2021年04月09日更新
【質問】
病院向け医療機器のメーカーです。 製品は一般消費者向けではありませんが、プロポジション65の対象となるでしょうか。
【回答】
プロポジション65(Proposition65 Safe Drinking Water and Toxic Enforcement Act of 1986)は、1987年1月に施行されたカリフォルニア州法です(以下「本法令」とする) 1)。 発がん性や生殖毒性があると認められている化学物質(“The Proposition 65 List”(以下「同List」とする)2))を、事業を行う過程で、個人(Person)に「明確かつ合理的な警告を与えることなく」故意かつ意図的にさらすことを禁じています。
この警告表示要件の免除規定(§25249.10)(c)にばく露要件があります3)。(以下要旨)
・がんを引き起こすことが知られている物質について、生涯ばく露を仮定して重大なリスクをもたらさないこと
・生殖毒性を引き起こすことが知られている物質について、そのばく露が観察可能な影響を及ぼさないこと
この物質とレベルが、§ 25705.重大なリスクを引き起さない特定の規制レベル(セーフハーバーレベル)として告示されています 4)。
カルフォルニア規則集Title22§12000に追加手続きが規定されています。
追加手続きの§12713(食品、薬物、化粧品、医療機器へのばく露)で、「食品、医薬品、化粧品、または医療機器」に含まれる化学物質は重大なリスクをもたらさないと規定しました 5)。
前提や条件はありますが、「食品、医薬品、化粧品、または医療機器」は§ 25705の規制対象外などの誤解が拡がり、改定要求がでました。これを受ける形で§12713は削除されました 6)。
このように基本的に当初から医療機器は本法の対象とされています。
一方、FDA(米国食品医薬品局:Food and Drug Administration)の認証医療機器は、ISO10993などに基づき、医療機器の意図する使用または意図する目的および安全性に関する特質を明確化し、既知または予見できるハザードを特定し各ハザードのリスクを推定して算出しています。
このことから両者の推定方法は異なることが理解できます。
また、本法令には、いくつかの医療機器等に関する警告表示に関連する規定があります。例えば、§25607.7は、処方薬ばく露と救急医療または歯科医療ばく露警告 7)です。
患者に意識がないなどの場合は、インフォームドコンセント(「医師と患者との十分な情報を得た(伝えられた)上での合意」)は無くても施術可能としています。 逆に捉えますと、ばく露前の警告が通常は必要と解釈できます。医療機器による同List収載の物質のばく露がある場合は警告表示が必要になります 8)。
なお、Advanced Medical Technology Association (医療機器および診断器メーカーを代表する世界最大の業界団体)から、FDA認証医療機器に対する本法令の規制には疑義があるという申し入れがあります9)。
本法令では、患者に直接使用される医療機器は患者へのばく露前警告対象となる可能性があることに対して、今後の対応を要求しています。
また、米国内の大手医療機器製造者のホームページなどで、本法令への対応について掲載している場合がありますので、企業としての対応の参考となります。
医療機器に同リストに収載される物質を含有する製品をカリフォルニア州に輸出する場合には、このリストに収載されている当該物質のばく露量がセーフハーバーレベルを超える場合に警告表示の義務が生じます。 警告表示の方法と内容については本サイトのQ555およびQ570に収載しておりますのでご参照ください。
1)The Proposition 65法令
2)The Proposition 65 List
3)§25249.10
4)§ 25705. Specific Regulatory Levels Posing No Significant Risk.
5)
6)TITLE 22 CALIFORNIA CODE OF REGULATIONS DIVISION 2
7)section 25607.7 Prescription Drug Exposure and Emergency Medical or Dental Care Exposure Warnings
8)section 25607 Specific Product, Chemical and Area Exposure Warnings.
9)
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