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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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EU包装材と包装廃棄物に関する規則案について

2022年12月30日更新

包装材は、商品を保護・輸送するために必要なものであり、包装材の製造はEUにおける主要な経済活動となっています。 しかし、包装材に関する規制のアプローチがEU加盟国によって異なっていることは、域内市場における包装材の自由な移動の障害となっています。 さらに包装材は、EUで使用されるプラスチックの約40%、紙の約50%を占めており、包装材の使用量の増加と再利用やリサイクル率の低さが、低炭素循環型経済の発展を妨げています。


このような背景のもとで、欧州委員会は、2022年11月30日、包装材と包装廃棄物に関する規則案を公表しました。1) 今回のコラムでは本規則案制定の経緯や主な要求事項などについて説明します。


1.規則案制定の経緯

欧州グリーンディールを推進するための施策が示されている「新たな循環型経済活動計画」(2020年3月に採択)2)において、欧州委員会はEU市場の全ての包装材を2030年までに再利用またはリサイクル可能にするために、包装材及び包装廃棄物指令(94/62/EC)3)を見直し、EU市場において包装材に必要とされる要件を強化し、下記に焦点を当て、その方策を検討するとしています。


・目標の設定やその他の廃棄物発生防止策により、(過剰)包装及び包装廃棄物を削減する。

・包装材の再利用及びリサイクル可能な設計を推進する。特に再利用可能な代替物やシステムがある場合や、消費財が包装なしで安全に取り扱いできる場合には、特定の包装材の使用を制限する。

・使用される原材料やポリマーの数など、包装における複雑性の軽減を検討する。


これらの行動計画に基づいて、欧州委員会は、包装材及び包装廃棄物指令(94/62/EC)や包装材及び包装廃棄物を対象とした規制の見直しに関する開始影響評価 4)を公表し、意見募集を行いました。 その後、利害関係者との協議やインタビュー、及びいくつかのワークショップに加えて、2020年9月30日から2021年1月6日までの公開協議が開催され、一般市民や利害関係者から約500の回答を得て、一連の審査プロセスは完了しました。


2.包装材と包装廃棄物に関する規則案 5)の主な要求事項

本規則案は、全12章全65条、附属書I~XIIIで構成されています。 ここでは、主な要求事項を抜粋して説明します。


(1)包装材に含有する物質に関する要求事項(第5条)

包装材は、材料または包装の構成要素としての懸念物質の含有及び濃度を最小限に抑えるように製造しなければならないと規定しています。 これらは、包装材の廃棄や処分時における排出物及び副原料、灰または最終処分で生じるその他の材料などにおいても適用されます。


包装材または包装構成要素に含有する物質において、鉛、カドミウム、水銀、六価クロムの濃度レベルの合計は100 mg/kgを超過してはならないと規定しています。 ただし、REACH規則((EC) No 1907/2006)の付属書XVIIに定める化学物質の制限や、食品に接触することを意図した材料及び成形品に関する規則((EC) No 1935/2004)の食品接触包装に関する制限や材料、成形品ごとに個別に規定されている特定の措置(specific measures)を遵守することが求められています。


(2)リサイクル可能な包装材(第6条)

すべての包装材は、リサイクル可能であることが要求されています。「リサイクル可能」の定義は以下の通りです。


(a)リサイクルのために設計されたものであること。

(b)効果的かつ効率的に分別収集されるものであること。

(c)他の廃棄物の再利用に影響を与えることなく、定められた廃棄物処理の流れに分別されること。

(d) リサイクルで得られる二次材料が一次材料を代替するために十分な品質を持つこと。

(e)規模に応じてリサイクルができること。


(a)は2030年1月1日から、(e)は2035年1月1日から適用されると規定しています。


包装材のリサイクル性評価のためのカテゴリとパラメータとして、附属書II表1で包装材、種類、区分の一覧表が示され、表2で単位重量あたりのリサイクル性評価が示されています。


表2では単位重量あたりのリサイクルが可能な割合を性能等級A(95%以上)から性能等級E(70%以下)まで分類されていますが、性能等級E(70%以下)は2030年1月1日以降、リサイクル可能な包装材とみなされないと規定しています。


上記(e)について、欧州委員会は附属書II表1で示された包装材の種類ごとに、規模に応じて包装材がリサイクル可能であるかを評価するための方法を確立しなければならないと規定しています。 これは上市された包装材の量や廃棄量、リサイクル率などに基づいて決められるとしています。


(3)プラスチック包装材の最低リサイクル率(第7条)

2030年1月1日以降、包装のプラスチック部分は、消費後の廃棄物から包装単位当たりに回収された以下の最低リサイクル含有率を要求しています。


(a) ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とする接触型包装材は、30%とする。

(b) PET 以外のプラスチック材料から作られた接触型包装材(飲料用ペットボトルを除く)は、10%とする。

(c) 単回使用の飲料用プラスチックボトルについては、30%とする。

(d) (a)、(b)及び(c)以外のプラスチック製包装材については、35 %とする。


さらに2040年1月1日以降は、最低リサイクル含有率が以下のように引き上げられます。


(a) 接触型包装材(飲料用ペットボトルを除く)については、50%とする。

(b) 単回使用の飲料用プラスチックボトルについては、65%とする。

(c) (a)及び(b)以外のプラスチック製包装材ついては、65%とする。


ただし、これらの規定は一部の医薬品や医療機器の包装材、または堆肥化可能な包装材には適用されないとしています。


(4)堆肥化可能な包装材(第8条)

お茶のティーバッグ、カプセル式コーヒーメーカーに使用されるカプセル、果物及び野菜に貼られた粘着ラベル、ならびに軽量プラスチック製キャリアバッグは、バイオ廃棄物処理施設において工業的に制御された条件で、堆肥化が可能であることが要求されています。


なお、附属書IIIにおいて、堆肥化可能な包装を義務付ける際に考慮すべき条件が規定されています。


(5)包装材の最小化(第9条)

包装材は、その重量及び体積が、包装材の材料を考慮して、その機能を確保するために必要最小限の量になるように設計されなければならないと規定されています。


また、製品の知覚的体積を増加させることのみを目的とした包装は、その包装デザインがEU法に基づき保護される原産地表示の対象とならない限り、市場流通が禁止されます。 このような包装については、附属書IV(パッケージ最小化評価の方法論)に定める性能基準のいずれにも適合する必要のない包装、二重壁、偽底、不必要な層などが明示されています。


3. まとめ

包装材と包装廃棄物に関する規則案が公表されると同時に、本規制における質問と回答 6)も公開されました。 このなかで、「本規則は、気候変動への取り組み、汚染の削減、欧州グリーンディール目標に対してどのように貢献するのか?」という質問に対して、試算した環境面の効果について回答しています。


2030年の現状予測される包装材による温室効果ガス(greenhouse gas:GHG)排出量は6,600万トンであるのに対し、すべての措置が適用された場合4,300万トンにまで削減され、経済・社会における環境破壊のコストは、ベースラインである2030年と比較して64億ユーロが削減されると試算されています。


さらに、包装材全体のリサイクル率を2018年の66.5%から2030年には73%に高めることで、埋め立ては18.7%から9.6%に減少すると説明されています。 また、リサイクル材に関する措置だけでEUが必要とする化石燃料を年間310万トン削減できる(現在プラスチック包装材の生産に必要な化石燃料の約25%)と試算されています。


今回公表された規則案は現行の包装廃棄物指令(94/62/EC)と比較すると要求事項が複雑化しているものの、EU域内市場でうまく運用されていくことにより、経済と環境の両面で大きな成果が期待されています。



(柳田 覚)



1)包装材と包装廃棄物に関する規則案公表のプレスリリース


2)新たな循環型経済活動計画


3)包装材及び包装廃棄物指令(94/62/EC)


4)規制の見直しに関する開始影響評価


5)包装材と包装廃棄物に関する規則案


6)包装材と包装廃棄物に関する規則における質問と回答


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