top of page

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

執筆者の写真tkk-lab

Q597.RoHS指令の対象物質について

2021年05年14日更新

【質問】

RoHS指令の整合規格がEN IEC63000:2018となりましたが、対象となる物質が従来の10物質から、IEC 62474のデータベースに示された167物質(群)(2021年1月現在)に拡大されるのでしょうか。

 

【回答】

RoHS (II) 指令(2011/65/EU)の技術文書作成に関する整合規格として、EN IEC 63000:2018 (1) が採択され、EN 50581:2012 (2) は2021年11月18日に撤回されることが2020年5月15日のEU官報で、委員会実施決定 (EU) 2020/659 (3) として告示されました。


EN IEC 63000:2018 は、EN 50581:2012に基づいて作成された IEC 63000:2016を、欧州規格 (EN規格) としてCENELEC (欧州電気標準化委員会) が承認したものです。 EN IEC 63000:2018の内容は、EN 50581:2012と大部分について同じですが、以下の変更点があります。


1)IEC 63000:2016としての序文には「本文書の目的は、世界中のさまざまな物質規制のもとで、該当する物質制限への順守を宣言するために、製造業者が作成する必要のある技術文書について規定することである」と記載されています。 EN50581:2012の序文にも同様の文章がありますが、「世界中のさまざまな物質規制のもとで」という表現が含まれていませんでした。


2)EN 50581:2012には、当時のRoHS (II) 規制物質だった6物質(鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル、ポリ臭化ジフェニルエーテル)の濃度の定量方法に関する引用規格としてEN 62321:2009 (IEC 62321:2008) が言及されていました。 これに対し、EN IEC 63000:2018では、電気・電子機器中の特定物質の測定に関する引用規格としてIEC 62321 (all parts) と記載されており、発行年は特定されていません。 また、物質の種類についても特定されていません。all partsと追記されたのは、IEC 62321:2008では、物質数が少なく測定方法も単純であったため 1文書しかなかったのですが、その後、物質数が増え、測定方法も多くなったために、Partに分けられたためです。 参考までに、現在では Part 1 (第1部) からPart 10 (第10部) まであります。


3)EN IEC 63000:2018の4.3.3 b)のマテリアルデクラレーション(材料宣言)において、「該当物質に関して IEC 62474:2012の4.2.3に規定された要件を満たすべき(should)である」という文章が付け加えられました。 IEC 62474:2012 (4) (電気・電子業界及びその製品に関するマテリアルデクラレーションに関する国際規格) の4.2.3では、IEC 62474データベースに記載の報告要件が必須の物質 (群) について、その物質 (群) の含有量が報告すべき閾値(例えば、RoHS (II) 指令で規制している鉛の場合、均質材料中に全鉛が0.1重量%)以上で、報告すべき用途(例えば、RoHS (II) 指令で規制している鉛の場合、電池以外のすべて)に該当する場合には報告しなければならないと定められています。(IEC 62474データベースで報告要件が必須の物質 (群) リスト(DSL)には2021年4月28日の最新版で168種類が収載)


上記から、EN 50581:2012に比べ、EN IEC 63000:2018 では RoHS指令に限定した表現が減り、さまざまな国際的な物質規制も視野に入れていることが読み取れます。 また、分析試験方法やマテリアルデクラレーションに関する近年の国際的な発展も反映 (5) しています。


冒頭に記載した通り、EN IEC 63000:2018はEUによりRoHS指令のための整合規格であることが決定されています。 この意味していることは、整合規格であるEN IEC 63000:2018に従って技術文書を作成することによって、RoHS指令の技術文書に関する要求事項を満たすことができるということですが、EN IEC 63000:2018自体に法的拘束力はありません。


現時点でRoHS指令が規制対象としているのは10物質であることから、RoHS指令への適合宣言のために要求されている情報 (技術文書) は、あくまで対象10物質のみに関するものであり、IEC 62474データベースのDSL収載の物質(群)すべてに拡大されるわけではありません。


更に、企業では、CAS(Compliance Assurance System: 遵法保証システム)を使って、RoHS指令だけではなくREACHやTSCAなどの他の規制も対象として化学物質を管理することがあります。 この場合、RoHS指令が対象とする10物質に限ることなく、IEC 62474データベースを参考にし、該当する物質(群)について、技術文書を作成し情報伝達をすることは有効であると考えられます。


【引用】

(1) EN IEC 63000: 2018 Technical documentation for the assessment of electrical and electronic products with respect to the restriction of hazardous substances ,


(2) EN 50581:2012 Technical documentation for the assessment of electrical and electronic products with respect to the restriction of hazardous substances,


(3) Official Journal of the European Union, DECISION (EU) 2020/659,


(4) IEC 62474:2012 Material declaration of and for the electrotechnical industry, https://webstore.iec.ch/publication/7077


(5) CENELEC, New CENELEC standard: With EN IEC 63000:2018, European environmental standards conquer the world,

閲覧数:3,641回

最新記事

すべて表示

Q704.REACH規則におけるCLSについて

2024年12月06日更新 【質問】 REACH規則にでてくるCLSとはどのようなものでしょうか? _________________________________________ 【回答】 REACH規則1)におけるCLS(Candidate List of...

Comments


bottom of page