top of page

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

採択された新たなEU電池規則について(その2)

2023年09月29日更新

前回のコラム 1)では、2023年8月17日に発効となった電池および廃電池に関する規則(EU) 2023/1542 2)の全体像や以下のような主要な要求事項について説明しました。

・電池の適用範囲(第1条)

・電池のカーボンフットプリント(第7条)

・電池のリサイクル率(第8条)

・電池の性能と耐久性要件(第9条,・第10条)

・電池の取り外しと交換(第11条)


今回のコラムでは本規則の特徴的な要件である第13条(電池の表示とマーキング)ならびに第VII章:電池のデューデリジェンス方針に関する経済事業者の義務、第VIII章:廃電池の管理、第IX章:デジタル電池パスポートなどの主な要求事項を説明します。


1.EU電池規則の主な要求事項(前回の続き)


(1)電池の表示とマーキング(第13条)

電池の表示とマーキング(第13条)は、電池の表示内容や形式を規定しており、電池指令2006/66/EC 3)の第21条における表示の要件を大幅に拡大したものです。


(1-1)ラベルの内容

欧州委員会は、2025年8月18日までに、電池における表示要件の統一仕様を確立する実施法を採択するとしています。 これに伴い、2026年8月18日、または前の実施法の発行日から18ヶ月後のいずれか遅い期日以降、電池には、附属書VIのパートAに規定されている電池の一般情報を含むラベルを貼ることが要求されています。


また、電池の種類別の表示要件も規定されています。同期日以降、充電式携帯用電池、LMT用電池、およびSLI用電池は、容量に関する情報を含むラベルを貼ることが要求され、非充電式携帯用電池は、特定の用途に使用された場合の最短平均持続時間に関する情報および「非充電式」を示すラベルを貼ることが要求されています。


附属書VIのパートAには以下のような項目が明示されています。


1.製造事業者を特定する情報(自社の名前、住所、WEBアドレスなど第38条7項に従う)

2.電池のカテゴリーおよび電池を特定する情報(モデルの識別、シリアル番号など第38条6項に従う)

3.製造場所(電池製造工場の地理的位置)

4.製造年月日(月と年)

5.重量

6.容量

7.化学的特性

8.水銀、カドミウム、鉛以外の電池に含まれる有害物質

9.使用可能な消火剤

10.重量比 0.1%以上の濃度で電池に含まれる重要な原材料


(1-2)分別収集シンボル

2025年8月18日以降、すべての電池には、付属書VIのパートBに示されている、電池の分別収集のシンボル (分別収集シンボル)を付けることが要求されています。 分別収集シンボルは、電池指令2006/66/ECの附属書IIに規定されているシンボルと同じものです。


分別回収シンボルは、電池の最も大きな辺の面積の少なくとも3%(最大5×5cm)をカバーする必要があります。(円筒形の電池セルの場合、電池の表面積の少なくとも1.5%をカバー)電池の大きさが0.47×0.47cmより小さい場合には、電池自体に分別収集のシンボルの表示することは免除されますが、少なくとも1×1cmの分別回収シンボルを包装に印刷することが要求されています。


また、0.002 %を超えるカドミウムまたは0.004 %を超える鉛を含む電池には、分別回収シンボルの下に該当する金属の化学記号CdまたはPbを表示する必要があります。 これらの化学記号は、分別回収シンボルの少なくとも4分の1のサイズの領域をカバーしなければなりません。


(1-3)QRコード

2027年2月18日以降、すべての電池には、附属書ⅥのパートCに示されている、QRコードを表示することが要求されています。 QR コードは、以下の情報にアクセスできる必要があります。


・ LMT用電池、容量が2kWhを超える産業用電池および電気自動車用電池については、第77条に従った電池パスポート


・その他の電池については、本条のラベルや分別収集シンボルの規定で要求される情報、EU適合宣言(第18条)、デューデリジェンス方針に関する報告書(第52条3項)、および廃電池の予防と管理に関する情報(第74条1項)


・SLI用電池の場合、廃棄物から回収され、電池内の活物質に含まれるコバルト、鉛、リチウムまたはニッケルの量


ラベルおよびQR コードは、見やすく、読みやすく、かつ消えないよう電池に印刷または刻印する必要があります。 電池の性質や大きさにより印刷や刻印ができない(保証されない)場合、ラベルおよびQRコードは、包装または電池に添付する書類に貼付することが認められています。


(2)電池のデューデリジェンス方針に関する経済事業者の義務(第VII章)

電池のデューデリジェンス方針に関する経済事業者の義務(第VII章)は、電池の上市または使用を開始する経済事業者に対するデューデリジェンス義務や方針、評価に関する規定を定めており、本規則が草案から正式に法制化するなかで、最も内容が拡充された部分です。


(2-1)電池のデューデリジェンス方針

2025年8月18日以降、電池を上市または電池の使用を開始する経済事業者は、デューデリジェンス義務(第48条2項、第48条3項、第49条、第50条、第52条)を履行するために、電池のデューデリジェンス方針を定め、実施することが要求されています。


さらに上述の経済事業者は、デューデリジェンス義務(第49条、第50条、第52条)の履行のための活動、プロセスおよびシステムなど(第51条1項に規定される項目)を対象として、認証機関による第三者検証を受けることが規定されています。


認証機関は、実施された活動やその結果を記録した検証報告書を発行し、さらに電池デューデリジェンス方針が第49条、第50条および第52条に定める義務を満たす場合、認証機関は承認決定書を発行します。


(2-2)電池デューデリジェンス方針の第三者認証機関による検証と監査

第48条2項では、前述の経済事業者が電池のデューデリジェンス方針を認証機関により第三者検証をさせることが規定されています。 さらに、その方針が後述の第49条、第50条および第52条に従って、維持、適用されていることを確認するために、認証機関による定期的な監査を受けることが要求されています。 なお、認証機関は、監査を受けた経済事業者に監査報告書を提出するとされています。


(2-3)電池デューデリジェンス義務の履行を証明する文書の保管

第48条3項では、前述の経済事業者が、後述の第49条、第50条および第 52 条に規定する義務の履行を証明する文書(検証報告書および承認決定書ならびに前述の監査報告書など)を、電池デューデリジェンス方針に基づき製造された最後の電池が上市された後、10 年間保管することが要求されています。


(2-4)経済事業者の管理体制(第49条)

第49条では、前述の各経済事業者は、管理体制として以下を行うことを規定しています。


(a)附属書Xの1項における原材料、および2項における関連する社会的および環境的リスクの分類に関して、企業の電池デューデリジェンス方針を採用し、サプライヤーや公衆に明確に伝達する。


(b)附属書X の4項における国際的に認知されたデューデリジェンス手法に定める基準に整合する基準を電池デューデリジェンス方針に盛り込む。


(c)電池デューデリジェンス方針を監督する責任を経営トップに負わせ、その方針を支える内部管理システムを構築したうえで、そのシステムの記録を最低10年間維持する。


(d)サプライチェーンの上流関係者を特定し、管理の連鎖(Chain of Custody)またはトレーサビリティシステムを含む、サプライチェーンに関する管理と透明性のあるシステムを確立し、運用する。(そのシステムには、少なくとも第49条2項で規定されている原材料に関する情報を提供する文書で捕捉される必要がある)


(e)サプライヤーとの契約や合意に、リスク管理措置を含む電池デューデリジェンス方針を組み込む。


(f)早期警戒リスク認識システムおよび是正メカニズムを含む苦情処理メカニズムを確立する。または他の経済事業者や組織との協力協定を通じて、またはオンブズマン等の外部専門家や外部機関への情報提供を促進することにより、そのようなメカニズムを提供する。


(2-5)リスク管理の義務(第50条)

第50条では、前述の経済事業者が管理計画の一環として、附属書Xの2のリスク分類(社会的および環境的リスクの分類)に関連するサプライチェーンの悪影響を有するリスクを特定し、評価することが要求されています。


これには、第49条に従って提供された情報や公に入手可能で、利害関係者から提供されたその他の関連情報を基礎として、自社の電池デューデリジェンス方針を参照することが含まれます。 そのうえで、その経済事業者は、特定されたリスクに対応するための戦略を策定し、実施する必要があります。


また、その経済事業者は、そのサプライチェーンにおいて、附属書 Xの2項のリスク分類(社会的および環境的リスクの分類)における悪影響の可能性も特定し、評価することが要求されています。さらに、認証機関によるデューデリジェンスチェーンの第三者検証を実施しなければなりません。


(2-6)電池デューデリジェンス方針に関する情報の開示(第52条)

第52条では、前述の経済事業者が、加盟国の市場監視当局または国家当局の要請に応じて、発行された検証報告書および承認決定書、監査報告書、ならびに欧州委員会が認めたデューデリジェンス制度に適合している入手可能な証拠を提供することを求めています。


また、その経済事業者は、事業上の秘密およびその他の競争上の懸念に十分配慮しつつ、その電池デューデリジェンス方針に従って入手し、維持するすべての関連情報を、その直属の川下購入者が入手できるようにする必要があります。


さらに、年1回、電池デューデリジェンス方針に関する報告書を見直し、インターネットを含めて、一般に公開することが求められています。 その報告書には、エンドユーザーにとって理解しやすく、関係する電池を明確に特定する方法で、その経済事業者が、上記の第49条および第50条に定められた要件に適合するために講じた措置に関するデータ、および情報を含む必要があります。


(3)廃電池の管理(第VIII章)

廃電池の管理(第VIII章)は、電池の回収、処理およびリサイクルに関連する義務が規定されており、循環型経済を実現するうえで、最も重要な規定が定められています。


(3-1)生産者に関する要件

加盟国は、生産者の本章における要件の適合を監視するために生産者登録簿を確立することが規定されています。(第55条)


生産者とは、遠隔契約による場合を含め、販売手法に関係なく、加盟国内で自らの名称または商標の下で、電池(機器や車両に組み込まれた電池を含む)を製造、供給する製造業者、輸入業者、販売業者、またはその他の自然人または法人などを意味します。定義の詳細は、第3条(47)にて説明されています。


また、生産者は、加盟国の領域内で初めて利用可能となる電池について、拡大生産者責任を負い、廃棄物枠組み指令2008/98/EC 4)の第8条、第8a条ならびに本章の要件に適合することが求められています。(第56条)


拡大生産者責任義務の履行に関しては、管轄当局に認可を得ることが求められています。(第58条)加盟国の領域内で初めて市場で入手可能となる電池の量に対して、実施する措置が十分であることや電池の回収システムなどの要件が遵守され、回収目標値を達成し、かつ持続的に維持することを可能にするすべての取り決めが整っていることが実証された場合に認可が付与されるとしています。


さらに、生産者は、生産者に代わって拡大生産者責任の義務を履行させるために、(第58条に従って認可された)生産者責任組織を指名することができます。(第57条)加盟国は、生産者責任組織の選任を義務付ける措置を採用することができますが、そのような措置は、上市される電池の特定カテゴリーの特性および関連する廃棄物管理の特性に基づいて正当化されなければなりません。


(3-2)生産者登録簿

生産者は、電池を初めて上市する各加盟国に登録申請書を提出し、上記生産者登録簿に登録することが求められています。生産者、または認可されている場合には、拡大生産者責任の権限を有する代表者が加盟国の市場で登録されている場合に限り、その生産者による電池(電化製品、軽輸送手段またはその他の車両に組み込まれたものを含める)は、加盟国の市場で入手可能となります。


登録申請書で要求される情報は、生産者の名称、所在地といった生産者に関する情報、加盟国内の市場で初めて利用可能にする予定の電池のカテゴリー、電池の回収に関わる情報など第53条3項に規定されています。


(3-3)各カテゴリーの廃電池における回収義務

携帯用電池またはLMT用電池の生産者または指名された生産者責任組織(第57条1項)は、その性質、化学組成、状態、ブランドまたは原産地に関係なく、電池を初めて利用可能とする加盟国の領域で、すべての携帯用廃電池またはLMT用廃電池を無償で分別回収することが要求されています。


携帯用廃電池の回収要件については、第59条、LMT用廃電池の回収要件については、第60条で規定されています。それぞれ分別回収の手法(1項)、引き取り回収システムの要件(2項)などが規定され、3項で以下のようにそれぞれの電池の達成されるべき回収目標が設定されています。


・携帯用廃電池の回収目標

(a)2023年12月31日までに45 %

(b)2027年12月31日までに63 %

(c)2030年12月31日までに73 %


・LMT用廃電池の回収目標

(a)2028年12月31日までに51 %

(b)2031年12月31日までに61 %


同様にSLI用電池、産業用電池、電気自動車用電池の回収要件については、第61条で規定されています。 SLI用電池、産業用電池、電気自動車用電池の各生産者または指名された生産者責任組織(第57条1項)は、その性質、化学組成、状態、ブランドまたは原産地に関係なく、電池を初めて利用可能とする加盟国の領域で、すべてのSLI用廃電池、産業用廃電池、電気自動車用廃電池を無償で分別回収することが要求されています。


そのために、上記生産者または指名された生産者責任組織(第57条1項)は、エンドユーザーまたは回収拠点を含む回収システムからSLI用廃電池、産業用廃電池、電気自動車用廃電池を引き取ることを規定しています。 なお、回収拠点を含む回収システムは以下の機関と協力して設置するとしています。


・各電池の販売業者

・再製造または再利用を行う事業者

・廃電気電子機器および使用済み自動車処理施設

・公的機関または廃棄物管理を代行する第三者


(3-4)廃電池の処理、リサイクル効率と材料回収の目標

第70条では、回収された廃電池を廃棄またはエネルギー回収の対象とすることを禁止しています。 また、処理施設は、廃電池の処理が、附属書XIIのパートAおよび利用可能な最良の技術(産業排出指令2010/75/EU  5) 第3条(10)に定義される)に最低限、適合することが求められます。


リサイクル事業者は、以下に示すリサイクル効率の目標値(附属書XIIパートB)および物質回収の目標値(附属書XIIパートC)をそれぞれ達成することが要求されています。


附属書XIIパートB:リサイクル効率の目標

〈1〉遅くとも2025年12月31日までに、少なくとも以下のリサイクル効率の目標を達成しなければなりません。


(a)鉛蓄電池の平均重量の75%

(b)リチウムベース電池の平均重量の65%

(c)ニッケルカドミウム電池の平均重量の80%

(d)その他の廃電池の平均重量の50 %をリサイクル


〈2〉遅くとも2030年12月31日までに、少なくとも以下のリサイクル効率の目標を達成しなければなりません。

(a)鉛蓄電池の平均重量の80%

(b)リチウムベース電池の平均重量の70%


附属書XIIパートC:材料回収の目標

〈1〉遅くとも2027年12月31日までに、少なくとも以下の材料回収目標を達成しなければなりません。

(a)コバルトの90 %。

(b)銅の90 %。

(c)鉛の90%

(d)リチウムの50%。

(e)ニッケルの90%。


〈2〉遅くとも2031年12月31日までに、少なくとも次の材料回収目標を達成しなければなりません。

(a)コバルトの95 %。

(b)銅の95 %。

(c)鉛の95 %。

(d)リチウムの80%。

(e)ニッケルの95%。


なお、欧州委員会は、2025年2月18日までに、附属書XIIのパートAに従い、リサイクル効率、材料回収率の算定および検証の方法ならびに文書の様式を定めることにより、本規則を補足する委任法を採択するとしており、リサイクル効率および材料の回収率は、その委任法に定められた規則に従って算出されるとしています。


(4)デジタル電池パスポート(第IX章)

デジタル電池パスポート(第IX章)は、電池固有の情報を電子的に記録するもので、本章では、必要とされる情報と技術仕様の要件が規定されています。 それぞれの電池における固有の情報を電池自体に紐づけることは、将来的に市場で電池を有効かつ効率的に使用するために必要な要素といえます。


2027年2月18日以降、上市または使用を開始する個々のLMT用電池、容量が 2 kWhを超える産業用電池、および電気自動車用電池には、電子記録 (電池パスポート)を付与することが求められています。 本規則では、電池パスポートの内容に関する要件を第77条に、電池パスポートの技術設計と運用に関する要件を第78条にそれぞれ規定しています。


電池パスポートに記録しなければならない情報は附属書XIIIに規定されています。附属書XIIIは情報にアクセスできる対象者を限定することを目的として、以下のように4つのグループに区分されています。


〈1〉電池モデルに関連する一般にアクセス可能な情報

電池の一般的な情報(性能、材料組成など)のほか、カーボンフットプリントに関する情報(第7条1・2項)、電池のデューデリジェンス方針に関する報告書に示されている責任ある調達に関する情報(第52条3項)、リサイクル内容に関する情報(第8条1項)、マーキング要件(第13条3・4項)、EU適合宣言(第18条)廃電池の予防および管理に関する情報(第74条1項)など


〈2〉正当な利害関係者および欧州委員会のみがアクセスできる電池モデルに関する情報

正極・負極・電解液に使用される材料を含む詳細な組成、部品の部品番号と交換スペアの供給元の連絡先、解体情報、安全対策など


〈3〉認証機関、市場監視当局および欧州委員会のみがアクセスできる情報

本規則または本規則に従って採択された委任法もしくは実施法に規定された要求事項への適合を証明する試験報告書の結果


〈4〉正当な利益を持つ者のみがアクセスできる個々の電池に関する情報およびデータ

電池が上市された時および電池の状態が変更された時の性能および耐久性パラメータの値(第10条1項)、電池の健全状態に関する情報(第14条)、「オリジナル」、「再利用」、「再製造」、「廃棄物」と定義された電池の状態に関する情報、使用から生じる情報とデータなど


なお、2026年8月18日までに、欧州委員会は、本条の目的上、附属書XIIIの〈2〉および〈4〉における正当な利益を有するとみなされる者を特定し、ならびに情報のアクセス範囲、また、情報アクセスの程度(ダウンロード、共有、公表および再利用など)を規定する実施法を採択するとしています。


電池パスポートは、第13条におけるQRコードを通じてアクセスを可能とする必要があり、このQRコードは、電池を上市する経済事業者が付与しなければならない固有の識別子(電池を識別するための固有の文字列)にリンクすることが規定されています。


再使用・再利用の準備、再利用または再製造の対象となった電池は、元の電池の電池パスポートにリンクされた新しい電池パスポートを付与される必要があります。 いっぽう、電池がリサイクルされたときは、その電池パスポートは消滅します。


2.まとめ

全2回に渡って、EU電池規則の主要な要求事項を整理しました。 2023年8月17日の欧州委員会によるEU電池規則発効のニュースリリース 6)でも説明されているように、EU電池規制は、将来的に二酸化炭素排出量が少なく、有害物質の使用を最小限に抑え、EU域外からの原材料の使用量を削減し、EU内で高度に回収、再利用、リサイクルされる電池を確保していくものです。 これは、循環型経済への移行を支援し、原材料とエネルギーの供給安定性を高め、EUの戦略的自立性を高めることに繋がるとしています。


今回取り上げた電池の表示とマーキング、電池パスポートといった要件は、QRコードを用いるデジタル化の流れもあり、電池に関する多種多様な情報が要求されています。 規制の開始時期には、それぞれ数年の猶予があるものの、それぞれの内容を確認し、しっかりと準備を行っておくことが肝要だと思われます。 また、電池パスポートは、今後改定が予定されている他のEU法規制においても、同様の要件が盛り込まれることが見込まれているため、それらを理解するうえでも重要な規定と考えられます。


(柳田 覚)


【参考情報】

1)採択された新たなEU電池規則について(その1)(2023年08月25日コラム)


2)電池および廃電池に関する規則(EU) 2023/1542


3)電池指令2006/66/EC


4)廃棄物枠組み指令2008/98/EC


5)産業排出指令2010/75/EU


6)2023/8/17欧州委員会のニュースリリース



閲覧数:5,709回

最新記事

すべて表示

労働安全衛生法における保護具使用の考え方について(その2)

2024年07月26日更新 前回(その1)では、有害物質の呼吸器からの吸入による吸入ばく露の低減のための呼吸用保護具について概説しましたが、今回は有害性の液体あるいはその飛沫の皮膚や眼への接触による経皮ばく露の低減のための皮膚障害等防止用保護具および現在進められている安衛法関連の改正に伴い新たに導入された保護具着用管理責任者について説明します。 2. 皮膚障害等防止用保護具 2-1.特別規則によっ

TSCA PFASの報告に関する新FAQについて

2024年07月19日更新 PFASに関する環境汚染に関する報道は多く、法規制も強化されています。最近は、リチウムイオン電池(*1)や液晶(*2)にPFASが使用されているなど用途に関する報道が多くなってきています。 PFASの全面禁止はできるか、エッセンシャルユースを認めるかなど用途に関連することに関心が集まってきています。 ことにアメリカのPFAS規制が厳しく思え、お問い合わせも増えています。

近年のミネソタ州法における含有物質規制の動向について

2024年07月05日更新 米国では、有害化学物質の規制に関してTSCAなど連邦法で規制されていることは多く知られていますが、各州法においてもさまざまな規制が行われています。今回のコラムでは、近年施行されたミネソタ州の含有物質規制法のうち、消費者製品中の鉛およびカドミウムの含有禁止法と意図的なPFAS含有製品の禁止法をご紹介します。 1.消費者製品中の鉛およびカドミウムの含有禁止法(§325E.3

© 2011-2023  一般社団法人東京環境経営研究所

  • Facebook - White Circle
  • YouTube - White Circle
  • アマゾン - ホワイト丸
bottom of page