当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

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ケミカルリサイクルに関する調査報告について

2018年、欧州委員会は「循環型経済におけるプラスチックのための欧州戦略」1)を発表しました。 この戦略はプラスチックによる汚染を削減し、欧州におけるプラスチックの設計、生産、消費、リサイクルの流れを変革することを目的としています。 その目的を達成するためには、インフラとイノベーションの両方に大規模な投資が必要であるものの、高度な選別、ケミカルリサイクル、ポリマー設計の改善のための革新的なソリューションは、強力な効果をもたらすことができると明記されています。


ケミカルリサイクルは、プラスチックポリマーを化学的に分解して、原油、ナフサ、燃料などを新たにつくりだし、それらを再びプラスチックの生産に利用するプロセスです。 他の方法ではリサイクルができない混合物や汚染されたプラスチック廃棄物を処理できるため、メカニカルリサイクル(プラスチックを機械的に粉砕して粒状にする)を補完することが期待されています。


2021年11月11日、欧州化学品庁(ECHA)は、ケミカルリサイクルに関する現在の知見を調査した報告書2)を公表しました。 本報告書では、ケミカルリサイクルをさらに発展させ、プラスチック汚染を削減するために考慮すべき結論や提言が説明されています。 今回のコラムでは本報告書の概要を紹介します。


1.本調査の目的

本調査の目的は廃棄物からの高分子材料(プラスチック、ゴムなど)のケミカルリサイクルに関する現状の見識を調査することです。 具体的には、文献調査、専門家へのヒアリング、ケーススタディを通じて情報を収集し、ケミカルリサイクルの情報、主要材料、物質、プロセス、ケミカルリサイクル技術の現状、機会と課題、循環型経済におけるメリット、異なる技術の成熟度レベル、規制監督などに関する報告書を作成することを意図しています。


2.本調査の結論

文献調査、専門家との協議により一部の提言を含む6つの結論が得られました。


結論1:ケミカルリサイクルの用語が曖昧であるため、循環型経済におけるケミカルリサイクルの潜在的な役割に関する結論が不明確となっている。


学術論文では、「リサイクル」の概念は、EUの規制よりも広い意味で使用されていることが明らかになりました。学術論文では、ケミカルリサイクルを三次リサイクルとして扱い、リサイクルの可能性のある製品として燃料を含めており、ケミカルリサイクルによる燃料の生産は、学術論文でかなり注目されています。 ただし、廃棄物枠組指令3)におけるリサイクルの定義では、エネルギー回収や燃料、埋め戻し作業に使用される材料への再処理はリサイクルに含まれないとされています。


そのため、健全で一貫した議論を行うためには、ケミカルリサイクルの用語の調和が必要であり、廃棄物枠組指令で定められた「リサイクル」の定義を満たす技術と、そうでない技術を区別するために、文献、報告書、規制文書は、その範囲に含まれる化学物質の再処理技術を常に明記すべきであると提言されています。


結論2:各ケミカルリサイクル技術は、プラスチックの循環性に寄与する能力に違いがある。


確立されたケミカルリサイクル技術である熱分解、ガス化、化学分解は、プラスチックの循環性を確保する能力に違いがあります。 熱分解、ガス化は一部の副産物は、再利用不可能で廃棄が必要な残渣となります。 また、前述のように熱分解、ガス化における多くの研究は燃料やエネルギーの生産に関するものですが、規制の「リサイクル」の定義に該当しません。 化学分解は高品質のモノマーが得られると報告されており、技術成熟度が高いものの、十分な廃棄物量が確保できるプラスチックの材質が限定的であり、市場の確立に問題があります。


そのため、ケミカルリサイクル技術の可能性は、1つの技術の利点や欠点をケミカルリサイクルの分野全体に対して一般化しないよう、ケースバイケースで評価されるべきであると提言されています。


結論3:ケミカルリサイクルプロセスにおける懸念物質の分解に関して得られた見識は断片的である。


懸念物質の定義は本報告書の6.1項で説明されており、REACH規則ならびにストックホルム条約により規制される残留性有機汚染物質(POPs)、さらにRoHS指令や食品に接触する素材および製品に関する規則などの分野別のEU法で規制される物質も含まれます。


熱分解における臭素系難燃剤の分解に関する研究は多い一方で、他の確立されたケミカルリサイクル技術に関する研究は確認されませんでした。 液体オイル,ワックス,および副産物などの熱分解のアウトプットにおいて,異なる臭素系物質が報告されており、これらの物質の存在は、熱分解方法や処理されたプラスチックの種類によって異なっています。


そのため、ガス化と化学分解における懸念物質の反応と分解について調査すべきであり、健全な結論を出すためには、商業的またはパイロット的なケミカルリサイクルプラントにおける懸念物質の研究が必要であると提言されています。


結論4:ケミカルリサイクルにおける規制問題に関する文献は存在しない。


専門家との協議においても規制上の問題についての見識が一般的に不足していることがわかりました。 ただし、従来、メカニカルリサイクルで提起されていた以下のような問題は、特定のケミカルリサイクル技術にも関連する可能性があります。


・包装材、建設資材、使用済み自動車に関するEU法において、プラスチック廃棄物のリサイクルを促進するための措置が不十分である

・プラスチック廃棄物に含まれる懸念物質の存在に関する情報が十分ではない

(SCIPデータベースは、この情報ギャップの解消に貢献することを目的としている)

・リサイクル事業者が廃棄物管理者から物質製造者に地位が移行することによる規制の不確実性

(廃棄物全体で有害性を評価する廃棄物管理規制とそのような評価が物質の本質的な特性に基づいて行われる化学物質規制における評価基準の違いとリサイクル品の品質と安全性を保証するための明確な廃棄物処理基準と手順の欠如)


リサイクルの原料は廃棄物であり、廃棄物法によって管理されていますが、リサイクルの生産物は、化学物質や成形品、製品安全やその他の分野の法律の規制下にあります。 ケミカルリサイクル技術のうち熱分解は、化学品や燃料の製造に使用される中間物質(オイル、ワックスなど)や、一部組成が不明な多成分物質(UVCB)といった中間生産物を製造するという特徴があります。 しかし、化学分解においてはその特徴を有しない場合もあります。 したがってREACH規則やその他の化学物質、廃棄物、製品安全に関する各規制への対応は、各ケミカルリサイクル技術により異なっています。


そのため、ケミカルリサイクルにおける規制問題は、ケミカルリサイクル技術の種類ごとに個別に検討すべきであると提言されています。


結論5:デジタル技術は、リサイクルにおける懸念物質のトレーサビリティーの向上に貢献する。


結論6:ブロックチェーン技術は、プラスチック廃棄物に含まれる懸念物質をモニタリングするためのソリューションを提供するものの、その導入には組織間および組織の多大な努力が必要となる。


結論5と結論6はリサイクル業者が廃棄物における懸念物質を確認するうえで有用な情報通信技術に関して説明されており、いずれの結論も提言はありません。


3.まとめ

ケミカルリサイクルはプラスチック廃棄物を削減することができる技術ですが、ケミカルリサイクルの見識はまだまだ十分とはいえず、法規制の整備も必要とされます。


今後、提言に挙げられた検証や研究が進められることにより、ケミカルリサイクルに関する新たな定義の確立や各法規制の調和が図られていくことが予想されます。 循環型経済では製品設計から廃棄までのライフサイクルを一体で考える必要があるため、自社製品が関連するリサイクル技術や規制についても目を配ることが重要であると考えられます。


(柳田 覚)


1)

https://eur-lex.europa.eu/resource.html?uri=cellar:2df5d1d2-fac7-11e7-b8f5-01aa75ed71a1.0001.02/DOC_1&format=PDF


2)

https://echa.europa.eu/documents/10162/1459379/chem_recycling_final_report_en.pdf/887c4182-8327-e197-0bc4-17a5d608de6e?t=1636701265520


3)

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A02008L0098-20180705


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