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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q627.市販の設備を組み合わせて開発する大型制御装置に関するRoHS指令の除外について

2022年10月08日更新

【質問】

当社はエンジニアリング会社で、顧客の仕様で製品を開発しています。今回の受注内容は、市販の設備を組み合わせて、当社で制御装置を開発するものです。

完成品は大型になります。RoHS指令の除外としてよいでしょうか。

 

【回答】

RoHS (II)指令1)では第2条(4)に適用対象外となる製品が示されています。 その中の(d)大型据付式産業用工具(Large-scale stationary industrial tools;以下LSSITと表記)、および(e)大型固定式設備(Large-scale fixed installations;以下LSFIと表記)が本質問の製品に該当する可能性があります。


LSSITについては第3条(3)に「特定の用途のためにともに機能する機械・装置及び/又はコンポーネントの大規模な組立物であって、産業の製造施設又は研究開発施設内の所定の場所に専門家によって恒久的に設置・撤去され、専門家により使用・維持されるもの」と定義されています。 つまり、「工具」は、生産者が一体として組み立てて納入したものを据付専門家が所定の場所に永久的に据え付けるもので、工作機械のマシニングセンター、旋盤などのイメージとなります。


LSFIについては第3条(4)に「複数の種類の装置(および該当する場合はその他の機器)の大規模な組み合わせであり、あらかじめ決められた専用の場所で恒久的に使用されることを意図して専門家によって組立および設置が行われ、また撤去が行われるもの」と定義されています。 つまり、「装置」は、(さまざまな)生産者によって生産された装置を専門家が組立、据付されるものであり、「大型固定装置(large-scale fixed installation)」は、生産ラインを構築するような、あらかじめ定められた場所で複数の装置を専門家によって組み立てるものとなります。


ご質問の文面「市販の設備を組み合わせて、当社で制御装置を開発」からするとLSFIの方が該当する可能性が高いように思えますが、質問文からは明確ではないため両者について解説します。


いずれも「大型」であるかがポイントですが、具体的にどのような規模のものを指すのかについては、指令本文には定義されていません。 LSSITについては欧州委員会発行のFAQ2)には以下のような製品が例示されています。


・コンピュータ内蔵NC旋盤

・ブリッジ式フライス盤・ボール盤

・電子ビーム、レーザー、高輝度光、深紫外線欠陥検知システム

・同等の大きさや複雑さを持つもの


また、同じくLSFIについては「大型」の基準の一例が挙げられています。 これらのうちいずれかを満たしていればLSFIと考えることができると記載されています。


・輸送時の寸法がISO20フィートコンテナ(5.71m×2.35m×2.39m)を超える

・総重量が44tを超える

・組み立て/解体に高荷重クレーンが必要

・設置環境の改造(基礎強化など)が必要

・定格出力が375kWを超える


ご質問の製品がLSSITもしくはLSFIに該当し、適用対象外と判断するのに上記情報を参考にすることが出来ますが、その判断はあくまでも自社の責任となります。 判断した根拠については企業の立証責任がありますので、技術文書(例えば、設計審査記録)に記載する必要があります。


また、「市販の設備を組み合わせて」とありますので、全体としてRoHS指令の対象外となる場合にも、構成する市販品についてはRoHS対象となる場合があります。 FAQ Q4.6によれば、大型製品に使うことを供給者が担保している場合は対象外となりますが、担保していない場合は他用途で使われる可能性があるためRoHS対象となります。


また、2022年6月29日に改訂されたEU製品規則の実施に関する「ブルーガイド」2022 3)の2.1製品カバレッジ(当該部分に改訂はなし)によると、EU調和法の適用は、「単一の完成品を構成するものではなく、一緒に機能することを意図した2つ以上の完成品が同じパッケージで利用可能になっている場合、組み合わせた製品を上市する製造業者は、パッケージに含まれる製品が互いに操作中で使用される場合のリスクに対処しなければなりません。」とされていますが、RoHSでは組み合わせ効果がないので、構成製品のCEマーキング確認で済ませることができます。 なお、EMC指令4)では組み合わせることにより基準が越える可能性があるので、組み合わせ後に附属書Iにより性能測定が行われます。


(参考リンク)

1)RoHS(II)指令(2011/65/EU)


2)RoHS指令WEBサイト


3)ブルーガイド2022


4)EMC指令(2014/30/EU)

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