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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q602.フタル酸エステル類を含有している購入品を調達する際の基準改定の必要性について

2021年07月02日更新

【質問】

EU REACH規則の制限物質として附属書XVII(制限)の Entry No.51で、「4種のフタル酸エステルを1種類または任意の組み合わせで0.1重量%以上含有する成形品を2020年7月7日以降に上市してはならない。」とあります。 当社の調達基準ではフタル酸エステル類は、0.1重量%以下としています。 この基準は改定する必要があるでしょうか。

 

【回答】

貴社の調達基準の改定の必要性については、Entry No.51「委員会規則 (2018/2005/EU) DEHP、DBP、BBP、DIBPに関するREACH規則附属書ⅩⅤIIエントリー51改正1)」の適用除外に貴社調達品が該当するかによって判断が変わります。

貴社調達品の用途が適用除外に該当しない場合、同規則の規定がそのまま適用され、貴社調達基準の改定は不要です。

もし、貴社調達品の用途が次の適用除外に該当するならば、同規則のフタル酸エステル類の0.1重量%含有率の規定が適用されず、貴社調達基準を改定する必要があります。


・人間の粘膜や皮膚と長時間接触しない、工業用・農業用・屋外専用の成形品

・2024年1月7日以前に上市された航空機または航空機の安全性と耐空性を確保するために航空機のメンテナンスや修理に限定して使用する成形品

・2024年1月7日以前に上市された自動車および自動車部品に関する指令(2007/46 / EC)の範囲内の自動車の正常な動作に不可欠で、メンテナンスまたは修理に限定して使用する成形品

・実験室用の測定装置またはその部品

・2020年7月7日以前に上市された成形品

・食品への接触を意図した材料および製品(FCM、Food Contact Material & Article)に関する規則(1935/2004/EC)およびプラスチックFCMに関する委員会規則(10/2011/EU)の適用範囲であるFCM

・能動埋込型医療機器指令(90/385/EEC)、医療機器指令(93/42/EEC)、体外診断用医療機器指令(98/79/EC)の適用範囲である医療機器とその部品

・RoHS(II)指令(2011/65/EU)の適用範囲である電気電子製品

・人および獣医用医薬品の認可および監督に関する規則(726/2004/EC)、動物用医薬品指令(2001/82/EC)、人用医薬品指令(2001/83/EC)の適用範囲である医薬品包装材


一方、適用除外となるケースは、別の法規制による規制対象となることが多く、その場合それらの要求事項を、貴社調達基準へ反映させる形で改定する必要があります。

例えば、貴社成形品が食品と接触することを意図したもの(FCM)ならば、Entry No.51の適用除外に該当しますが、FCMに関する規則等の適用対象となります。

含有率の計算方法が変わる場合もあります。 例えば、Entry No.51では、成形品に含まれる4種類のフタル酸エステルの合計量を0.1重量%未満とすればよいのですが、成形品がRoHS(II)指令の適用対象となるならば、4種類のフタル酸エステル個々の含有量を0.1重量%未満にしなければなりません。

また、「食品衛生法の器具及び容器包装の規格基準(平成14年厚生労働省告示267号)2)」では、DEHPを原材料として用いたポリ塩化ビニルを主成分とする合成樹脂を、日本国内において油脂または脂肪性食品を含有する食品に接触する器具または容器包装に使用することを原則として禁止しています。 もし、貴社調達品の用途がこれに該当し、日本国内で使用されるならば、やはり貴社調達基準を改定する必要があります。

 

貴社においてはフタル酸エステルの4物質の含有とその対応について、自社の取り扱う調達品の使用状況を把握しながら、適用除外や他の法規制による制限などを考慮していく必要があります。


参考:

1) Entry No.51「委員会規則 (2018/2005/EU) DEHP、DBP、BBP、DIBPに関するREACH規則附属書ⅩⅤIIエントリー51改正」


2) 食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(平成14年8月2日厚生労働省告示第267号)


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