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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q601.UKにおけるSCIP登録の必要性について

2021年06月23日更新

【質問】

UKに製品を輸出しています。製品の構成部品にREACH規則のCLSが0.1%を超えて含有しています。SCIP登録は必要でしょうか。

 

【回答】

2021年1月5日以降にEU域内で0.1wt%以上CLSを含有する製品(成形品)を上市する事業者に対して、改正廃棄物枠組み指令(Waste Framework Directive:以下、WFDとする)(2008/98(EC):指令(EU)2018/851 により修正)注1) 第9条1項(i)で、SCIP登録の義務が定められています。

WFDは「指令(Directive)」であり、EU加盟国間での規制内容の統一(調整)を目的とする法令として、EU加盟国へは直接は適用されず原則としては国内法に置き換えとなります。


UKにおいては、WFDはThe Hazardous Waste (England and Wales)Regulations 2005 注2)が国内法です。 このPART2の2(1)(a)には、廃棄物指令2008/98(EC)は改正廃棄物枠組み指令(指令(EU)2018/851)に代わる旨が記載されております。


一方、UKは2020年12月31日23時(EU時間 2021年1月1日 0時)に移行期間を終了し、EUから完全に離脱しました。 これによりUKでは、2020年12月31日までEU法に基づく国内法が適用されます。 従って、2020年12月31日までのEU法の改定は反映されますが、それ以降は反映されず、UKの判断で改定内容が決められます。


また、EUからの離脱に合わせて、「欧州共同体法1972年」を離脱日に廃止する「欧州連合(離脱)法2018(European Union (Withdrawal) Act 2018)」(以下 離脱法)を制定しました。 この離脱法のSec.2(EU国内法の保持)で「EU法に基づく国内法は、離脱日の直前に国内法で効力を有するので、離脱日の当日およびその後も国内法で効力を有し続ける。」としています。(詳細は、コラム2020年12月11日参照)


以上のことから、UKでは国内法であるThe Hazardous Waste (England and Wales)Regulations 2005に従うこととなりますが、この規則の中では、指令(EU)2018/851の第9条1項 (i)に記載されているSCIP登録についての記述は確認できていない状況です。 今後のThe Hazardous Waste (England and Wales)Regulations 2005の改定に注意していく必要あります。


ご質問への回答は以上ですが、参考として英国の企業がEU域内へ輸出する場合のSCIP対応について、ECHAのFAQ(1774:英国のSCIP通知について:2021年5月3日)注3)に記載があります。 ECHA のSCIPデータベースでは英国企業は通知できないと回答されています。英国企業もEU域外の国という扱いです。


一方、UKでは、離脱後にUK REACHが制定されましたので、EU REACH規制の主要原則は保持されています 注4)。 そのため、SCIP登録の義務以前に、届出やサプライチェーンでの川下ユーザーや消費者に対して情報伝達の義務がありますので留意が必要です。なおUKでもCLSを公開しています 注5)。(必ずしもREACH規則のCLSの最新リストと同一ではないので注意が必要です)


注1)EU 廃棄物枠組み指令


注2)The Hazardous Waste (England and Wales)Regulations 2005


注3)ECHA FAQ 1774


注4)UK REACH


注5)UK candidate list


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