top of page

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

カリフォルニア州とワシントン州のより安全な消費者製品(Safer Consumer Product)に関する取組み

2023年11月10日更新

米国では有害物質規制法(TSCA)などの連邦法に加え、各州がそれぞれ州法という形で州独自の化学物質規制を課すケースがあります。特に消費者製品を対象とした化学物質規制はその傾向が顕著であると思います。

今回は、特定用途に限らず、幅広い消費者製品を対象に有害化学物質の含有をなくすことを目的とし、有害化学物質と優先製品を特定し、必要に応じて規制化を図る州法として、カリフォルニア州の「より安全な消費者製品(SCP)」とワシントン州の「ワシントン州のより安全な製品(SPW)」の取組みについて概要をご紹介します。


1.カリフォルニア州の「より安全な消費者製品(SCP)」1)

カリフォルニア州では、2013年により安全な消費者製品規則(SCPR)が制定2)され、その取り組みが開始されました。

SCPRは次の4つのステップで取組みが進められています。

(1)候補化学物質の特定

プロポジション65やEU CLP規則附属書VI、REACH規則の認可候補リスト収載物質(CLS)などの各種物質リストに収載されている、または毒性学的エンドポイントに基づき当局が指定する物質が候補化学物質として特定され、定期的に更新されています。

(2)優先製品の特定

カリフォルニア州で販売される消費者製品のうち、第1ステップで特定した候補化学物質を1種以上含有し、広範囲に利用されるなど消費者のばく露への影響がある製品などから優先製品が特定され州法が改正されます。優先製品の特定にあたっては、1回/3年の頻度で優先製品作業計画が策定され、その計画に基づき、特定が進められています。

現時点の優先製品は次の7製品です。

・2017年7月1日施行:りん酸トリス[1‐(クロロメチル)‐2‐クロロエチル(TDCPP)またはトリス(2-クロロエチル)=ホスファート(TCEP )を含有する子供用のスポンジ状寝具

・2018年7月1日施行:未反応メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)を含むスプレーポリウレタンフォーム

・2019年1月1日施行:塩化メチレンを含有する塗料・ニス剥離剤

・2021年7月1日施行:ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS類)を含むカーペットおよびラグ

・2022年4月1日施行:PFAS類を含む織物または皮革製品用処理剤

・2023年1月1日施行:トルエンを含むネイル製品

・2023年10月1日施行:N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミン(6PPD)を含む自動車用タイヤ

優先製品に特定されると同製品の製造者・輸入者・販売者等に対して60日以内に優先製品届出(PPN)の提出が求められます。

(3)代替分析

PPNを提出した製造者等は今後の製品対応に関して、次のような届出や報告書等を提出することが求められます。

・製品中から該当する有害化学物質を廃絶する旨の届出

・製品の提供を中止する旨の届出

・代替分析(AA)報告書

(4)規制化

企業による代替分析の結果、当局は公衆衛生や環境の保護に必要と判断した場合には、当局や消費者への情報提供、使用制限、販売禁止、その他必要な措置等の規制対応が検討されることになります。なお規制対応は提出された代替分析(AA)報告書ごと、つまり製造者ごとに実施されるため、同一製品種であっても異なる製造者の場合には、異なる規制対応が図られる場合があります。


このように、カリフォルニア州のSCPでは4つステップを運用し、優先製品中の有害化学物質の廃絶に向けた取組みを進めています。


2.ワシントン州の「ワシントン州のより安全な製品(SPW)」3)

ワシントン州では2019年に制定された「公衆衛生および環境に影響を及ぼす有害汚染防止法」4)により、「ワシントン州のより安全な製品(SPW)」の取組みが開始されました。

ワシントン州の取組みは次の4つのステップを1サイクルとして進められており、現在1サイクルが終了し、2サイクル目の優先化学物質の特定が進められています5)。

(1)優先化学物質の特定

(2)優先製品の特定

(3)規制措置の検討(含有報告または制限)

(4)規制策定

(1)(2)については、前述のカリフォルニア州と類似した内容となっており、優先化学物質が特定され、その優先化学物質を含有する優先製品が特定されます。 その後、カリフォルニア州では企業に対して代替分析等の対応が求められますが、ワシントン州では優先製品中の優先化学物質の含有に関する「報告」や「制限」の規制措置が検討・策定される流れであり、(1)~(4)までの1サイクルが完了した後に、規制化による「報告」や「制限」といった義務が企業に課されることになります。


2023年7月に1サイクル目の規制6)が発効し、次のような優先化学物質を含む優先製品に対して「報告」や「制限」の義務が2025年1月以降から適用される予定となっています。

・PFAS類(制限):繊維・皮革製品のケアで用いる防汚剤・防水剤、カーペット・ラグ、繊維・皮革製家具(屋内用)

・PFAS類(報告):繊維・皮革製家具(屋外用)

・フタル酸エステル類(制限):パーソナルケアおよび衛生製品の芳香成分、ビニル製床材

・有機ハロゲン系難燃剤(制限):電気電子機器のプラスチック製筐体(屋内用)

・有機ハロゲン系難燃剤(報告):電気電子機器のプラスチック製筐体(屋外用)

・有機ハロゲン系および5種の有機リン系難燃剤(報告):ポリウレタンフォーム製レクリエーション用カバー付き壁パッド

・有機ハロゲン系および5種の有機リン系難燃剤(制限):その他のポリウレタンフォーム製レクリエーション製品

・アルキルフェノールエトキシレート類(制限):洗濯洗剤

・ビスフェノール類(制限):飲料缶、感熱紙

・ビスフェノール類(報告):食品用缶

なお、ワシントン州ではすでに2サイクル目の優先化学物質の特定作業が進められており、2023年6月に2サイクルの優先化学物質の案として、次の6物質が挙げられており7)、2024年1月に決定し、その後優先製品の特定等が進められる予定となっています。

・カドミウムおよびその化合物

・鉛およびその化合物

・臭化および塩化物

・ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン

・ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド放出物

・環状揮発性メチルシロキサン

・N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミン(6PPD)


3.最後に

今回カリフォルニア州のSCPとワシントン州のSPWの取組みを取り上げました。 両者ともに消費者製品から有害化学物質を廃絶するという目的に向け、物質や製品の特定の流れは同様ですが、その後の対応は、企業による代替分析結果等に応じて、企業ごとに必要な規制措置を図るカリフォルニア州と、一律に「報告」または「制限」の規制措置を課すワシントン州と異なった内容となっています。


今回取り上げたカリフォルニア州やワシントン州等は先行的な取組みを行う州であると言え、先行した州の州法が他州に波及していくこともあります。 米国50州の動向を網羅的に確認することは困難ですが、必要に応じて現地輸入者等と連携して確認することが必要になります。


(井上 晋一)


1) カリフォルニア州有害物質規制局(DTSC) SCPの概要

2) DTSC SCPR

3)ワシントン州環境局(DoE) SCWの概要

4)ワシントン州議会 公衆衛生および環境に影響を及ぼす有害汚染防止法(70A.350 RCW)

5)DoE SCWに関する検討状況

6)ワシントン州議会 より安全な製品の制限・報告(173-337 WAC)

7)DoE 2サイクルの優先化学物質の特定案

閲覧数:1,032回

最新記事

すべて表示

EUにおける有害化学物質の必須用途について

2024年05月17日更新 2024年4 月22日、欧州委員会は、極めて有害な化学物質におけるエッセンシャルユース(以下必須用途)概念に関する指針や原則を説明するコミュニケーション文書(以下文書) 1) を採択しました 2)。 必須用途という概念は、社会的な観点から、極めて有害な物質を使用することが正当化される場合の評価の根拠となるものです。今回のコラムでは、本文書の内容について説明します。 1.

EUのユニバーサルPFAS規制案の検討状況について

2024年04月05日更新 EU加盟5か国(ドイツ・デンマーク・オランダ・ノルウェー・スウェーデン)は2023年2月に有機フッ素化合物(PFAS)規制案を公表しました(*1)。 この規制案に関連するPFASは、物質の構造で定義する包括的で広範な物質が対象物質となることから、ユニバーサルPFASとも呼ばれています。 PFAS類は炭素-フッ素の結合エネルギーが高いことなどによるユニークな機能を示し、様

プラスチック製品を管理する基準に関する北欧協同調査報告について

2024年03月29日更新 2024年1月31日、北欧閣僚理事会は、「問題のある、不必要で回避可能なプラスチック製品に対処するための世界的な基準」という調査報告書 1) を公表しました。本報告書では、140以上の国が特定のプラスチック製品の禁止や制限を制定していると指摘し、使い捨てプラスチックだけでなく、より広範囲のプラスチック製品を管理するための世界的な基準の必要性を強調しています。今回のコラム

Comments


bottom of page