top of page

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q675.EU電池規則の対象者について

2023年12月22日更新

【質問】

欧州電池規則が2023年7月28日にEU官報で公布されました。 実施する対象者は電池の製造販売業者以外に、電池を製造していないが、電池を組み込んだ製品をEU域内に販売する業者も対象となるのでしょうか。

 

【回答】

EU電池規則(電池および廃電池に関する規則(EU) 2023/1542)(1)では全てのバッテリーが対象となっており、製品に組み込まれたバッテリーも対象となります。 販売業者の義務としては、販売するバッテリーが本規則の要件に適応していることを確認する義務があります。 すなわち、生産者が生産者登録簿に登録されていること、バッテリーにCEマーク、必要書類等が付けられていること、流通済のバッテリーが本規則に適合しないことがわかった場合、必要な是正措置をとり、当局へ通知することなどの義務が生じます。 また、当該バッテリーを販売者の名前や商標で販売する場合や、バッテリーを改変したり、使用目的が変更された場合には、製造業者の義務も販売業者が追う場合もあります。


これらの販売業者の義務は以下に示す第42条に記載されています。

1.販売業者はバッテリーを市場で流通させる場合、本規則の要件に関して十分な注意を払って行動するものとする。

2.バッテリーを市場で流通させる前に、販売業者は以下を確認する必要がある。

i)生産者が第55条に規定する生産者登録簿に登録されていること

ii)バッテリーにはCEマークが付いており、第13条に従ったマーク及びラベルが付けられていること

iii)バッテリーには必要な書類、およびエンドユーザーが容易に理解できる言語の指示及び安全情報が添付されていること

iv) 製造業者と輸入者はそれぞれの義務要件を遵守していること

3.販売業者はバッテリーが本規則に適合しないとみなし、または信じる理由がある場合バッテリーが適合するまでバッテリーを市場に流通させてはならない。さらに、バッテリーにリスクがある場合、販売業者は製造業者または輸入業者、および市場監視当局に通知する必要がある。

4.販売業者はバッテリーが自己の責任下にある場合、保管または輸送条件が適合条件の遵守を危うくしないことを保証する。

5.市場に出回ったバッテリーが本規則に適合しないと考えるまたは信じる理由がある販売業者は、そのバッテリーを適合させ必要に応じて撤回あるいはリコールするために必要な是正措置を確実に行う。さらにバッテリーにリスクがある場合、流通させた加盟国の市場監視当局に直ちに通知し、違反の詳細と講じられた是正措置を提供する。

6.販売業者は国内当局からの正当な要請に加えて、バッテリーが本規則に適合していることを証明するために必要な全ての情報及び文書を当該国の当局が容易に理解できる言語で提供しなければならない。


また、販売業者が製造業者の義務を負う場合については、第44条に以下のように記載されています。

1.バッテリーが、その輸入業者または販売業者自身の名前または商標で市場に出回っているかサービスが始まっている。

2.すでに市場に出回っている、または使用が開始されているバッテリーが、その輸入業者または販売業者によって、本規則の関連要件の遵守に影響を及ぼす可能性がある方法で変更された、あるいは使用目的が変更された場合。


なお、第11条ではポータブルバッテリーとLMTバッテリーの取り外し性と交換可能性が規定されています。 一部の例外を除いて、バッテリーは取り外し及び交換可能であることが求められており、製品に組み込まれたバッテリーがその要件に合致している場合、組み込まれたバッテリーが本規則の他の要件にも適合していてCEマークが付けられていれば問題ありません。 気をつけなければならないのは、製品に搭載されたコンポーネントにバッテリーが組み込まれたデバイスが使われている場合です。例えば、組込時計の駆動やメモリのバックアップ用に小さいバッテリーが内蔵されていることは珍しくなく、見落とされがちです。 貴社が販売業者であるならば製造業者との情報共有が重要となり、貴社が製造業者である場合は、設計段階からそうしたデバイスの有無を確認して、必要に応じて対策を取ることが重要となります。


(参考文献)

(1)電池および廃電池に関する規則(EU) 2023/1542

閲覧数:1,874回

最新記事

すべて表示

Q686.化審法における第一種特定化学物質としてデクロランプラスの規制が始まる時期について

2024年04月05日更新 【質問】 POPs条約のCOP11で「デクロランプラス」が附属書Aに追加することが決定されましたが、化審法の第一種特定化学物質として規制が始まるのは何時頃でしょうか。 情報があればご教示ください。 【回答】 デクロランプラスを含むストックホルム条約による廃絶物質(附属書A)収載決定は2024年2月26日に通知されました(*1)。 この通知により、1年後の2025年2月2

Q685.PTFEの成形加工部品におけるPFOAの残留可能性と化審法との関係について

2024年04月03日更新 【質問】 PTFEの成形加工部品を購入して、電子製品の組み立てをしています。 PFOAが残留していることはあるでしょうか。 この場合は、当社は化審法の使用者となるでしょうか。 ご教示ください。 【質問】 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(以下、化審法)、第1条で「この法律は、人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息若しくは生育に支障を及ぼすおそれがある化学物質に

Q684.アメリカの「Model Toxics in Packaging Legislation」(ひな形法)におけるPFAS規制の適用について

2024年03月22日更新 【質問】 アメリカの「Model Toxics in Packaging Legislation」(ひな形法)が2021年2月改正され、PFASが追加されましたが、各州法ではPFAS規制はまだ、食品包装などの一部に限定されているようです。 当社は工業用製品(B to B)を輸出していますので、2021年のひな形法のPFASは適用されないと思っています。この解釈は正しいで

bottom of page