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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

執筆者の写真tkk-lab

EUの二次原材料を取り巻く状況について

2023年03月10日更新

EUグリーンディール 1)は気候中立、資源効率、競争力のある経済への協調戦略を示しており、その達成のために次々と新しい施策が打ち出されています。 そのなかでも2020年3月に採択された新しい循環型経済行動計画 2)は、EUグリーンディール目標達成に向けた循環型経済移行のステップが示されています。 循環型経済実現のためには、一次原材料(バージン材料)の代替となる二次原材料(Secondary Raw Materials:SRMs)の利用促進が大きな役割を担っています。 今回のコラムでは、EUにおける二次原材料に関する情報を整理するとともに、最近実施された調査報告などを説明します。


1.二次原材料の定義

EUにおける燃料、農業原材料を除く一次原材料から二次原材料までの体系的な知識ベースを提供することを目的としている原材料情報システム(Raw Materials Information System:RMIS) 3)では、二次原材料の明確な定義はないと明記しています。4)


ただし、技術的には、二次原材料はリサイクル可能な材料として識別でき、新しい原材料として経済に再投入できるものであり、廃棄物または使用済み (End of Life:EoL) 製品のいずれかから取得され、寿命の終わりにリサイクル工場に送られるものであると説明されています。 さらに、2015年12月に公表された最初の循環型経済行動計画 5)のなかでは、二次原材料は従来の一次原材料と同様に取引および出荷ができるため、原材料の供給安定性を向上させることができるとしています。


2.新しい循環型経済行動計画

序論において、EUが高品質の二次原材料のための域内市場を十分に機能させるためのさらなる措置が講じられる予定であると明記されており、具体的には以下のような行動計画が示されています。


(1)4.2.有害物質のない環境での循環性の強化

リサイクルされた原材料に禁止物質が残留している場合など、二次原材料の安全性が損なわれる可能性があります。 二次原材料の使用に対する信頼を高めるために、欧州委員会は以下を行うとしています。


・偶発的な汚染によるものも含め、廃棄物から汚染物質を除去、選別するための高品質のソリューション開発を支援する。


・リサイクル材料およびその製品に含まれ、健康や環境に問題をもたらす物質の存在を最小限に抑える方法論を開発する。


・高懸念物質や特に慢性的な影響を及ぼすようなその他の関連物質、およびサプライチェーン上で回収作業に技術的な問題をもたらす物質に関する情報を追跡・管理し、廃棄物中のこれらの物質を特定するための調和されたシステムを産業界と協力して段階的に開発する。

これらは、持続可能な製品政策の枠組みの下での措置、高懸念物質を含む成形品に関する ECHA データベースとの相乗効果の下で行われる。


(2)4.3. 二次原材料が十分に機能するEU市場の創造

二次原材料は、安全性だけでなく、性能、入手性、コストなどの理由から、一次原材料との競争において多くの課題に直面しています。 新しい循環型経済行動計画で示される多くの行動計画、特に製品へのリサイクル含有量に関する要求事項の導入は、二次原材料の需要と供給のミスマッチを防ぎ、EUにおけるリサイクル分野の円滑な拡大に寄与すると予測されます。 さらに、二次原材料が十分に機能する域内市場を確立するために、欧州委員会は以下を行うとしています。


・加盟国による廃棄物の最終処分状態と副産物に関する改正規則の適用状況監視結果に基づき、特定の廃棄物の流れについて、EU全体の廃棄物最終処分基準をさらに発展させる余地を評価したうえで、各国の廃棄物と副産物における基準の調和を図る国境を越えた活動を支援する。


・加盟国内、EU及び国際レベルでの既存の標準化作業の継続的な評価に基づき、標準化の役割を強化する。


・その物質の使用が認可要求の対象である場合、国境での取締りを引き続き改善しつつ、成形品に含まれる高懸念物質の使用制限を適宜、活用する。


・主要な二次原材料の市場監視所を設立することの実現可能性を評価する。



3.EUにおける二次原材料市場の調査報告書

2023年1月26日、欧州環境機関によってEUにおける二次原材料市場の調査報告書 6)が公表されました。 本報告書は、EUにおける二次原材料の使用を増加させ、一次原材料への依存を減らすための障壁と機会を明らかにすることを目的としており、二次原材料の種類ごとに市場の機能を分析しています。


本報告書では、アルミニウム、紙とダンボール、木材、ガラス、プラスチック、バイオ廃棄物、建設・解体廃棄物、繊維製品の8種類の二次原材料の市場における機能性を市場規模および成長率、市場発展における政策推進者の役割、価格、技術仕様と障壁を細分化した12の指標により評価しています。


その結果として、十分に機能しているのはアルミニウム、紙とダンボール、ガラスの3つの市場だけであり、これらの市場はかなり以前に設立され、国際的かつ開放的であり、それぞれの材料供給において大きな市場占有率を占めていると説明されています。 いっぽうで、残りの5つの二次原材料市場(木材、プラスチック、バイオ廃棄物、建設・解体廃棄物、繊維製品)は、十分に機能しておらず、その主な要因は、市場規模が小さいこと、供給が増加しているにもかかわらず需要が小さいこと、技術仕様が不十分であることとしています。 なお、機能が優れた市場として以下のような点が挙げられています。


・一次材料市場を含めて、その原材料の市場全体に占める割合が大きい。

・需要と供給の相互作用を適切に反映した価格となっている。

・国際的、あるいは広い範囲での取引がある。

・(廃棄物に関する)政策からの支援がなくても、十分な経済的推進力がある。

・リサイクルや回収を行う産業的な能力が優れている。

・市場情報が十分に入手可能である。

・優れた製品標準がなされている。


4.まとめ

EUにおける二次原材料市場の調査報告書では、二次原材料の市場の機能性を妨げているバリューチェーン上の様々な障壁も説明しています。 これらは、製品設計の段階における経済的なインセンティブの欠如、また、供給面においては、EU全域で技術仕様や廃棄物処理基準が十分に調和されていないことが挙げられています。


これらの障壁に対応するために、EU全体の廃棄物最終処分基準をさらに発展させる、リサイクル材含有量に関する要求事項の範囲を広げる、技術基準や認証を導入するといった措置が提案されています。 こういった措置は、EUレベルで既に実施されている政策の枠組みのなかで実施可能なものであるとしています。 そのため、今後、EU法規制の改正を理解するうえで、二次原材料の利用を促進するといった観点も必要になっていくと考えられます。



(柳田 覚)



【参考情報】

1)EUグリーンディール


2)新しい循環型経済行動計画


3)欧州委員会共同研究センター(JRC)による原材料情報システム(RMIS)


4)RMIS内 二次原材料における政策と定義


5)最初の循環型経済行動計画


6)EUにおける二次原材料市場の調査報告書

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