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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

中国の環境・化学物質規制法の動向

2024年04月19日更新

中国の環境や化学物質関連規制法が最近急速に動いています。この動向を整理してみます。


1.中国の環境基本政策

中国の中長期計画は19部65章の構成される「国家経済社会開発第14次5カ年計画及び2035年ビジョン」(*1)があり、2021年3月12日に約150ページの概要が公表されています。


冒頭で、「第14次5カ年計画」期間は、我が国があらゆる面で小康社会(注:完全ではないにもかかわらず、すべての人が適切に養われている状態)を構築し、最初の100周年目標を達成した後、この状況を活用して総合的な社会発展の新たな歩みを開始する最初の5年間である。現代の社会主義国家を目指し、200周年の目標に向かって前進する。」として、第14次5カ年計画及び2035年ビジョンの位置づけを説明しています。


環境に関する基本政策のビジョンが以下のように示されています。

「第11部 グリーン開発の推進と人と自然の共生の推進」で、「 緑の水と青々とした山々は金色銀色の山であるという概念を遵守し、自然を尊重し、自然に順応し、自然を保護し、保全、保護、および自然回復を優先することを主張し、持続可能な開発戦略を実施し、生態文明の分野における全体的な調整メカニズム、および生態文明システムの構築、経済および社会発展の包括的なグリーン転換を促進し、美しい中国を構築する。」


第11部では、「第37章 生態系の質と安定性の向上」に加えて、「第38章 環境品質の継続的改善」で取り組みが示されています。

・サプライチェーン全体のプラスチック汚染の予防と管理を強化する

・主要地域や主要産業における重金属汚染の監視・早期警戒を強化する

・ 有害化学物質の環境リスク管理体制を整備し、主要地域の有害化学物質生産企業の移転・転換を完了させる

・気候変動対策のための2030年国家自主的貢献目標を実施し、2030年までの炭素排出ピーク行動計画を策定する

さらに「第39章 開発モデルのグリーン化の加速」で、新たな課題が示されています。

・循環経済の概念を実施し、多層的で効率的な資源リサイクルシステムを構築する

・ 生産企業の「逆リサイクル」モードを導入する


このように、中国の環境基本政策は、国際的な活動と整合させています。


基本政策をうけて、生態環境部は2022年7月22日に「第14次環境健康工作5か年計画」(*2)を策定し公表しています。

環境健康工作は、健全な環境を維持し、公衆衛生を保護し、環境衛生管理を強化し、国家環境リスクの予防および管理能力を向上させる「環境と人の健康の保護に関する取組み」で、国際的な取り組みとも調和されています。


この取組みは次のように実施されます。


「生態環境健康リスク評価に関する技術ガイドラインの概要」(*3)に基づき、データ品質評価や不確実性分析などの環境健康リスク評価の一般的な技術と方法について、基準と仕様を策定する。

主要な地域については、主要産業、建設プロジェクト、化学物質や汚染された土地などの健康リスクの防止と制御を目的に、特定の生態学的および環境管理のニーズを満たすため、管理適用基準および仕様を策定し、一連の環境健康リスク評価のソフトウェアツールを開発する。

健康リスクの防止と制御を制約条件として環境ベンチマーク研究を実施し、有毒および有害な汚染物質をスクリーニングして重要な管理を行い、関連基準を策定および改訂するための基礎を提供する。

新規汚染物質の環境健康リスク評価のための技術基準体系の確立を検討し、残留性有機汚染(POPs)物質、内分泌かく乱物質、抗生物質などの新規汚染物質の調査とモニタリング、有害性評価、ばく露評価、リスク特性評価などの技術的方法を研究する。


この5か年計画を受けて、中国生態環境部は、2023年10月16日に「主要新規汚染物質規制リスト(2023年版)」(公告 2023年 第32号)(*4)を発行し同日に施行しました。


上記リストに挙げられた有毒化学物質を輸出入する者は、生態環境部に「有毒化学物質の輸入(輸出)に関する環境管理リリース通知」を提出(申請)し、税関での輸出入手続きには、「有害化学物質輸出入環境管理通知書」が必要となります


2. 中華人民共和国製品品質法(中华人民共和国产品质量法)の要求

EUでは、POPs規則、REACH規則あるいはRoHS指令などで製品への化学物質含有規制がされます。しかし、これら規制法に該当しない消費者向製品はGPSR((EU)2023/988)(*5)で広く「安全な製品の販売」が要求されます。


中国では、同様に製品品質法(*6)で安全な製品要求があります。


第26条

生産者は、自ら生産した製品の品質に対し、責任を負わなければならない。

製品の品質は、次に掲げる要求に適合しなければならない。

(1)人身又は財産の安全を脅かす不合理な危険が存在しないこと。人の健康及び人身又は財産の安全を保障する国家基準又は業界基準があるときは、その基準に適合しなければならない。

(2)製品が具備すべき使用機能を具備していること。但し、製品に存在する使用機能上の瑕疵に対し説明がなされているときは、この限りでない。

(3)採用することを製品又は包装上に明記した製品基準に適合し、製品説明、実物見本等の方式で表明した品質状況に適合していること。

第35条

販売者は、国が明確に排斥を命じ、かつ、販売停止になっている製品及び効力を喪失し、又は変質した製品を販売してはならない。

第41条

製品に欠陥が存在することにより、人身又は欠陥製品以外のその他の財産

(以下単に他人の財産という。)に損害を与えたときは、生産者は、賠償責任を負わなければならない。

生産者は、次の各号のいずれかを証明できるときは、賠償責任を負わない。

(1)製品を流通にさせていない。

(2)製品を流通させた時に、損害を起こした欠陥が未だ存在していない

(3)製品を流通させた時の科学技術水準では、欠陥の存在を発見することが不可能


主要新規汚染物質規制リスト物質の含有制限が、広く要求されることになります。


2023年10月18日に「中華人民共和国製品品質法に関する意見募集に関する国家市場監督総局の通知(パブリックコメント草案)」(*7)が告示され、11月18日まで広く国民から意見を募集がされました。


草案では、原稿製品品質法が規制強化されています。

第11条 [品質・安全マネジメントシステムの構築と実施]

生産者及び販売者は、国内の製品品質・安全マネジメントシステムを確立・改善し、事業規模、製品カテゴリー、リスクレベルに適した常勤または非常勤の品質管理専門家を配置し、事後品質仕様、品質責任、および対応する評価方法を厳格に実施し、品質および安全管理を実施し、製品の品質と安全性を確保しなければならない。


第12条[品質及び安全の義務]

生産者及び販売者は、自らが生産・販売する製品に、人及び財産の安全を脅かす不当な危険がないことを確保しなければならない。 必須の基準がある場合、それらの基準を遵守するものとする。


第48条[輸出入製品の安全要件]

この法律の品質と安全の要件を満たしていない製品、または国務院の市場監督管理部門と国務院の税関監督管理当局が、人と財産の安全を危険にさらす不当な危険があることを証明する証拠があると判断した製品は輸入してはならない。

輸出された製品は、人的および財産的安全の要件を遵守し、輸入国の関連法規、行政規制、および契約条項を遵守する必要がある。


第50条:[厳格な基準要件]

国は、子供と妊娠中および授乳中の女性の健康と安全を保護するために、子供向け製品および妊娠中および授乳中の女性向けの製品の必須基準を策定します。 高齢者・障害者用品の技術基準の策定・改善を奨励し、高齢者・障害者に安全で便利な機能性用品を提供し、高齢者・障害者の合法的な権益を保護する。


第72条[欠陥品に対する不法行為責任]

商品に瑕疵があり、人または欠陥製品以外のその他の財産(以下、その他の財産といいます)に損害を与えた場合は不法行為責任を負うものとする。

生産者が次のいずれかの状況があることを証明できる場合、法律に別段の定めがない限り、不法行為責任を負わないものとする。

(1) 製品を流通させなかった場合

(2) 製品が流通した時点では、損害の原因となる欠陥がまだ存在していない場合

(3) 製品が流通する時点では、科学技術によって欠陥を発見することができない場合


第73条 [売主の賠償責任]

売主が次の各号のいずれかの行為を行った場合、売主は賠償責任を負う。

(1) 無効または劣化した商品を販売する行為

(2)修理、手直し、交換、返品、商品の数量の補填、商品およびサービスの支払いの返金、または損失の補償に関する消費者の要求を意図的に遅らせたり、不当に拒否したりすること。


第74条〔流通後に発見された製品の瑕疵に対する不法行為責任〕

商品が流通した後に瑕疵が発見され、生産者または販売者が法律に従って適時に是正措置をとらなかった場合、または是正措置が効かず損害が拡大した場合、製造者または販売者は拡大した損害について不法行為責任を負うものとする。


第75条[補償請求権]

製品の品質上の問題により他人に損害を与えた場合、被害者は生産者または販売者に補償を請求することができる。

生産者の責任であり、売り手が補償する場合、売り手は生産者から回収する権利を有し、売り手の責任であり、生産者が補償する場合、生産者は販売者から回収する権利を有するものとする。


EUのGPSRに類似した規制により調和した内容に思えます。


3.化学品の分類、表示標準の改定

GHS第8版による分類表示の規格のGB30000.1 の改定草案が、「危険物輸送用包装物に含まれる各種危険物の包装安全性に関する技術基準」など12の国家強制規格(意見募集草案)(*8))一つとして、2023年6月16日~2023年8月16日に各界から意見募集がされました。


その後、2024年3月12日~2024年4月12日に再度意見募集(*9)がされました。


GB30000.1は、GB 30000 シリーズの規格の最初の部分であり、他の 28 部分 (GB 30000.2 ~ 29) は 2013 年にリリースされました。この規格は GB 30000.2 ~ 29 と組み合わせて使用されます。 この規格の技術内容は GHS (改訂第 8 版) と一致しており、GB 30000.2~29 は GHS (改訂第 4 版) と一致しています。この規格のリリース後、GB 30000.2~29 の改訂研究作業が開始されます


4.RoHS管理規則の改定

RoHS管理規則に関しても動きがありました。

2024年1月22日に国家認証認定局( 国家认监委)が「適合性評価制度の試験方法の使用制限適用規格」(*10)を公表しました。


IEC62321シリーズの推奨性国家標準(翻訳標準)として以下が発行されました。

(注:GB〇〇〇 強制性国家標準・GB/T〇〇〇 推奨性国家標準・GB/Z 指導性国家技術文書)


GB/T 39560.1 電気電子機器中の特定物質の測定 パート 1: 概要と概要

GB/T 39560.2 電気電子機器中の特定物質の測定パート 2: 分解、分解および機械的サンプルの準備

GB/T 39560.301 電気電子機器中の特定物質の定量 パート 3-1: 蛍光 X 線分析法による鉛、水銀、カドミウム、全クロム、全臭素のスクリーニング

GB/T 39560.4 電気電子機器中の特定物質の定量 パート 4: CV-AAS、CV-AFS、ICP-OES、および ICP-MS によるポリマー、金属および電子部品中の水銀の定量

GB/T 39560.5 電気電子機器中の特定物質の定量 パート 5: AAS、AFS、ICP-OES、および ICP-MS 法によるポリマーおよび電子部品中のカドミウム、鉛、クロム、および金属中のカドミウムおよび鉛の定量

GB/T 39560.6 電気電子機器中の特定物質の定量 パート 6: ガスクロマトグラフィー質量分析 (GC-MS) によるポリマー中のポリ臭化ビフェニルおよびポリ臭化ジフェニルエーテルの定量

GB/T 39560.701 電気電子機器中の特定物質の定量 パート 7-1: 金属上の無色および着色防食コーティング中の六価クロム [Cr(VI)] を定量するための六価クロム比色法

GB/T 39560.702 電気電子機器中の特定物質の定量 第7-2部:六価クロム比色法によるポリマーおよび電子部品中の六価クロム[Cr(VI)]の定量

2024年3月1日から適用されています。


また、2023年5月29日に環境標準化に関する国家技術委員会(SAC/TC297/SC3)の有害物質測定方法に関する小委員会が、GB/T26572-2011(電子電気製品制限物質の制限量要求)を修正する会議の開催を中国電子技術標準化研究所(中國電子技術標準化研究所/中国情報産業部の組織)が公表(*11)しました。


修正は、DBP、DIDP・BBP・DEHPのフタル酸エステルを含めるものです。


なお、フタル酸エステル類は、GB/T 39560.8-2021(電気電子機器中の特定物質の定量 - パート 8: ガスクロマトグラフィー質量分析法 (GC-MS)、熱分解装置/熱脱離アクセサリを使用したガスクロマトグラフィー質量分析法 (Py/TD-GC-) によるポリマー中のフタル酸エステルMS))(*12)が発行されています。


電気電子機器の制限される含有有害物質を10物質群に拡大するもので、2024年1月26日に国家標準(GB規格)策定技術委員会が編成(*13)され、起草ワーキングメンバー募集(2024年1月29日~2月29日)(*14)が行なわれました。


このように、化学物質だけでなく、多面で国際的な取り組みと調和されています。それも、このところ急速な国際調和が進展されており、歓迎される一方で、改定情報の入手が気になるところです。


(文中の日本語訳は、機械翻訳による意訳です。解釈にあたっては原文でご確認ください。)


(松浦 徹也)


引用

*1:「国家経済社会開発第14次5カ年計画及び2035年ビジョン」


*2:「第14次環境健康工作5か年計画」


*3:「生態環境健康リスク評価に関する技術ガイドラインの概要」


*4:「主要新規汚染物質規制リスト(2023年版)公告 2023年 第32号)」


*5 :EU)2023/988


*6:製品品質法


*7:製品品質法パブリックコメント草案


*8:12の国家強制規格


*9:再度意見募集


*10:適合性評価制度の試験方法の使用制限適用規格


*11:有害物質測定方法に関する小委員会の開催


*12:GB/T 39560.8-2021


*13:国家標準(GB規格)策定技術委員会の編成


*14:起草ワーキングメンバー募集

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