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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

第30次CLS追加と既存CLSの指定基準の変更

2024年03月08日更新

1.第30次CLS追加

欧州化学品庁(ECHA)は、REACH規則の認可対象候補リスト指定物質(CLS)を1回/半期の頻度で追加しています。直近では2024年1月に第30次追加として次の5物質が新たにCLSとして正式に追加されました。1)

・2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール(2,4,6-tri-tert-butylphenol、CAS番号732-26-3)

・2-[2-ヒドロキシ-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フエニル]ベンゾトリアゾール (UV-329)(2-(2H-benzotriazol-2-yl)-4-(1,1,3,3-tetramethylbutyl)phenol、CAS番号3147-75-9

・2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1オン(2-(dimethylamino)-2-[(4-methylphenyl)methyl]-1-[4-(morpholin-4-yl)phenyl]butan-1-one)、CAS番号119344-86-4)

・2-(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール (UV-326)(Bumetrizole、CAS番号3896-11-5)

・2-フェニルプロペンとフェノールのオリゴマー化及びアルキル化反応生成物(Oligomerisation and alkylation reaction products of 2-phenylpropene and phenol、CAS番号―)


2.指定済CLSの健康・環境有害性基準

上記に加え、2008年10月にすでにCLSに指定されているジブタン-1-イル=フタラート(Dibutyl phthalate(DBP)、CAS番号84-74-2)について、CLSの指定理由となる健康・環境有害性基準が変更され、新たに「環境に対する内分泌かく乱特性」が追加されました。


すでにCLSに指定されていれば、指定時点で成形品中の情報伝達やSCIPデータベース登録等の義務が発生していることになります。 にも関わらず、なぜ改めて健康・環境有害性基準の変更が行われるのでしょうか?


結論から言えば、指定理由となっている健康・環境有害性基準は認可対象物質(附属書XIV)に指定された場合に、健康・環境有害性基準に応じた除外用途等が定められているため、健康・環境有害性基準の変更によって除外用途が影響を受ける場合があるためです。

REACH規則第57条では認可対象物質とするための健康・環境有害性基準が次のように定められており、この基準に該当する場合に、CLSに指定され、その後認可対象物質に指定される流れとなっています。


(a)CLP規則附属書Iのセクション3.6に従い、発がん性区分1A、1Bの分類基準に該当する物質

(b)CLP規則附属書Iのセクション3.5に従い、生殖細胞変異原性区分1A、1Bの分類基準に該当する物質

(c)CLP規則附属書Iのセクション3.7に従い、生殖毒性区分1A、1Bの分類基準に該当する物質

(d)REACH規則附属書XIIIの基準に従い、残留性・蓄積性・毒性(PBT)に該当する物質

(e) REACH規則附属書XIIIの基準に従い、残留性および蓄積性が極めて高い(vPvB)に該当する物質

(f)内分泌かく乱性を有するか、上記(d)、(e)の基準には該当しないものの、残留性・蓄積性・毒性または残留性および蓄積性が極めて高い特性を有する物質であって、(a)~(e)に該当する物質と同等レベルの懸念を生じさせるような健康や環境に対する深刻な影響をもたらす恐れがあるとの科学的根拠があり、かつ第59条に定める手続きによって個別に特定される物質


3.健康・環境有害性基準に応じた認可の除外

附属書XIVに指定され認可対象物質になった場合には、物質それぞれに設定された日没日以降、該当物質および該当物質を含む混合物はEU域内で原則認可申請を行っていなければ上市・使用することができません。


ただし、この認可の原則には除外用途が設けられており、REACH規則第56条5項で健康・環境有害性基準に応じた除外用途として、「第57条(a)、(b)、(c)に該当するという理由のみ、または健康に対する有害性のみを理由に第57条(f)に従って指定された認可対象物質の場合、化粧品および食品接触材には適用しない」ことが定められています。


また、REACH規則第56条6項では混合物の場合の該当物質の濃度による除外が、健康・環境有害性基準に応じて次のように定められています。

・第 57 条(d)、(e)および(f)に該当する物質の場合、0.1%の濃度限界値未満

・その他物質はCLP規則第11条(3)で指定された値未満(例:生殖細胞変異原性0.1%、発がん性0.1%、生殖毒性0.3%)


このように健康・環境有害性基準によって認可の除外条件に影響を与えるために、すでにCLSまたは認可対象物質として指定されている物質であっても、新たな健康・環境有害基準への該当等が明らかとなった場合には、その変更が図られる仕組みとなっています。


例えば、今回健康・環境有害性基準が変更されたDBPは、当初「第57条(c)生殖毒性」のみが理由となっていました。 その後「第57条(f)健康に対する内分泌かく乱特性」が追加されたことにより、0.1%~0.3%の混合物が除外から外されました。さらに今回「環境に対する内分泌かく乱特性」が追加されたことで、化粧品および食品接触材も除外から外されることになります。 すでに、ECHAは附属書XIVの指定基準を変更する勧告案を公表2)し、意見募集を開始しています。 今後、附属書XIVにも新たに「環境に対する内分泌かく乱特性」が追加され、これまで除外されていた化粧品や食品接触材が認可の対象となる見込みです。


4.最後に

このように、健康・環境有害性基準の変更は、成形品を対象外としている認可の除外条件に対する影響であるため、成形品に関する義務には特に影響はありませんが、すでにCLSや認可対象物質に指定された物質であっても、当局による物質の有害性評価等の結果を受けて新たに健康・環境有害性基準に該当することが明らかになった場合には、CLSおよび認可対象物質に反映されていきます。


(井上 晋一)


1) ECHA ニュースリリース


2) ECHA DBPに関する附属書XIV改正勧告案

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