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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

TSCAにおけるPFASのフレームワークについて

2023年08月11日更新

ペルフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質 (PFAS)に対する規制は、これらの物質が洗剤、繊維、皮革、紙および塗料、プラスチック、泡消火器など幅広い用途に使用されていることもあり大きな関心を集めています。 また、関係者の関心が高い理由の一つにPFASが物質群に対する名称であり、どこまでがPFASに該当しどのような対応が必要となるか不明確な点があげられます。 このような状況の中、米国環境保護庁(EPA)は新規化学物質プログラムとして新規PFASまたは既存のPFASの重要な新規使用について、適切な決定を下せるようにするためのフレームワーク(PFAS フレームワーク)を公表しました(*1)。 本コラムでは今後のTSCAにおけるPFAS規制の指針の一つとなると考えられるPFASフレームワークについて取り上げてみます。


◆PFAS フレームワークの内容

公表されたEPAによるPFAS フレームワークは、以下に記載するA~Cの3つから構成されています。


A:PFASの特定

PFASは物質群に対する名称であり、その定義は規制当局により異なるケースが考えられます。 EPAはPFAS フレームワークにおいて、PFASを以下の3つの構造のうち少なくとも1つを含む化学物質に該当する物質として定義しています。



PFASの定義に関してEUが制限提案で公表している内容(*2)と比較して、フッ素化されたメチル基(CF3)またはメチレン基(CF2)を必ず1つ構造中に含むという考え方は共通しています。 ただし、その結合相手に関する内容で異なる部分もあり、一つの物質に対してEUと判断が異なるケースも想定されるため注意が必要といえます。


また、フッ素テロマーアルコールなどはPFASに該当しますが、自然環境によりさらに有害で安定的なPFASに転換されることが示されています。 TSCA第5条に基づく製造前通知(PMN)または重要な新規使用通知(SNUN)に関連したPFASを審査する際には物質自体を考慮するだけでなく、潜在的な代謝物や分解物にも焦点を当てる必要があるとしています。


B:入手可能な危険情報の評価とPFASのPBTステータスの決定

EPAが製造前通知(PMN)または重要な新規使用通知(SNUN)として提出された物質がPFASであると結論付け、対象となる主要成分を決定した場合、提出されたPFASに対してP(persistent/難分解性)、B(bioaccumulative/高蓄積性)、T(toxic/毒性)に関するPBT判定を行い、情報が不足している場合には試験のニーズについて検討します。 PBTの判定は1999年のPBT政策声明 (64 FR 60194)および2018年の「TSCA新規化学物質届出書作成時の留意点」(*3)で行われます。


C:PFASへの曝露の評価

PFAS (その代謝物または分解物を含む)がPBTであることが判明した場合、これらの化学物質は時間の経過とともに環境中に残留し蓄積していきます。 したがって、意図された使用条件を考慮して、潜在的に暴露される可能性があるまたは影響を受けやすい部分集団 (消費者、労働者など)、一般人口、および/または環境に暴露される可能性があるかどうかを判断していきます。

PBTであると判定されたPFAS (その代謝物または分解物を含む) の場合、環境への放出と労働者の曝露の両方が評価されます。 ただし、ライフサイクル全体を通じた一般人口、消費者、環境への潜在的な曝露の程度を定性的に検討しますが、定量的な評価は実施しないとしています。 理由としてEPAはPBTと判定されるPFAS(その代謝物または分解物を含む)は時間の経過とともに残留し生体蓄積するため、その時点での定量的な情報はこれらの化学物質によってもたらされる全体的な環境および人間の健康リスクを正確に反映するものではないということをあげています。 一方で、PBTと判断されないPFASは他の新規化学物質と同様の評価プロセスを経て、必要に応じて EPA が定量的なリスク評価を実施します。 ただし、EPAは現状でほとんどのPFASがPBTと判断されるだろうと予想しています。


EPAはPFASに関するPMNおよびSNUNが提出された場合、TSCAに基づいて審査し、新しい化学物質または重要な新規使用のリスクに関する所見を作成します。 リスクを合理的に見積もるのに情報が不十分または大量に生産されている物質で人体および環境への重大な暴露が存在する可能性があると判断された場合、情報進展待ちの規定である第5条(e)に基づいた命令が発行されます。 第5条(e)に基づいた命令には追加のテスト要件が含まれることがあります。 物質または重要な新たな使用には不当なリスクが伴うとされた場合、不当なリスクに対する保護の規定である第5条(f)に基づいた命令または第6条(a)に基づいてリスクから保護するための制限を課す直ちに有効な規則案が発行されます。 物質または重要な新規使用が不当なリスクを引き起こす可能性が低い場合は、提出者にその結果が通知され連邦官報にて公表されるプロセスとなっています。


◆まとめ

今回公表されたPFAS フレームワークは、EPAが提出された新規PFASまたは既存のPFASの重要な新規使用に対し、以下のプロセスで規制を検討していくことを示しています。


(i)PFASに該当する物質かを特定

(ii)PFASに該当する場合、PBTか否かを判断

(iii)PBTの判断結果および使用時などの曝露状況で規制内容を決定


米国においてフッ素化合物を取り扱う企業関係者におかれましては、上記内容を踏まえTSCAへ対応していくことをお勧めいたします。


(*1) TSCAにおけるPFASに関するフレームワーク


(*2 )ECHA PFAS類の制限提案


(*3) TSCA新規化学物質届出書作成時の留意点


(長野 知広)


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