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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q596.アスベスト規制について

2021年05月08日更新

【質問】

アスベスト規制について教えてください。 通信機器の組み込みユニットを納めている顧客から、アスベストについて意図的非意図的にかかわらず“0”を要求されています。どのように証明したらよいでしょうか。

 

【回答】

◆アスベストとは

アスベストは自然界にて産出される繊維状のケイ酸塩鉱物の総称です。

厚生労働省の「アスベスト(石綿)に関するQ&A」のWebページで以下の説明をしています。


https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/sekimen/topics/tp050729-1.html


以前はビル等の建築工事において、保温断熱の目的で石綿を吹き付ける作業が行われていましたが、昭和50年に原則禁止されました。

その後も、スレート材、ブレーキライニングやブレーキパッド、防音材、断熱材、保温材などで使用されましたが、現在では、原則として製造等が禁止されています。

石綿は、そこにあること自体が直ちに問題なのではなく、飛び散ること、吸い込むことが問題となるため、労働安全衛生法や大気汚染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律などで予防や飛散防止等が図られています。

長期間大量に吸い込むことで中脾腫や肺がんを引き起こすリスクが指摘されていて、世界各国で使用が規制されています。

 

◆アスベスト規制について

日本では労働安全衛生法第55条、労働安全衛生法施行規則第16条によりアスベストを0.1wt%以上含有する製剤その他の物の製造、輸入、譲渡、提供および使用を禁止しています。

アスベスト含有成形板等の不適切な除去によりアスベストが飛散した事例がみられたことから2021年4月に大気汚染防止法が改正施行されました。

この改正を機に、川下企業はアスベスト管理を強化しています。


日本以外でもEUはアスベスト繊維をREACH規則附属書XVII(制限物質リスト)に収載しています。附属書XVIIに記載されている条件以外でアスベスト繊維および意図的に添加させた成形品・混合物を製造、上市、使用することを禁止しています。

アメリカ カリフォルニア州ではガンを引き起こす可能性があるということでプロポジション65の有害物質リストに収載されています。プロポジション65のアスベストのセーフハーバーレベル(safe harbor levels)は100 fiber /日です。


◆規制法の基準値の相違

アスベストの単位は、アスベストが繊維状ですので、「fiber(本)」で表されます。規制対象の繊維状アスベストは以下の条件です。

・アスベストの繊維の長さが5マイクロメートル以上

・幅もしくは直径が3マイクロメートル未満

・アスペクト比(長さと幅の比率)が3以上


労働安全衛生法施行令第16条は、アスベスト(石綿)は0.1重量%が制限値で、作業環境管理濃度は、「5マイクロメートル以上の繊維として0.15本毎立方センチメートル」です。


石綿は、そこにあること自体が直ちに問題なのではなく、飛散したアスベストを吸い込むことが問題となります。廃棄物処理や材料の切断などで、切粉などが空中の飛散し、作業者が吸い込むリスクを低減するための含有制限基準です。

人間の1日の呼吸量は15立法メートルと言われていますので、「0.15本毎立方センチメートル」は、プロポジション65のアスベストのセーフハーバーレベル100 fiber /日に比較すると大きな数値になります。保護具でばく露を低減することになります。


◆意図的含有と非意図的含有

アスベストは意図的、非意図的を問わず含有“0”をお客様は要求しています。“0”の証明は難しいものがあります。

1.意図的含有

貴社製品のユニットのBOM(Bills of materials:構成部品表)と作業工程で使用する補助材料(接着剤など)について、アスベストを含有していない仕様をSDSやchemSHERPAなどで確認した部品や材料を採用します。

 

具体的な対応例としては、予めアスベストが含有していない部品、材料や作業方法を調査し使用可能部品リストを作成しておき、設計者はそのリスト収載品や作業方法しか採用できないルールとします。

新製品ですので、新部品や材料、新たな作業方法が要望されます。 この場合は、都度調査し、意図的にアスベストを含有した部品、材料や作業方法を採用しないことを確実にします。


2.非意図的含有

現時点での最大のアスベスト問題は、古いビルの解体などでのアスベストの飛散です。

貴社のような業種では、通常ではアスベストを含有した部品や材料は、法規制で制限されていますので、混入することはありません。

ただ、合法時期に購入した部品や材料を工場などで保守用として保管していることは否定できません。

古い製品のオーバーホールなどで、アスベストを含有した部品や材料の加工修理でアスベストを飛散させる可能性はあります。

可能性だけを考えると限がありません。どこまで対象とするかを見極める必要があります。 リスクの見積もりですが、見積方法は成書に譲り、方法としてはHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)やGMP(Good Manufacturing Practice)があります。

QC工程表などの各工程について、HACCPの手順で管理ポイントを特定し、GMPで確実な管理をするものです。

管理基準は前項の法基準または貴社独自の係数による厳しい基準とします。



◆非含有の説明方法

意図的に含有させることの保証は難しいことではありません。非意図的含有制限は難しく、管理の仕組みを説明するしかありません。

前項の説明はアスベストとして説明しましたが、EU RoHS指令やREACH規則の規制物質管理にも適用できるものです。 これがCAS(Compliance Assurance System)で、貴社の経営マネジメントシステム(ISO9001やエコステージなど)に組み込み、一体運営をするものです。

 

お客様には、アスベスト非含有を広くは特定有害物質の非含有を保証する仕組みをご説明し、納得をしていただくのがよいと思います。

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