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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q647.REACH規則の成形品の定義とRoHS指令の均質材の考え方について

2023年01月27日更新

【質問】

成形品の定義ですが,RoHS指令の均質材とは異なるのでしょうか。 例えばケーブルの場合,導体線となる銅などのものと被覆PVCなどで構成されています。 その際に成形品とはケーブル全体をいうのか,導線,被覆で別々の成形品と考えるのかどちらでしょうか。

 

【回答】

ご質問の成形品の定義について、REACH規則の定義とRoHS指令の均質材料の考え方は必ずしも一致しておらず、対象物の構成から確認する必要があります。 ご質問のケーブルが、銅線、被覆材と剥離不能なコーティング処理された外装材から構成される場合、RoHS指令では銅線・被覆材・外装材の3つの均質材料と見なされ、REACH規則では、銅線・被覆材・外装材及びコーティング剤の4つの成形品を複合化した成形品となります。


RoHS指令での均質材料は、第3条20項に次の定義があります。

1) 全体的に組成が均一な材料、 または

2) ねじを緩めたり、切断したり、破砕したり、研磨するなどの機械的操作によって、ばらばらにしたり、別の材料に分離したりできない材料の組み合わせからなる材料

RoHS指令に関するFAQには、均質材料の例として、コンピュータ画面のプラスチックカバー、ケーブル内部の銅線、はんだ接合部のはんだ部分などがあります1)。 すべての電気電子機器(Electrical and Electronic Equipment (EEE))は多くの異なる均質材料で構成されており、制限物質の最大濃度値は、均質材料ごとに適用されると解説しています。


従って、ご質問のケーブルの場合、銅線・被覆材・外装材の3つの均質材料と見なされます。


一方、REACH規則での成形品は、第3条3項で「製造中に、化学的組成よりも大きくその機能を決定する特別な形状、表面、またはデザインが与えられた対象物」と定義しています。 この定義によって区分された成形品もしくはその複合化によって成形品が構成されています。

ECHA発行の「REACH規則における成形品中の物質に関する要求事項に関する手引書」(以下「手引書」)に、ねじ止めや接着した複合部品などを例として成形品の単位に関する解説があります2)。 手引書の2.3項に成形品と判断するフロー図があり、2.4項に複合化した対象物の解説があります。 2.4項の脚注に、複合部品を構成する個々の成形品は、その成形品としての機能を失わない限り、複合部品の中でも成形品として扱うとしています。


従って、ご質問のケーブルの場合、手引書の3.2.2項の例6のコーティングされた部品と同様に、銅線・被覆材・外装材及びコーティング剤はそれぞれ「機能を決定する特別な形状」を持った対象物であり、ケーブルは4つの成形品を複合化した成形品となります。 手引書の例示の通り、構成する成形品ごとの適合性の確認を行い、必要な情報伝達等の対応が必要です。


1) FAQ key guidance document – RoHS Q9.8

https://environment.ec.europa.eu/system/files/2021-01/FAQ%20key%20guidance%20document%20-%20RoHS.pdf


2) Guidance on requirements for substances in articles(version 4.0)

https://echa.europa.eu/documents/10162/2324906/articles_en.pdf

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