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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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中国の新汚染物質管理行動計画と新汚染物質リストについて

2023年02月24日更新

はじめに

中国ではこれまで新規化学物質環境管理登記弁法(中国版REACH規則) 1) による登録、優先順位付けした化学物質の環境リスク評価、既存化学物質リスト(中国現有化学物質名録)2) の整備、また危険化学品安全管理条例 3) による指定された危険化学品の規制等の政策を中心として化学物質管理政策が進められてきました。


一方、最近の動きとして、「新汚染物質管理行動計画」(新污染物治理行动方案)4) への取り組みが開始されており、それに基づく措置として、中国・生態環境部は「重点管理対象新汚染物質リスト(2023年版)」(重点管控新污染物清单)5) を公表しました。

本稿では、それらの概要について解説します。


1. 新汚染物質管理行動計画

中国では2021年3月の全国人民代表大会において第14次5か年計画が採択され、2021~2025年の中国の経済ビジョンが示されました。 その中で生態環境については、汚染物質の削減、脱炭素や空気・水・土壌の質の改善等の取組みによる環境の質の持続的改善が挙げられています。6)


2022年5月に公表された「新汚染物質管理行動計画」は、こうした大きな動きとリンクしたものと考えられます。 これは近年特に空気、水、土壌への影響が懸念されている国際条約の規制対象とされる残留性有機汚染物質、内分泌攪乱物質、抗生物質等(以下新汚染物質)に対し、それらの管理に必要とされる技術は高レベルのものが必要とされるものの、取り組みが遅れている現状に対し、その解決に一層注力する必要があるとの認識を踏まえ、これらの管理に重点を置いた取組みを具体化した計画となっています。


これには法規制や管理システムの整備をはじめ、各方面に渡る総合的な取組み内容が提示されています。


1.1主要な目標

本行動計画では、その主要な目標として以下が挙げられています:


(i)2025年までに人の健康や環境への影響に対する懸念が大きく、生産量(使用量)の多い化学物質のスクリーニングを終え、バッチ方式での環境リスク評価を完了させる。

(ii)重点管理対象新汚染物質のリストを作成、公開する。

(iii)重点管理対象新汚染物質に対し、禁止、制限、排出制限等の環境リスク管理および制御措置を講ずる。


1.2活動項目とその実行を保証するための要件

上記目標達成のためには、国全体としての化学物質管理能力強化の必要があり、そのために以下の様な活動を行うとしています:


(i)法規制を整備し、新汚染物質管理システムの確立および改善:技術標準、各担当部門間の調整の仕組みや専門家委員会の設置等も含む。

(ii)新汚染物質の環境リスク状況の評価を目的とする調査、モニタリング:化学物質危険有害性情報調査システム、調査モニタリングシステム、環境リスク評価システム、重点管理対象新汚染物質リストの作成および見直し等。

(iii)新汚染物質の発生抑止のための厳格な発生源管理:新規化学物質登録制度の完全実施、禁止および制限措置の厳格化、製品中に含有されている重点管理新汚染物質に対する管理の強化等。

(iv)プロセス制御の強化による新汚染物質の排出削減:クリーン生産・グリーン製造の強化、抗生物質の使用管理の標準化、農薬の使用管理の強化等。

(v)末端レベルにおける管理強化による新汚染物質の環境リスクの低減: 新汚染物質を排出する企業や機関における排出管理強化、新汚染物質を含む廃棄物の収集・処理の強化、長江、黄河等主要河川地域、主要港湾、工業団地その他における新汚染物質管理パイロットプロジェクトの実施。

(vi)基礎能力開発による新汚染物質管理基盤の強化:科学技術開発への支援による新汚染物質管理技術の強化およびイノベーション能力の向上、国と地方における新汚染物質管理の監督・執行・監視能力の強化、関連する専門人材チームの編成とトレーニングの強化。


そしてこれらを確実に実行していくためには、以下の4点が必要であるとしています:

(i)組織のリーダーシップの強化:党の全面的指導の下、各地方政府や国務院の関連部門の各々の役割の実行とそれらの間の調整機能の確立により分業連携の強化を図る。

(ii)規制執行の強化:企業は新汚染物質管理要件の遵守が求められ、このための現地検査の実施や未実施企業に対する監督・執行を強化する。

(iii)資金チャネルの拡大:新汚染物質管理分野への社会資本の参入を促進するため、当分野への金融資本の信用支援の指導や、税制上優遇措置等を実施する。

(iv)広報・指導の強化:法規制や政策についての広報活動を強化し、国民への指導を行い、これら活動への積極参加を図るべく意識喚起を図る。


2. 重点管理対象新汚染物質リスト2023年版

前節で述べた様に、重点対象新汚染物質リストの作成は、新汚染管理行動計画の実施項目の1つに挙げられています。2022年9月にその案が公表され、1か月間の意見募集を経て、2022年12月30日、本リストが公表されました。これは本年3月1日に施行されます。


今回公表の2023年版では、本文全6条と共に、以下の物質又は物質群が指定されており、物質ごとに製造・輸入や使用等の禁止、適用除外用途、有害廃棄物の適正な管理措置等について示されています。

なお本リストは今後の状況に応じて追加や修正を行うとしています:

(i)POPs条約で規制対象となる残留性有機汚染物質

PFOA(CAS RN 1763-23-1)とその塩類等、POPs条約 7) の附属書A(廃絶)およびB(制限)に収載されている8物質の他、現在附属書への追加が審議中のデクロランプラス並びにそのsyn-異性体及びanti-異性体(CAS RN 13560-52-3他)が指定されています。

これらに対しては、POPs条約の主旨に沿うべく、製造、加工、輸出入の禁止や廃棄に対する規制等が実施されます。

(ii)有毒汚染物質

ジクロロメタン(CAS RN 75-09-2)およびクロロホルム(CAS RN 67-66-3)が指定されましたが、これらは既に大気あるいは水質汚染物質として有毒有害大气污染物名录 8) や有毒有害水污染物名录 9) に収載されています。

これらを含む塗料剥離剤の製造の禁止、洗浄剤等製品中の含有濃度基準の遵守、大気汚染防止法や水質汚濁防止法に基づく排出規制等が実施されます。

(iii)内分泌攪乱物質

ノニルフェノール(CAS RN 25154-52-3他)が指定されました。農薬の製造における補助剤、界面活性剤であるノニルフェノール エトキシレート製造のための原料、および化粧品の成分としての各々の使用を禁止しています。

(iv)抗生物質

個々の物質名ではなく、抗生物質全体として指定されていますが、これらは細菌間の移動の過程で生成される薬剤耐性遺伝子によって、高耐性細菌が生み出されるという問題を引き起こしています。 このため抗菌薬の販売と使用に関する関連法規制の厳格な施行、抗生物質製造中に発生する抗生物質廃棄物の管理、製薬産業における水質汚染物質排出基準の遵守等の施策が進められます。

(v)禁止物質

製造、加工、使用、輸出入が禁止されているヘキサブロモシクロドデカン(CAS RN 25637-99-4他)、クロルデン(CAS RN 57-74-9)、PCB等、10件の残留性有機汚染物質が指定されています。

これらに対しては、現在実施されている発生源、廃棄物や土壌汚染リスクに対する管理

を厳格に継続されます。


おわりに

新汚染物質管理行動計画は新規化学物質環境管理登記弁法の様な化学物質に対する包括的な管理ではなく、特に重点的にリスク管理すべき物質に焦点を当て、その各々に対する管理措置を示していることが特徴です。


前記の様に、本計画では今回の重点管理対象新汚染物質リストの整備以外にも多くの実施項目が挙げられていますので、引き続き今後の取組みの動きについて注視していきたいと思います。


参考URL


2)


3)


4)


5)


6)


7)




以上


(福井 徹)


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