21)として公布されたものです。


このように、L.2020-105は、フランスの環境政策を大きく変革する広大な修正法です。


(松浦 徹也)


引用

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