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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

トピックス:EUのプラスチックペレットロス防止規則案

2024年01月05日更新

はじめに

欧州委員会(European Commission:EC)は、2023年10月16日、マイクロプラスチックによる環境汚染低減のためのプラスチックペレットロス防止規則案を公表しました。 翌2024年1月4日まで意見募集が行われます。1)


1.背景

EUでは2015年12月、循環型経済行動計画(An EU action plan for the circular economy)2) が採択され、プラスチックや食品廃棄物などを優先分野として、製品の製造と消費、廃棄物処理、二次原材料について取り組むべき課題が示されました。


その一環であるプラスチックに対する取り組みとして、2018年1月採択されたEUプラスチック戦略(European Plastics Strategy)3) は、環境の保護、海洋ゴミ、温室効果ガス放出や化石燃料依存の低減のため、プラスチック製品の設計、製造、使用およびリサイクルの方法を変革することを目指しています。


更に2021年5月には、大気・水・土壌の汚染ゼロを目指すゼロ汚染行動計画 4) が採択されました。 ここでは2050年に大気・水・土壌の汚染を健康や生態系に害を及ぼさない程度にまで低減すること、また2030年には海洋のプラスチックごみを50%、マイクロプラスチックの環境中放出を30%削減することが目標とされています。


こうした流れの中で、今回の規則案は、環境汚染の重大要因であるマイクロプラスチックの原因となっているプラスチックペレットのロス対策が目的です。


マイクロプラスチックとは、概ね5mm以下のプラスチックの断片で、これらは回収が困難で、環境中で分解されずに大気中に飛散したり、魚介類等の動物に摂取され、食物連鎖によって人間の体内にも侵入します。 実際、全世界的に大気、海洋、河川、土壌、様々な動物体内や飲料水、食品中にも検出されています。


プラスチックペレットは多様なプラスチック製品の製造原料ですが、その工程中の取扱いや輸送中に一部が環境中に漏出し、それがマイクロプラスチック発生源の1つであると考えられています。  


EUにおけるプラスチックペレットの製造あるいは取扱量は約57百万トン(2021年)、うち52~184千トンが環境中に放出(2019年)されたものと推定されています。


なおマイクロプラスチックの他の発生源としては、塗料、タイヤ、合成繊維やジオテキスタイル等があります。


2.規則案の概要

 公表された規則案は、前文44文節、19条および4附属書より成っています。5)

 これらの主な内容は以下の通りです:

(1)目的と適用範囲

本規則は、サプライチェーンの全ての段階におけるプラスチックペレットの取扱いにおける義務を定めることにより、そのロスを防止することとしています。


またEU内でプラスチックペレットを年間5トン超取り扱う事業者、およびEU内でプラスチックペレットを輸送するEU内外の輸送業者が対象となります。(第1条)


(2)適用対象者の義務、要件

上記対象者はプラスチックペレットのロスが発生しない様にすることが一般的義務として規定されていますが(第3条)、特に以下の点は重要です(第4条):

(a) 取扱事業者:プラスチックペレット取扱施設毎に、リスク評価計画を策定し、その取扱いが本規則に適合していることの自己宣言書と共に管轄当局に提出する。リスク評価計画は、附属書Ⅰに従い、プラスチックペレットの漏出やロスが生ずる可能性のある取扱作業、その推定量、それらの防止、抑制、収拾のための装置および方法の概要等を記載するものである。

(b) 輸送業者:プラスチックペレットの積み降ろし、輸送、メンテ・清掃時のそれらの漏出やロスに対する予防措置(詳細は附属書Ⅲによる)を確実に実施する。

(c) その他:取扱事業者およびEU内輸送業者は、本規則遵守のために必要な従業員教育、執った措置の記録、および年間のプラスチックペレット取扱量およびロス量の推定値の記録を維持せねばならない。これらの記録は5年間保存し、必要に応じ管轄当局に利用可能とせねばならない。


(3)コンプライアンスシステム

中および大企業でプラスチックペレット取扱量年間1,000トン超の施設を運営している場合には、その施設毎にリスク評価計画に記載された内容の遵守状況の管理が要求されてます。

まずこれらの企業は毎年内部評価を実施せねばならず、また遵守の証明として、独立した認証者による定期的評価(大企業の場合、3年毎、中企業では4年毎)を受け、認定書を取得せねばなりません。認定書の様式は附属書Ⅳによります。(第4および5条)


(4)管轄当局および加盟各国の責務

加盟各国の管轄当局は、前記自己宣言書や認証者からの情報等を考慮しつつ、環境監査その他のリスクベースのアプローチに基づく手段によって、取扱事業者や運送業者の本規則の遵守状況を確認します。


また加盟各国は、取扱事業者、輸送業者のリスク評価計画や自己宣言書を含む活動状況や管轄当局による環境監査等の状況について、ECに対し、3年毎に報告書を提出します。(第8条)


(5)測定法の標準規格の整備

本規則の目指すプラスチックペレットのロス量を定量的に推定して管理していくために、欧州標準化規則(EU)1025/2012 6) の手続きに従って、EU共通の調和化された測定法を開発すべきとしています。(第13条)


3.その他

マイクロプラスチックについては、本規則提案に先立ち、2023年9月にREACH規則附属書XVIIが改正され、合成ポリマーのマイクロプラスチックおよびそれを意図的に添加し0.01wt%以上含有する混合物の上市の禁止が新たに追加されました。7)


これに対し、本規則案は、プラスチックペレットのロスという視点から、その取扱いに関する必須要件を包括的に設定することによって、マイクロプラスチックの非意図的な環境中への放出を削減しようとするもので、今回のREACH規則の制限規定に対する補完的な役割を有すると言えます。


なお本規則の効果として、プラスチックペレットのロス量は最大74%削減され、前記EUプラスチック戦略の目標であるマイクロプラスチックの環境中放出30%削減の最大1/4に相当するとしています。


おわりに

本規則は、マイクロプラスチックの非意図的な環境汚染源が取組み対象ですが、事業者がその削減計画を策定、自己宣言し、その遵守状況を客観的な認証によって目標とする環境汚染低減効果を確保していこうとする考え方は、現在EUで施行、運用されている様々な製品の安全性や品質向上を図るための法的枠組みである「新たな法的枠組み」(New Legislative Framework)8) と相通ずるものが感じられます。

この適用を受ける事業者は、施工後18カ月以内に規定された要件を遵守せねばなりません。


今後、現時点ではまだ未整備の前記のプラスチックペレットのロス量推定のための標準的測定法をはじめ、引き続き様々な施策が具体化してくると思われますので、引き続き注意していきたいと思います。


以上

【引用URL】








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